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残党狩りの日々

 人間界と魔界の和平が成立したのち、僕は残党狩りを開始した。魔界監獄を逃亡した者たちを狩って回ったのだ。

 その暮らしは、かつて勇者だった時代に近かった。もちろん、魔王としての能力は存分に使っていたが。


 1人で戦うことも多かったが、時には協力プレイをすることもあった。

 魔物や人間たちと連携して、より凶暴な魔物たちを追い詰めていく。その行為に僕は酔いしれた。

 時には、魔界監獄の逃亡者が味方についてくれることもあったし、逆に部下であった魔物に裏切られたり、人間が敵に回ることだってあった。

 だが、そのような何やかんや全てを僕は楽しんで生きていた。


「やはり、戦闘はいいものだな…」

 誰に語るともなく、僕はつぶやいた。あるいは、それは独り言の一種だったのかも知れない。


「そうですね」と、身の丈4メートル以上もあるトロールが答える。


 トロールは岩のような泥のような肉体を持っており、全身にコケが生えていた。半分生物、半分岩石といったところだろうか?

 だが、ちゃんと知性は持っており、あまり賢いとはいえないまでも、会話したり命令に従うことくらいはできる。

 魔法を覚えたり、細かい手作業などは苦手で、だからこそ戦闘や肉体労働向きだともいえた。


「アチキは戦いがなくなったら生きていけないでやんす」と、小さな声も聞こえる。

 足元に目をやると、トンボくらいの大きさの妖精が全身から光を発しながら飛行するのが見えた。

 妖精は体が小さいながらも非常に頭がよく、数多くの魔法を扱う。


 他にも上半身が人型で下半身が馬であるケンタウロス。背中から大きなカラスのような翼が生えている鳥人間。3つ首の大蛇などがその場にいる。

 皆、現在組んでいるパーティーのメンバーで、誰もが戦闘狂だ。でなければ、こんな平和な時代にわざわざ危険な任務についてはいない。


 その中でも特に魔王である僕が戦闘に飢えていたかも知れない。

 世界を平和に導いた功労者ではあるものの、結局は戦いなくしては生きられなかった。平和や安定は、あまりにも退屈過ぎる。

 そういう意味では、アナジルと同じタイプというわけだ。


「そうだな。戦いがなければ、世界は退屈過ぎる。生きていけないほどに。たとえ、それが不毛な争いだとわかっていても…」


 僕の言葉に、皆がうなずく。

 いつの時代もいるものなのだ。こういうバカ者どもが。

 何も生み出さない。それどころか破壊してばかり。それでも、誰かと何かと戦い続けていなければ心が満たされない者というのが。


 いや、決して何も生み出さないわけではない。

 戦争は数々の便利な発明を生み出してくれた。最初は破壊目的であったとしても、改良され民間に流されて、一般人の暮らしに役立つ道具やサービスへと変わっていく。


 魔法にしてもそうだ。

 敵を探知する魔法。戦場から一瞬で逃げ出す魔法。炎で焼き殺したり、氷づけにしたり、雷を落としたり。

 みんな民間へと流れていって、便利な魔法へと改良されていった。

 今や、家を掃除するのも、皿や服を洗うのも、世界の反対側へと飛んでいくのも自由自在。野生の獣を狩ったり、大量の魚を捕獲するのにも魔法が使われている。


 もしかしたら、僕らは不毛な争いをしながら、世界の進化を促進し続けているのかも知れない。

 だとすれば、いつ終わるとも知れないアナジルとの戦いも無駄なだけではないということになる。


 なんにしても目的があるというのはいいものだ。

 もしかしたら誰かの役に立っているかも知れないという淡い希望のようなものがあるだけで人は生きていける。

 かすかな希望の光にすがるだけで、もうしばらくこの戦いの日々も続けられそうだ。

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