装備更新
禁足地で麻痺アーティア攻撃4切れ味1がツモったので初投稿です(更新再開)
ちょっと4経験民からしたらファンサが過ぎましたね……
『『コヒメ』とパーティを結成しました』
『パーティ人数:2/6』
『PL:彁:Lv31』
『NPC:コヒメ:Lv31』』
(レベルが同じ……プレイヤーに合わせる感じ?)
悲報、頑張って戦って上げたレベルがぽっと出のNPCに追い付かれる。猿合戦とハリケーンをソロクリアしたと同等の経験値が一瞬で生成されるのよく考えなくても理不尽だな?
というか普通にパーティ組めちゃったよ。詳細は……あっなんか確認出来ないっぽい。能力はやっぱコミュニケーションして聞き出すしかなさそうか? ほな面倒が勝るし無知を謳歌するとしよう。
「あの……ごく自然な動作と無表情で何をしてるんですか……?」
「放火」
「なんで!?」
「? その方が戦いやすいじゃん、明るいし」
「……まって、もしかしてこの森が燃えてるのって……!?」
「私がやりました」
「したり顔でよく言えるね!?」
恥ずべきことはしてないし。
気まずげな少女を置いてクソデカ松明と化した大木を切り倒す。先の戦争で辺り一面は円状に拓けちゃいるが、今用があるのはその外だ。
幸い跳ね上がったステータスのお陰で作業は容易だが、問題は向かうべき方向が分からないことだろうか。
ただでさえ夜なのにこの森の中だ。目印となる物は見当たらず、確かなのはここが森の餌場であるという情報のみ。はてさて私はどこから来たのだろう?
「あ、『マッピング』あるじゃん」
完全に無いものとして扱ってたクラススキルくん、迷子になってから気付かれ無事覚醒。
起動の意思と共に脳内に浮かび上がるのは……私が踏破してきた道程の簡易的な地図と進軍ルート。ほーん? 始点がここで故果樹園がここだとするなら……
「ボスはこっちか?」
「あんな淡々と燃やしておいて道分かってなかったの!?」
「一々大声出さないで、キンキンする」
「あっごめん……なさい」
進行方向を変えると共に木を倒す方向も変更、二三本蹴飛ばして獣道を道へと舗装。轟音を響かせ破壊と炎が草木へと伝播して、世界が明度と温度を取り戻す。
ぱちぱちではなくバチバチの方が近い怪音に、時々混ざる悲痛な絶叫。トレントは今日も元気に経験値してんねぇ、寿命以外はまるでセミみてぇだな。
「ん」
「あ、ありがとう……ございます?」
「何故に疑問形」
「……これ、怒られないの?」
「誰と何に? モンスターの餌になるよか生産的では?」
「え、そういう問題なの?」
落ちてきたバナナのような果実を投げ渡した一幕の会話。はて、それ以外の問題があるのだろうか?
オドオドしながら皮を剥いて食べ始める少女の動作はどこかぎこちない。警戒心よかシンプルに慣れてなさそうな様子。……あ、一口行ったら目がキラキラしてら。好感度稼ぎに幾つか貢ぐか。
はぐはぐと頬張るコヒメにアイテムボックスから追加の果実を与え、夢中で貪る間に装備を補充していく。
『猪牙の槍』はハリケーン戦で囮に使ってぶっ壊れた。素材の在庫的に予備を作れ無くはないのだが、丁度ボス素材が手に入ったのでこの機にアップグレードしておこう。
ついでに蔓と大猿の皮辺りで即席のハンドカバーでも作るか? ……んー無いよりマシだな、採用で。
(……あ、そういや遺装もあったわ)
──遺装。
主にレイド戦や高難易度ボスのクリア、そしてボスのソロ討伐等で手に入る、特殊な能力を持ったアイテム達。
より困難なことを成す程高レアが出やすい都合上、最序盤ボスのソロ攻略程度じゃろくなもんは出ないはずなのだが……アイテムボックス内をスクロールしてる内に見つけたそれは、低レアの中でもかなり当たりの部類だった。
大猿の牙と細長い骨、そして皮。後はそこら辺の蔓と共にそれを実体化。
「『合成』『合成』」
布の感触が私の全身をすっぽり覆い、続いた発声によってMPが消し飛ぶ。同時、出来上がるのは新たな槍と手首から肘までを押さえ付ける腕当て。
『暴風槍[荒牙]+
種別:槍
要求ステータス:Lv25
斬撃23/刺突39/水属性10/切れ味26/強度32/耐久値100%
シレネの森の主、ハリケーンの素材から作られた長槍。
刀身は僅かに水属性を帯びており、切れ味はそれなりだが攻撃力は高い(夜間素材ボーナス+2)』
『大猿皮のアームカバー+
