快進撃
それからというもの、僕の日課は人間界へと出かけて行って、世界を救う会の相手をしてやることになった。
この時の世界を救う会は、まだチッポケな組織に過ぎず、会員たちのやる気こそあるものの、現実的な力はなきに等しかった。
なので、よく街の人たちからイジメられていたものだ。
「オイ!お前ら何やってんだよ!」
「魔物たちに味方する気か?」
「この魔王軍の手先めッ!」
ガタイのいい男たちが、そう言って因縁をつけてくる。
もっとも、その言葉にもある種の真実が含まれてはいたが…
何しろ会員の1人であるこの僕は、魔王そのものなのだから。
「ハイハイハイ、どうもどうも。ごくろうさ~ん」
そう言って僕は前に出る。世界を救う会の面々の盾となる形だ。
「なんだ、テメェは?」
「いえね。この人たちは一生懸命に世界を救おうとしてるんですよ。人間たちと魔物たち手に手を取り合って幸せに生きていける世界を作ろうとしてね」
「そいつは知ってるよ。だから、それが無謀だっつてんだろうが!魔物なんかとお手々つないで仲よくできるかつーの!」
「いや、でもね。何ごともやってみないとわからないでしょ?よく言うじゃないですか。『やる前からあきらめちゃいけませんよ!』って。学校の先生も言ってたでしょ?」
「何がセンコウだ!そんなもんはクソ食らえつーの!とにかく、オレらはこいつらのやってるコトが気にくわねぇんだよ!邪魔するなら、テメェも一緒に巻き添え食らうぞ!」
「ハイ、どうぞ。やってみてください」と、僕は余裕しゃくしゃくに応える。
一斉に殴りかかってくる男たち。確かに人間にしては鍛えている方だが、そんなもの魔王の僕には全く通用しない。おそらく、そこら辺の冒険者にも勝てやしないだろう。
次の瞬間、殴りかかってきた男たちは全員、地面にのされていた。
何をされたかすらわかっていないようだ。
「アレレ~?」
「どうなってんだ?」
「テメエ、謎の技を使いやがって!ズリィぞ!」
などと口々に叫ぶ男たち。
もちろん、地面に倒れたままだ。
「ズルくも何ともないですよ。こんなもの基本体術に過ぎませんからね」
僕は答える。
立ち上がって再び襲ってくる男たち。
次の瞬間、全員地面に倒れている。
また立ち上がって襲ってくる。
地面に倒れる。
何度か同じコトを繰り返し、ようやく彼らもあきらめた。
それどころか、素直になって教えを請うてくる。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「一体、どうなってんだ!?」
「師匠!オレらにもその不思議な技を教えてくだせぇ!」
僕はしばらくの間考えてから答えた。
「フム。教えてあげないこともないけど。いくつか約束してもらうよ」
『約束?』と、男たちは声をハモらせる。
「ああ、そうだ。今後は、この人たちに暴力を振るわない。活動も邪魔しない。いや、それだけじゃあない。君らも一緒に協力するんだ。“世界を救う会”にね」
男たちはしばらくの間、ひたいを寄せ合ってヒソヒソゴニョゴニョと小声で話合い、ついに結論を出した。
「わかりやした!」
「オレら改心します!心を入れ替えて、この方たちのお手伝いをさせてもらいます」
「世界を救う会。結構じゃないですか。だから、修行をつけてください!師匠!」
こうして、街の荒くれどもは仲間となった。
*
似たようなコトが何度もあった。
「世界を救う?何をバカなことを」
「夢みたいなことばっかり言ってんじゃないわよ」
「魔物どもはオレらの敵だ!魔王も魔物も徹底的に叩き潰す!」
などと声を大にして言っていた人たちを片っ端から説得していった。
時には暴力も振るった。
もちろん、相手が先に攻撃してきた時に限ったが。
そうやって言葉と力を駆使して、どんどん仲間を増やしていった。
何しろ僕は魔王なのだ。しかも、元勇者でもある。
言葉で人を丸め込むのも、実力行使も得意中の得意!
自然と信奉者は増えていき、街の大多数の人が味方についてくれるようになった。そうでなくとも、少なくとも目に見えて敵対行為を取ることだけはやめてくれた。
こうして、世界を救う会は会員数を増やし、資金も増やしていった。




