表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/27

魔王城の移転

「なるほど、なるほど。それはお困りでしょう」

 僕の話を聞いて、アドバイザーのグレゴリー。


「どうすればいい?」と、僕はたずねる。


「では、そろそろ魔王城を別の場所に移してはいかがかと?」


「魔王城を移す?移転するということか?」


「その通りです。正確に言えば、新規築城ですね。元々、この城は先代の魔王様のもの。あなた様にはふさわしくない」


 グレゴリーの言うことは事実だった。

 確かに、この城は前の魔王が使っていたもの。それを引き継いで、そのまま使わせてもらっていたに過ぎない。


「新しい魔王には、新しい城がふさわしいというわけだな?」


「その通りにございます」


「だが、それには金がかかるだろう?多くの人員も必要だ」


「もちろん、もちろん。けれど、築城は新たな労働を生み出します。それにより、(ふところ)がうるおう者も多いのでは?新たな雇用創出。そうお考えになっては?」


「フム。そういう考え方もあるか」


 新魔王城の建設は順調に進んでいった。

 力持ちの魔物たちが石材を運び、移動魔法の使える魔術師が建築予定地まで一瞬で移動させる。

 空を飛べる者、手先の器用な者、それぞれが特技を生かし、一致団結して働いた。

 仕事が終わり夜になると、彼らは酒場に繰り出した。そうして、酒やギャンブルに興じた。


「こういう幸せもあるのか…」

 魔物たちの営みを眺めながら、僕はつぶやく。


「ご満足ですか?魔王様」と、グレゴリー。


「ああ、満足だとも。ただし、それは新しい魔王城が着々と完成しつつあるからではない」


「では、なぜ?」


「争うことなくして、皆が幸せに暮らしていけているからだ」


「フム」と、グレゴリーは一言。


「なあ、グレゴリーよ」


「なんでしょうか?魔王様」


「このようにして生きていけぬものかな?人間たちと協力して」


 しばらくの間考えてからグレゴリーは答える。

「可能でしょうな」


「そうなのか?」と、僕は驚く。

 てっきり反対されるものとばかり思っていたからだ。


「やり方によっては」と、つけ加えるグレゴリー。


「それは何に関してもだろう?何をするにしてもやり方は重要だ」


「もちろん」


「だが、可能は可能なのだな?人間たちとの共存も」


「魔王様がお望みとあらば。魔王様にはどのような選択肢を選ぶ権利もありますから」


 マジかよ…

 てっきり、魔王の使命は人間たちを滅ぼし、この世界を支配することだと思っていた。

 だが、共存する道も残されていたとは。


「そうは言っても、反対する者は多いのでは?魔物というのは元来そういうものだろう?人間を襲い、むさぼり喰い、快楽のままに生きる」


「だから『やり方によっては』と申し上げたでしょう。そもそも、魔王様のおっしゃていることは人間においても同じなのでは?」


 それはそうだ。魔物を惨殺して回ってるではないか、人間たちは。喰らうわけではないといえ。

 私利私欲にまみれ、自分の利益のためならば他者の命など何とも思っていない人間も多い。同じ人間同士で争い合うほどに。

 そういう意味では、魔物も人間も同じなのでは?


「さて、どうされますかな?魔王様。本当に人間との共存など目指してよいのですか?」


 グレゴリーの問いに、僕はしばし立ち止まって考える。

 だが、結論は出ない。


「とりあえず、このまま進めよう。新魔王城の建設は続け、人間の勇者たちが攻めてくるというのであれば、対処する。軍はこのまま維持し、ここの兵士たちのレベルアップをはかれ」


「御意に」

 グレゴリーがうやうやしく頭を下げて答えた。


 目の前で、新魔王城の建設は続いている。

 だが、僕の頭の中は“魔物と人間たちの協調”というアイデアでいっぱいになっていた。

 果たして、そのアイデアは現実的なのか?はたまた単なる夢物語か?

 今すぐではないにしろ、もしも何かしらのキッカケがつかめるなら『そこに賭けてみてもいいかも知れないな』と、僕は思い始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