種別:篭手
要求ステータス:Lv25
斬撃耐性10/刺突耐性14/打撃耐性24/魔法耐性10/強度22/耐久値100%
シレネの森の主、ハリケーンの素材から作られたアームカバー。
簡素な作りのため防御性能は控えめ(夜間素材ボーナス+1)』
「おや普通に強い」
夜はモンスターの平均レベルが5上がる。そのためモンスター素材で装備を作る場合、夜間に手に入れた物を使うとより上質な物が作れる場合がある。
槍猪みたいな雑魚の5レベルの差はあってないようなもんだが、ボスの5レベル差は意外と馬鹿にはならないようで。特に槍の全倍率+2は結構デカイ。
「はぐっ…………せいさんはやりつかいなの?」
「んー? そういうわけじゃないんだけど……自分で作るなら槍が手っ取り早いだけで、長物なら大体使えるかな」
「すごい」
試しにくるくると手の中で槍を回してみる。びゅんびゅんと大猿の牙先が風を切り裂いて、指には白骨の少しざらつく硬質な感触が。……木の枝より摩擦があるのがいいね、天然のグリップとして働く骨の柄は優秀だ。
トン、トン、トンと人差し指で弾いて回し、手の平と親指以外の残り三指で挟んで止めて。逆回転も混じえながら何度かそれを繰り返し、指先に重量感と反動量を馴染ませる。
(中量の中でも少し重いか? 重心は少し柄に寄ってる)
総評、極めて優秀。猪牙の槍より取り回しがいいし、何より重量が丁度いい。
猪牙は量産効くから雑に使い潰せるけど、それにしたって軽いんだよなアレ。長柄の重量なんてあればある程いいってのに。
「……で、私の最初の遺装は君ですか」
ある程度槍への興味が解消すると、次に気になってくるのは新たに装備したこの外套について。
合成結果に気を取られて反応を忘れていたハリケーンソロ討伐報酬の遺装は、有り体に言えばコートだった。
『機套[不屈] 機構:RANKⅡ
種別:外套
要求ステータス:無し
特殊効果:VIT+5/AGI+15/DEX+10
斬撃耐性25/刺突耐性25/打撃耐性25/魔法耐性25/強度50/耐久値100%
PS『機套』装着者の空気抵抗を軽減
PS『不屈』致命傷を受けた時、5秒間HPが1以下にならない。CT1800s
前時代のある特殊部隊に配備されていた機械的なコート。特殊な力場干渉により、身体能力に多大な補正をかける。
迸る青白い紋様は、装着者に不屈の魂を授けるという』
「『被弾上限』の上にこれ乗るの大分法外な気がする」
遺装には最低1から最高5までのランクがあるが、機套シリーズは低レアの中でも結構な掘り出し物だ。耐性面はそれなりだが補正ステータスが強く、加えて共通して持ってる空気抵抗軽減が兎に角偉い。
生身で音速を叩き出すのに一番の障害となる空気摩擦をクソ雑にケア出来るコイツは、確か一周目のAGI厨共にズッ友宣言されてたんだっけか。
(AGIは簡単に盛れるけど、ここに干渉出来るスキルは本当に一握りなんだよねー)
オマケに付与されてるスキルが『不屈』と来たもんだ。これ一周目世界換算なら数十億は行きそうじゃね?
即死対策とかの一部スキルは特定職しか取ることが出来ない都合上、前衛職なら喉から手が出る程欲しいだろ。特に今みたいな装備もスキルも微妙な序盤なら尚更だ。
……まぁ私の場合サバイバーとかいう謎職のお陰で『被弾上限』が取れてるし、別に不屈である有難みは薄いんだけど。
着心地自体は良好。ぴったりと薄い生地が私の膝まですっぽり覆っている。
真っ黒のそれは所々に青い雷光のようなラインが走っており、機械的な見た目ながらもさらさらしてて触り心地は悪くない。
……紋様が蛇皮みてぇだなと思った瞬間、そうとしか見えなくなってきた。まずい。
「あの、」
「うん?」
「……おかわり、貰えますか?」
よく食べる子だ。
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『グアアァァァァァァァァァァ!!!』
「……なんで起きてるんだろう」
「……これだけ燃えてれば起きてるのが普通では?」
生態的に本来そいつが寝ている時間にて。
槍を慣らしながら歩いて見つけた森のもう一体のボスは、それはもう荒れ狂っていた。
モノローグ形式のためサイコちゃんの関心が無いことはあえて描写されてませんが、装備確認の最中も当然の如くコイツは放火を続けています(続けるな)