魔王の部屋にて。冒険者たちとの対決
最近、妙に魔王の城まで到達する冒険者が増えてきた。
以前は、全く来訪者がなかったのに、急に増えてきたのだ。
「なんだか、おかしいぞ…」
僕は、魔王の部屋でひとりつぶやく。
魔王城どころか、魔界にたどり着くのだって、一筋縄ではいかないはず。
魔界は人間界とは別の空間にあり、人間界で様々な冒険を経て、何人もの重要人物に会い、いくつものキーアイテムを手に入れなければたどり着けないようになっている。
それが、どうだ?月に数組。多い時には週に2度も3度も冒険者のパーティーがやって来る。
何かがおかしい。まるで、攻略法が知れ渡ったみたいだ。
もちろん、魔界の住人たちは別だ。
移動魔法の使い手ならば、瞬時にこの城までワープできる。
「まさか、裏切り者がいるのか?誰かが人間たちに手を貸している?」
すぐに思い出したのは、軍師であるアナジルの顔だった。
だからといって、問い詰めるわけにもいくまい。
たとえ、「お前が手助けしているのか?」とたずねたところで、「さてね?どう思われますか?魔王様」と言って、不気味に笑うだけだろう。
「まあ、いい。来たい者は来させておけ。どうせ、魔王城は複雑なラビリンスになっている。並の人間では、この部屋にはたどり着けまい」
だが、それも時間の問題かも知れない。
攻略法が知れ渡っているにせよ、内部に裏切り者がいるにせよ、ラビリンスもいずれは攻略されてしまう。
この部屋まで勇者どもがたどり着く日は近い。
僕は、来るべき日のために入念な準備をおこたらなかった。
*
そして、その日は来た。
最初の冒険者一行のご到着だ。
「貴様が魔王だな!これまで散々地上を荒らしてきたようだが、貴様の悪行も今日限り!覚悟しろ!」
玉座のある大広間に、冒険者のリーダーらしき人物の大きな声が響き渡る。
なんとベタなセリフなのだ。
僕が先代の魔王と対峙した時でさえ、そんなベタなセリフは吐かなかったぞ。
いや、吐いたか?完全に同じではなかったかも知れないが、似たようなコトは言ったかも知れない。
ま、どうでもいい。
「フハハハハ!よくぞ来た、勇者ども!だが、ここが貴様らの墓場!今日が貴様らの命日だ!」
どうだ?少しは魔王っぽさが出ただろうか?
冒険者たちは、僕の言葉に対してギャ~ギャ~言っている。
これまた、お決まりのセリフだ。大義がどうのこうのだとか、正義がどうのこうのだとか、世界を救うやら悪を滅ぼすやら。
僕は、彼らの文句にそれっぽい言葉で返してやった。
そして、いよいよ戦闘が始まる。
勇者らしき男の他に戦士や魔法使いや僧侶もいる。
彼らは死力を尽くして攻撃してくる。だが、魔王の城の秘密の部屋で、過去の秘術やら必殺技やらを学んだ僕の前には、なすすべもなかった。
冒険者一行をひとひねりにしてやると、あとには人間の死体がいくつか転がっているのみ。
僕は、清掃係の魔物を呼び出すと「片づけておけ」と一言残し、自分の部屋へと戻っていった。
*
「フ~、ドキドキした!」
自室に戻り、後ろ手で扉を閉めると、開口一番僕はつぶやく。
ひさびさの戦闘に、まだ頭はカッカしている。
心臓はドキンドキンと鼓動し、体中が燃えるように熱い。
「魔王になって一番の仕事をしたという感じがする!相手がザコ敵でも、こうだとすると、もっと強力な勇者たちと戦ったら、どうなるんだろう?」
その願いはすぐにかなえられる。
月に数度、魔王の城までたどりついていた冒険者たちは、すぐに数倍になり、数十倍になった。
まるで観光名所だ。
当然、来訪者の数が増えれば、玉座のある大広間までたどり着く者たちの数も増えていく。
僕は週に何度も、多い日には朝・昼・晩と魔王討伐隊の面々と対決する。
もちろん、1度も負けたことはない。負ければ、そこでゲームオーバー。新しい勇者は、次の魔王となるだろう。
だが、危ないことはあった。
たとえば、魔法のアミュレット。僕が先代の魔王を倒す時に使った秘密のアイテム。これがうまく決まれば、僕はしばらくの間、身動きが取れなくなってしまう。
もちろん、それも対処済み!自分が使った技を、自分で喰らうはずがない。
魔王城の書庫には、魔王のアミュレットを打ち破る秘術も書かれていた。それだけではない。ラミアのラミーが使う魅了能力や、洗脳攻撃、眠りの魔法なども無効化する技を身につけた。
それでも、いつこの首が取られるかはわからない。
そろそろ、別の対策が必要だった。




