5話 伝えたい想い
次の日
「――♪ ――!」
私はまた学校の帰りに、レシアのもとで歌を歌っていた。
昨日よりは上手く歌えている気がするし、自分がどんどん上手くなっていくのがわかって嬉しかった。
もっとうまくなりたい!
「良い感じね。……でも、ツイ何か大切なことを忘れていない?」
「え?」
大切なこと?
音程が外れているとか?
「歌うって意味を忘れちゃダメよ。歌は想いがないと心にはひびかないの。うまくなることも大事。でも、心をこめるのはもっと大事」
そっか。
うまくなればいいってもんじゃないよね。
想いをこめることが大事。
がんばれって。前のわたしや、今がんばっているわたし……そして、みんなにもこの気持ちを伝えたい。
「やってみる。――♪!!!!!! ~――!」
「そう、そんな感じ。すごいわ」
この自分の声に、自分の心がふるえるような気持ち。
歌う、自分の想いを歌に乗せるってすっごく気持ちが良い。
「いい音ね」
リンリン、リリリリン。
ん?何この音?
気づくと、周りにたくさんの光りが跳んでいた。
絵の具みたいに色んな色がある。
なんだろうこれ。
「ツイ。耳をすましてみて。」
わたしはレシアのマネをした、
「いいこえ」
「つたわった」
「あなたのかがやき好き」
なんか声が聞こえてくる。
もしかして、この光りから?
光りをよくみると、羽が生えた女の子がみえる。
もしかして周りもかな。
「この子達は、昔わたしを手伝ってくれていた妖精よ。久しぶりにあなたのような人が来て、歌が聞けたのが嬉しかったようね。」
その子達はわたしの周りを楽しそうに飛んだり、肩に乗ったりしていた。
「あーせっかく良いとことだったのにそろそろ帰ったほうがいいかも?まさか……この子達まで呼び寄せるとはビックリしたわ。」
「そうなの?すごい?」
「えぇ。これから、あなたの手伝いにもなってくれるはず。」
嬉しいし、これからどうなるのかワクワクする。
それにしても、この子達とわたしの歌やおどりになんの関係があるんだろう。
かわいくて心が落ち着くとかかな?
わたしはさみしがっている妖精をあとにしてさようならをつげた。
明日はダンスをするっていってたし。
楽しみだな。
「ただいま」
「おかえりツイ!」
「お父さん!!」
ドアを開けるとお父さんが待っていた。
「ツイが最近元気だって聞いたからな。今日はすぐに仕事を終わらしたんだ。」
お父さんは疲れているようにみえるけど、わたしを見て元気になったみたい。
「「いただきます」」
「はーい。ちゃんと噛んでね」
「「はーい」」
みんなで久しぶりにご飯が食べられるなんて嬉しいな。
なんか、レシアに会ってから一日一日が輝いて見える。
今、自分の生活が楽しいからかな。
「歌っておどるって本当か」
「うん。友達と一緒にやっているの」
「いい友達に出会えたのね。」
本当にレシアに出会えて良かった。
きっと会えてなかったら、私はずっとこわくて何も出来なかった。
でも、今はどんなこともやってみたいって思える。
「ちゃんと学校もがんばるんだぞ?」
「もちろん! 明日はサッカーするんだって。したことないから、不安だけど、がんばる!」
そういうと、お父さんとお母さんは顔を見合わせて嬉しそうに頷いた。
「本当に楽しいのね」
「なんでもやってみなさい。時間はあるんだから」
「うん!」
二人が嬉しいと、私も嬉しくなるな。
「明日はサッカーだから、体操服を入れなきゃ。」
やった事ないけど、なんとかなりそうな気持ちになってくる。前の私なら不安でいっぱいで眠れなかったはずなのに。
『サッカーってなんだったかしら』
「ボールをけるんだよ。こうやって」
私はボールをけるジェスチャーをした。
「あーあれね。聞いたことあるわ。」
「楽しいと思うよ。やったことないけど」
スポーツって怖いし、チームプレーだから失敗したら怖い。
「きっと楽しいわ。楽しんでなんでもやってみるのがいいわ。」
「だね!」
でも、なんでも楽しもうとやってみる。
やってみないと楽しいも何も分からないんだし。