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4話 想いと歌

「行ってきます」

 わたしは本を抱えて家から飛び出した。


 レシアに学校までの道を見せてあげたくなったんだ。



『おーこれがツイの世界の花なのね。』

「きれいでしょ? わたしも好き」

 なんか、わたしの生活がもっと楽しくなったみたい。



「おはよう! ツイちゃん!」

「おはよう!」


 彼女はわたしの友達のヒカリちゃん。

 一番の友達なんだ。


 ヒカリちゃんはサッカーがうまくて、クラブによく通っているんだ。


「ツイちゃん、なんかソワソワしてる?」


 えっ!

 そんな風に見えているなんて。

 楽しみだけど、今は学校に集中しないと。ソワソワを隠さなきゃ。



「ううん。なんでもないよ。」

「そうなの?そんな顔みたことないから少し嬉しかったのに。」

「そうかな? いつも通りなんだけどなぁ」


 わたしはなんとかごまかした。

 でも、嬉しいって言ってくれるのは私も嬉しいかも。



『その子があなたの友達なのね。』


『うん。サッカーがすっごく上手なんだ』

『そうなの。それはすごいわね。



 皆で学校に行き、そこからはレシアと一緒に授業を受けた。


 でも、頭の中はアイドルの練習のことで頭がいっぱい。


 どんなことをするんだろう。

『ツイ。ちゃんとやっているの』

「あっ」

 しまった。


 レシアの声にびっくりして声が出てしまった。


「ちゃんと聞いているのか」

 ひいいい。

 先生が怒っているよ。



「この問題解いてみろ。」

「っ――!」

 先生が黒板を叩いた。

 どうしよ。


『大丈夫よ。そこのノートに書いているでしょ?』

『うん……』


 しっかりと答えを確認して、前にでる。

 でも、前に出るのがまだ怖い。


『がんばって、ツイ!! あなたならできるわ。ナイストライよ』


 失敗してもいい。

 大事なのは前にでて、自分を見失わないことだ。



 コツコツ


「……正解だ。なんだちゃんと聞いているじゃないか。よし」


 先生は安心したようにニコニコしていた。

 いっつも、緊張して固まってしまうんだけど。



『流石よ。ごめんね、次は気をつけるわ』

『大丈夫。レシアのおかげでちゃんと前にでられたよ。いつもは、固まっちゃうんだけどね。』


 失敗してもいいから挑戦する。

 それってすごく大切なことなんだな。


 わたしはレシアのおかげでまた自信がついた。



 そして、放課後。


 レシアに給食とか色んなことを教えて、すっごく学校が楽しかった。



 いつもと同じ学校だけど、特別な日になっていくような感じ。


『じゃあ、わたしのところにいらっしゃい。人はいないわね。』


「うん。どうしたらいいの?」

 そういうと、抱え込んでいた本が飛んだ。

『ひらけ、夢のかけら!!』


 レシアの声に反応するように、また本から光りがあふれてきた。



「――!」

 目を開けると、前に来た場所だった。

 そして、レシアは微笑んで待っていた。



「今日はすごく楽しかったわ。ありがとうね。」

「ううん。わたしも楽しかった。勇気だせたし。」



「それはよかったわ。でも、次はツイがびっくりしないように気をつけるわ。」

 そういうと、レシアはわたしをつれてステージに上った。



「昨日みたいに声をだしてみて。次はそれじゃなくてあなたの想いをこめて歌ってほしいの」

「想い……むずかしいね」



「将来、どんな人になりたいか。とかどんなふうにここでおどりたいとかね。」


 将来、どんな人になりたいかなんて考えた事なかったな。

 わたし、ずっと周りが怖くて自分を出せなかった。


「どうしたの?」

「あ、あのね……」


 レシアなら言ってもいいかな。

「わたしね。この学校に来たのは少し前なの。そのときの学校は」



 なんか。胸がドキドキする。

「えぇ。聞いているわ。何か引っかかりがあるのね。教えてちょうだい。」


 その声に安心して、続きを言おうとがんばった。



「そのときは、みんな怖くて、少し前に出ただけで怒られて、バカにされて。それがこれまでずっと怖かったの」

 自然に涙が出てきてしまった。



「だから、夢なんて分からない。怖くて、ずっと」

「そうだったのね。ごめんね。いやなことを思い出させてしまったようね。」

 レシアはそう言うと、わたしの頭を

 なでてくれた。



