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何でも屋は中途半端

(ラミーの件はいい勉強になったな)

 僕は、魔王城の自分の部屋でひとり思った。


 見た目や仲の良さで人事を決めてはいけない。

 それに加えて、以前の魔王軍はあまり統率が取れていなかったこともわかった。統率は取れずとも、それなりにうまくいっていたのだ。


「『規則、規則!』と、がんじからめにし過ぎてはいけない。そんなコトをすれば、兵たちから不満がもれ、いざという時に働いてくれない可能性が高まる」


 その気持ちは僕にも理解できた。

 冒険者としてモンスター狩りをしていた頃には、ルールだとかしがらみだとかが大嫌いだったから。

 だが、魔王として部下を扱う立場になって、そうも言っていられなくなった。

 人を扱うとなると、どうしてもルールを作らざるを得なくなる。最低限のルールだけは…


         *


 最近は、部隊の編成の勉強もしている。

 魔王軍の兵士たちは、力まかせに戦うタイプが多い。人間に比べて、素の能力が高いからだ。

 だが、天性の能力に頼り過ぎて、技術をおろそかにしたり、修行をおこたる者も多い。それでは、人間たちに倒されてしまう。

 なので、僕は口を酸っぱくして命じる。


「常に修行をおこたるな!生涯、能力を上げ続けよ!戦場に立つ限り!」


 声を大にしてそう言うのだが、なかなか伝わってくれない。

 みんな目の前の快楽におぼれてしまい、先を見ようとしないのだ。気づいた時には死が待っているというのに…

 人間の冒険者たちに命を奪われてからでは、もう遅い。


 そうそう、部隊編成の話だったな。

 最初、僕は兵士たちに「何でもできるように」と教育していた。

 力まかせにパワーに頼るのではなく、スピードを上げ、小技を効かせて叩かせるよう指導した。

 武器による攻撃だけではなく、攻撃魔法や回復魔法、補助魔法なども覚えるように推奨した。


 ところが、そのやり方には限界があることに気づいた。

 中級レベルまでは、それでいい。だが、上級レベルになると、途端に通用しなくなるのだ。

 あたりまえの話ではあるのだが、分散してリソースを()くと、一点集中型に勝てなくなってしまうのだ。


「“何でも屋”と“専門家”どちらを目指すのか?」というのは、古代から議論が行われてきた永遠の命題でもある。


 勇者であった時代、僕は何でもやってきた。剣も魔法も、苦手分野とはいえ、回復魔法や補助魔法もある程度は扱えるようにしておいた。

 ところが、魔王軍の(おさ)として実際に全員を何でも屋で育てると、組織全体が中途半端になってしまった。

 戦士・魔法使い・回復役など、それぞれに特化した能力を持つ人間たちに勝てなくなってしまったのだ。


 なので、最近は“あえて苦手分野を作る方式”に転換した。代わりに「自分の得意分野だけは誰にも負けるな!」と命じている。

 おかげで、人間たちともいい勝負ができるようになってきた。


 ただし、一定の割合で複数職をこなせる人材も用意したい。一点突破型は、応用力が効かないからだ。

 何ごともバランスが大切。専門職と何でも屋をバランスよく配置することで、戦闘はより楽になり、勝率は上がっていく。


「そういえば、僕が勇者だった頃は、常にソロで戦っていたな…」


 ソロというのは、仲間を作らず1人で戦う行為。

 何でもできるからこそ、他人に頼る必要がなく、たった1人で戦い続けられた。

 前の魔王も単独で戦うのを好んだ。だからこそ、僕に敗れたとも言える。


「だが、そういうのも、もう時代遅れだ」


 アレから時は過ぎた。

 冒険者たちもパーティーを組んで戦うのが主流になってきているし、魔王軍にしてもそれは同じ。

 1人で何もかもをこなす時代は終わったのだ。


 最近の戦闘訓練は、仲間とのコンビネーションプレイが主になっている。

 もちろん、個々の能力は上げなければならない。それは大前提として、その上で仲間の協力は欠かせない。


「僕のやり方も、時代遅れになっているのかも知れないな…」


 魔王の城には、魔王だけが利用できる秘密の部屋があり、過去のあらゆる魔法が書かれた書物が眠っている。

 それらを使って、僕は極限まで能力を上げようとしている。だが、勇者一行が徒党を組んでやってきたらどうだろう?

 果たして、僕は勝てるのだろうか?


 もちろん、その自信はある。

 現状なら、どんな冒険者がやって来てもひとひねりだろう。

 だが、時代の進歩は早い。予想もつかないような新しい魔法や、攻撃方法が開発され、まだ見ぬ武器や防具が生まれてくるかも。

 その時に、たった1人で戦闘して、勝てるのだろうか?


「まあ、いい。悩んでいても仕方がない。そんなヒマがあるなら、ちょっとでも勉強して、さらに腕を上げるだけだ。もしも、それで限界を感じたら、その時はその時だ」

 そう言って、僕はまた書庫にこもった。

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