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魔物たちは、本当に戦闘がしたいのか?

「フ~」

 僕は魔王城の中にあるバーのカウンターでため息をつく。

 正確に言えば、新魔王城の中にあるバーだ。


「どうしたの?魔王ちゃん。ため息なんてついちゃって」

 カウンターの向こうからバーテンダーのラミーが声をかけてくる。

 ラミーの種族はラミア。人を魅了したり安心させる能力がある。なので、カウンセラーとか接客業に向いているのだ。


「いやね。最近、以前にも増して忙しくなってきちゃって。ちょっと気が滅入ってきたっていうか。気が休まるヒマもないっていうか…」


「アラ?珍しいわね。魔王ちゃんが弱音を吐くだなんて」


「僕だって、弱音の1つや2つは吐きたくなる時があるさ。特に、こう忙しいとね」


「そりゃ、そっか。だったら、アタシが変わってあげようか?魔王ちゃんのお仕事と」


「僕と?君が魔王になるってこと?」


「そうよ」

 ニッコリと笑って答えるラミアのラミー。


「や、や、や、やめてくれ!君が魔王になんてなったら、何もかもがメチャクチャになってしまう!」

 僕は、以前にラミーをアドバイザーに置いた時のことを思い出して叫んだ。

 あの時は、散々な目にあった。もう同じ思いをするのはこりごりだ。


「冗談よ。少しは元気が出た?」

 笑いながらラミーが言った。


「なんだ冗談か。ああ、ビックリした…」


「フフフ」

 ラミーは店の備品であるガラスコップを拭きながら笑っている。


 そこで、ふと僕は普段から考えていることをラミーに伝えることにした。


「なあ、ラミー。もしも、もしもだよ。人間と魔物が和解して、一緒に協力し合う世界が来たとしたら。君は、そんな世界に住んでみたいと思うかい?」


「そうねぇ…」

 ラミーが少し考えてから言った。

「おもしろそうかも!」


「ほんとに?」

 僕はちょっと驚いた。


「ええ、だって楽しそうじゃないの。人間にもいろいろいるんでしょ?会ってみたいな、アタシも。そんな人間たちに。そうして、いっぱいお話をして、いっぱいお酒を飲んでもらって、このお店も大繁盛ね♪」


「けど、他の魔物たちはどう思うだろうか?」


「他の魔物たち?」

 ラミーはキョトンとしている。


「いや、だって、みんな戦闘で飯を食ってるわけだろう?それを急に『人間界への侵略はやめます』『今日からみんな人間たちと仲よくやってください♪』なんて言って、聞いてくれるかな~?反逆を起こしたりするんじゃないか?」


「どうかな~?みんなだって、疲れてるんじゃないの?長い戦いが続いて。命だっていつ落とすかわからないわけだし。それに比べたら、平和に和気あいあいとやっていく方が楽なんじゃないの?」


「だけど、みんながみんなそうとは限らないだろう。血の気が多いのもいっぱいいるし。『戦闘こそが生きがい!人を殺せなくなったら、オレは生きていけない!』みたいなのとか」


「そりゃ、そういうのもいるでしょうけど。みんながみんなじゃないと思うわよ。むしろ、命をかけずに生きていけるなら、その方がいいって人も多いんじゃない?」


「フム…」と、つぶやいて、僕は頭の中でラミーの言葉を反芻(はんすう)した。


(魔物たちも、意外と温厚なのかも知れないな。僕が思っているのと違っていて、マジメに働いて生きていける者も多いのかも。事実、新魔王城の建築で楽しく働いてくれていたし…)


 それから僕は、それとなく他の魔物たちにも似たような質問をしていった。

 酒場の客だとか、魔王城の掃除夫だとか、戦闘部隊の隊長や兵士だとか。もちろん、冗談っぽくだが。


 すると、ラミーの言った通りだというコトがわかってきた。

 もちろん、根っからの戦闘好きは多いが、それでも「常に命をかけて戦いたいか?」というと、そうでもない。金のために仕方なく戦っている者がほとんどで、「他に安全で安定した職があるならいつでも転職して構わない」という者も多かった。

 仮に、それが人間と魔物の和解の果てにある暮らしだとしても、それでも。


「フム。実は好機なのかも知れないな。すでに機は熟しており、長きに魔王軍と人間軍の戦いに終止符を打つ時がやってきているのかも」

 僕は、そう判断した。

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