「でも、それはわるいことだけじゃないわ

 。そうやって想いがあるんだから。」



「えっ」

「そうねぇ、あなたのような人がいたら、今のあなたはなんて声をかける?」


 もし、少し前のわたしがいたら。



「失敗してもいいから、がんばってみようってはげましたい。周りだけ見ないでって。」

「えぇ、それよ。あなたのけいけんは、だれかを、ツイのような悩みを持つ子を応援できるかもしれない。」


 応援……。


 たしかに、もし自分のように悩んでいる子がいたらレシアがしたようにすると想う。

 わたしにも、そんなことができるようになるかな。

 そんな風になりたいな。


「今よ。その想いを歌に込めるのよ」

「うん。――っ。」


 わたしのような、かがやきを探している子を応援したい。見つけてあげたい。


「ここで、その想いを表せたら……背中を押してあげるような人になれるわ。そんな姿になりたくない?」


 私はレシアの問いに、無意識に頷いていた。そんな人になってみたい。


 ――なりたい!!


 ピカッ



「え?」

 すると、空が光って一枚の紙が落ちてきた。

 ピンクや青、オレンジの色が混ざった紙?


「なにこれ」

「これは、想いのガクフ。わたしがさわるとこうやって――


「~♪」



「えっ!?」

 心がはずむような音や温かく心をつつむようなメロディーが流れてくる。


「あなたのかがやきの音よ。これを使って今から歌をつくるわ」

「歌を!?」

「ツイと一緒にね。」



 私も?歌をつくるってむずかしそう。

 音楽の時間で少しやったことはあるけど、ダメダメだったし。



「といっても、あなたがいれたい言葉をわたしがうまーくやるから。」

 入れたい言葉か。でも、やってみたい。



 伝えたいこと、みんなに言ってあげたい言葉。

「一緒にちょうせんをしようとか?」



「いいわね。じゃあ、最初はこうで。」

 レシアが空中に文字を書くと、ガクフに言葉が書かれていく。


 どうなっているんだろ。これ。



「でも、最後の方がいいかな。」

「ツイがそうしたいならそれでいいのよ。自信を持って。わたしも手伝うから」


 すごく大変だけど、レシアがほめてくれるのが嬉しくてどんどん言葉が出てきた。



「ちょうせん。より、踏み出そうの方がいいかも。」

「そうね。そっちの方が背中を押している感じがするわ。」


 そして、ガクフが完成した。

 じゃあ、早速試しに歌ってみよう。



「~♪で――えっ!ここもっと早く言わなきゃ」

「言葉と歌。最初は組み合わせるのはむずかしいかもしれない。それでも、あなたの気持ちで生まれた歌はきっとあなたに答えてくれる」


「うん」

 リズムとか、歌の練習をしたことがないから、うまくできないや。



 でも、まだまだがんばれそうな気がする。

 前のわたしならすぐ諦めていたかも知れないのに。


 変わったのかなわたし。


「今日はここまでね。また明日がんばりましょう」

 何か新しいことをしていると、時間があっという間にすぎてしまう。


 でも、それって時間を忘れるくらい楽しんでいるってことなのかな。



「うんありがとうレシア!」

 わたしはレシアにお礼をいって、元の世界に戻った。



 今日もむずかしかったけど。やったことないことにちょうせんするってすごく楽しい。


 明日もがんばろう。家に帰って、お母さんに「ただいま」といった。



「おかえり、ツイ。昨日も今日も遅いじゃない。なにかあったの?怪しい人と遊んでいるんじゃないわよね?」

「違うよ。友達とダンスしているの」

「ダンス!? ツイが!」



 お母さんはすごくびっくりしていた。

 そんなにおどろかなくてもいいのに。


 確かに、スポーツをあまりしたことがないけど。



「そんなにびっくりする?歌っておどるんだから」

「う、歌って……おどる!!??」


 お母さんがまたびっくりしてしまった。


「で、できるの?」

「できるもん!! そんなにおどろかないでよ」



 お母さんが少し呼吸をして落ち着いた。


「そうね。最近元気そうだし、まぁツイが楽しいならそれでいいわ。お父さんにも見せてあげたいな」


「いいよ、そんなことしなくて。」

 お父さんは最近遅く帰ってくるから会えてない。


 でも、お父さんにも教えてあげたいな。

 前はわたしが元気ないのをよく心配してくれていたし。

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