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魔王の限界地点

 戦い!戦い!戦いの日々!

 この世界に残ったわずかな悪を駆逐するため、正義の名のもとに僕は剣を振り、敵を燃やし、粉々に打ち砕いていく。


 何が僕をそんなに駆り立てるのだろうか?

 名目通り正義のためなどではないことだけは確かだ。むしろ、自己満足に近かった。

 常に動き続けていなければ、世をはかなんで死んでしまいたくなる。それが理由だ。


 別にそれが戦闘でなくてもよかったのかも知れないが、今の僕には敵を倒すだけの能力があったし、誰かがそれやらなければならないのなら、きっとそれは魔王である僕の仕事なのだろう。

 せっかく肉体を強化し、無数の技や魔法を習得し、数々の経験を得てきたのだ。それを生かさない道はないだろう。


 経験に関していえば、日々積み重ね続けている。

 敵の死体の数だけ、さらに経験値は増し、強くなる。いや、強くなっているかどうかはもうわからない。

 ある一定のラインまでは戦闘経験は確かに強さに直結していた。だが、そのラインを越えると自分が強くなっているのかどうか認識できなくなった。

 もしかしたら、以前よりも弱くなってさえいるかも知れない。


 だが、強ささえもどうでもいい。

 僕の目的はただの暇つぶし。退屈しのぎだ。勇者になったのも魔王になったのも同じ理由だった。

 のどが渇くから水を飲む。腹が減るから飯を食う。それと同じ。生理現象に理由などない。条件反射の一種だ。


 野生の動物だって同じだろう?

 肉食動物が草食動物を襲う。草食動物は草や木の実を食って飢えをしのぐ。

 僕だって飢えはしのぐ。退屈という名の空腹を満たすために、戦い続けなければならないのだ。

 その結果、誰かが喜んでくれるとか、誰かが悲観に暮れるとか、本質的にそういうのはどうでもいい。その場で、ほんのちょっとだけうれしかったり傷ついたりすることはあっても、根本的にはどうでもいいのだ。


         *


 また多くの血が流れ、命が奪われ、出会いがあり、別れがあり、歴史がつむがれた。


 だが、何をやっても同じコトの繰り返しだった。根本的に何も変わってはいない。

 もしかしたら、僕は以前よりも遙かに強くなっているかも知れない。少なくともスタート地点に比べれば、とんでもなく能力は上がっただろう。


 それでも、大きな流れからすれば、同じコトの繰り返し。繰り返し。繰り返し。

 ひたすら剣を振るい、魔法を発動し、敵を倒し、死体を踏み越え、先に進む。それだけだ。


(それって、何の意味があるんだろう?)


 しだいに僕は戦いの日々に疑問を感じ始める。


(この人生と、他の人たちの人生と、どれほどの違いがある?)


 たとえば、毎日、森に出かけ木を切り出し、街へ木材を運んでは売る。

 木こりの人生。


 毎日、海や川で魚や貝やエビやカニを採って暮らす。

 漁師の人生。


 誰かが作った物を金を出して買ってきて、さらに高値で売る。

 商人の人生。


 料理人の人生も、主婦の人生も、母親の人生も、子供の人生もある。

 だが、根本的には皆変わらない。昨日と同じコトの繰り返しだ。


 ただ、その部分が“戦い”に代わっただけ。

 魔物やら人やらを退治して生きているだけ。

 たとえ、それが“魔王”であろうとも同じ。しょせんは職業選択の一種に過ぎないのだ。


「限界だな!」と、僕は天に向かって叫んだ。


「ここが限界だ!もうこれ以上この世界にいても、新しいコトは何も起こらない!ここが限界地点だ!」

 僕はもう1度天に向かって大きく叫んだ。


 すると、天は光り輝き、パックリと2つに割れた。

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