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勇者捕獲計画

 最近、新しい戦法を考えた。

 魔王城に侵入してくる勇者たちをそのまま倒すのではなく、捕獲してしまうのだ。

 この戦法のよいところは、捕獲した冒険者たちを、魔王軍の手駒にしてしまえる点だ。


 もちろん、全ての冒険者たちが、「はい、そうですか」と言うことを聞いてくれるわけではない。

 どうしても自分の意志を貫き通し、正義の心を守りたいというならば、いたしかたがない。 

 その場合は、処刑するか、奴隷としてこき使うか、魔物のエサにでもなってもらおうじゃないか。


 ただし、この戦法1つ欠点があって、普通の戦闘で倒すのに比べて難易度が高いのだ。

 ギリギリで死なない程度に攻撃し、気絶させる。これが、やってみるとなかなか難しい。いつも、オーバーダメージで殺してしまう。

 それでも、数をこなせばどうにかなるもので、何体かに一体はうまく気絶させて捕獲できるようになってきた。


「魔王様。世界は素晴らしいですね。世界がこんなに輝いていたとは、魔界に来て初めてわかりました」

 元勇者のひとりが言った。


「だろう?世界は思っているよりも自由なのだ。人間たちに味方し、人間たちを守るよりも、こうして魔物たちと共に生きる方がいい。その方がよほど幸せだし、自由にふるまえる」

 魔王である僕は答えた。


「まったく、まったく」と、元勇者。


 そのような会話を交わしながら、心の中で僕は疑問と矛盾も感じていた。


(このまま進み続けても、いつか終わりが来る。魔王軍か?人間軍か?どちらかが滅びる時が。あるいは、その両方か?)


 お互いが能力や技術や魔術を極め続けていけば、いずれ限界が来る。

 最悪の最悪、極限まで威力を増した巨大魔法同士がぶつかりあって、この星そのものを吹き飛ばしてしまうだろう。


(その前に和解するべきなのでは?人と魔物が手を取り合って…いや、そこまでではないとしても、何か“適度な競争”のようなモノを残しながら、切磋琢磨し合って生きていくべきなのでは?それが健全な進化の仕方というものだろう)


         *


 僕は、人との接触を避け、ひとりでボ~ッと過ごすようになった。

 日に日に思索にふける時間は長くなっていき、ついに誰とも会話しなくなる。


 ひとりの時間が長くなると、自然と想像力が発達する。

 遠い世界の光景をよく夢想した。その世界では、人々は平等に暮らし、何1つとして不自由がない。望めば何でも手に入る。そもそもお金すら存在しないし、無理をして働く必要もない。

 だから、誰も争わないし、ましてや殺し合いなど余計に存在しない。


 あの世界は、単なる空想なのだろうか?

 それにしては、妙な現実味がある。実際に住んでいたという実感とリアリティがある。


「もしかしたら、向こうの世界の方が現実で、こちらの暮らしの方が夢なのでは?」

 そんな風に考えたりもする。


 そんな時、僕はブンブンと頭を横に振って否定する。

「ダメだ!ダメだ!ひとりぼっちでいて、考え事ばかりしてるから、このような妄想に取り憑かれてしまうのだ。現実を見ろよ!」


 現実の僕は、元勇者の現魔王。

 魔王は常に力を求め、ナンバーワンであり続けなければならない。そうしなければ、世界のバランスは崩れ、メチャクチャになってしまう。


「やれやれ、世界を支配するってのも大変なものだな」


 どこかの誰かのマネをしている頃はよかった。

 常に高みを目指し、ナンバーワンを目指し戦い続けていた頃は…


 だが、いざ自分がトップに立ってみてわかった。理解した。

 みんな僕を目指してやって来るのだ。レベルを上げ、能力を伸ばし、新しいスキルや魔法を獲得し、トップに立つ魔王を倒そうとやっきになる。


 僕も簡単に倒されるわけにいかないので、やってくる者どもを追い払うため、さらなる力を手にする。それがどれほど大変なコトなのか、ようやく理解した。


「これは、僕が死ぬまで終わらない戦い。そういうことなのだな?」


 あるいは…

 あるいは別の選択肢を選ぶしかない。

 勇者が勝つか?魔王が勝つか?それとは別の選択肢を。

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