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2話 不思議な世界

「えっーーー!!!」

 びっくりしても、逃げられずに光りに包み込まれてしまった。



「んっ……」

 気がつくと、まったく見たことがない場所にいた。


 なんかボロボロの場所。でもなんか大きな公園にある広場みたいな台が目の前にあった。

 とんでもないところに来ちゃったみたい。

 どうしよう。これ、おうちに帰れるのかな?


「あなた、なにをしているの?」

「ひゃひ!」

 びっくりした!


 急に女の人の声が聞こえてきて、私はとびはねていた。

 後ろを振り返ると、見たいことのない女の人が立っていた。


 自分のせかいにいるようには思えないほどの真っ白なドレスにきれいな緑色の長い髪の人だ。



「えっえっ」

「おどろかしてしまってごめんなさい。あなたのような人をみたのは久しぶりで」

「久しぶり?」


 そう言うと、彼女はなつかしむように、うなずいた。


「えぇ。昔はたくさんあなたみたいな人がいてね。楽しい声がたくさんひびいていたの。」

 わたしは、たまらずにたずねた。


「ね、なにがあったの?それにここはどこ?」

 そう言うと、女の人はボロボロの台の上に座った。


「夢をあたえ、きぼうを与える存在。そんな子達が昔いてね。アイドルみたいな感じかな」

「アイドル……それはしってる。歌っておどる人よね」


「えぇ。そしてここは、子ども達のかがやきが詰まった場所。みんながかがやきを求めてくる場所。でも……」


 女の人の顔色は少し暗くなった。


「みんな、アイドルを目指さなくなった。子ども達はアイドルをみることや他のことが楽しいんだって。」

「それは……さみしいね。」


 たしかに、私もあまりアイドルをめざす人をみたことない。


 だってすごくむずかしそうだもん。

 昔はアイドルをテレビでよくみていたりしていたらしいけど。


 今はアイドルになれるのはすっごくきびしい世界って感じ。


 よくみていたアイドルはきえちゃったし、なんというかなりたいというより空をみるような、あこがれって感じ。


「わたしは、あなたのような人達にもっと歌とダンスにふれてほしい。じぶんを表現してほしいの。じぶんを全てを使って表現してかがやく。それこそエクスメーカー!!」

「え、えくす、めか?」


 きいたことないことばに、わたしは首をかしげた。

「表現し、かがやいて、夢をあたえる。というこの場所で使われる意味よ。ね、あなたやってみない?」


 女の人はわたしをビシッと指さした。

 急になにをいっているのこのひと?


「む、むり!」

「むりじゃないわ。あなたはなにか想いがあるからここにこられたのよ。きっとその想いがかなうきっかけになるわ」

「きっかけ……」


 好きなこと、熱中できる私だけのもの。

 ねがうだけじゃダメなのは分かる。

 やってみたい。


 でも、その一歩がすごく怖い。


「じゃまずは、台にあがってみて。あがるだけでいいの。」


 女の人は台にのぼると、わたしに手をだした。

「うん」


 不安な気持ちのまま、勇気をだして手をつかんでのぼる。


「あなたにとってこれが大きな一歩よ」

「え、のぼっただけだよ?」

「それでもあなたの意志でここにのぼったんだから大きな一歩よ。」


 そうなのかな。でも、なんかうれしいかも。

 わたしは台の上でまわりをみた。

 昔はここで歌ったり、おどったりしていたなんて。


「なんか元気がでてくる」

 だれもいないのに。なにか力がみなぎってくるような。


「そうね。ここにはたくさんのかがやきがあったから、そのかがやきがあなたの背中をおしているのかもね」

「そっか」


 この場所、最初はボロボロとしか思わなかったけど、ここから見ていると、すごくいい場所に感じてきた。


「ね、なにかうたってみる?」

 な、なにいっているの!?


「それはやだ。はずかしい。」

「だいじょうぶよ。わたしだけしかいないもの」

 う、歌うってちょっとむずかしい。

 はずかしいし。


「ちょっとだけでいいわ。あなたのこえを聞いてみたいの」

 ちょっとだけっていわれても。


「あなたは、なにかねがったからここにいるはずよ。少しだけでもやってみない?」

 わたしがねがったこと。

 かがやきたい。


 じぶんの大切なことをみつけたい。


「ハミングでいいわ。こうやってね。るーーって口を閉じて音を出してみるの」

「……」

 なにもしない。できないわたしのままじゃだめ。


 一歩ふみださなきゃ。


「わかった。……っ、――… ――!」

 なにごともやって。みなきゃ。

 うまく歌えない


 でも、今、わたしはちょうせんをしているんだ。

 すごく良い気分。

「――…」


 パチパチパチ


「すごいわ。うまくいったわね」

「で、でも……下手くそだったよ」

「そんなことないわ。しっかりと頑張って声をだした。下手とか上手いとか関係ない。挑戦したことが大事なの」


 そういうと、彼女はグッジョブというジェスチャーをした。

「ナイストライ!」

「――!」


 なにいわれるかと思っていたけど。

 こうやってほめてくれるなんて。


 なんだろう、この安心する感じ。


「ありがとう」

「ふふっ、どういたしまして。どう、これで一歩すすめる感じは分かったかしら?」


「えっ」

 そういうと、彼女はほほえんだ。


「わたしの役目はアイドルにさせるだけじゃない。こうやって挑戦したい子のせなかを押すのもわたしの役目なの」


「うん、なんか、がんばろうって思えた。」

「それはよかったわ。ね、もしよかったらアイドル。いいえ、エクスメーカーになってみない。」


 え、わたしがエクスメーカーに!?

「あなたのそのゆうきをみんなにみせてあげるの」


「そ、それは」

 歌って、おどるんだよね。


 みんなの前でなんてはずかしい。

 でも……この人と一緒にもっと色んなことにやってみたい。


「……やってみようかな」

「ほんと!」


 女の人は嬉しそうにわたしの手を握った。

「あっ、わたしの名前はツイ!」

「わたしはハイドレンジア。レシアでいいわ。よろしくね、ツイ」

「うん!!」


「あなたならできるわ。あっ、もうこんな時間……そろそろツイは帰らないとね」

 こうして、わたしはおおきな約束をして帰り方を教えてもらった。


 花の道を歩いていくと、光りにつつまれて。

 あれ。


 気づくと、いつもの帰り道だった。

 もう少しで日が暗くなりそう。


 カーカー


 カラスも鳴いているし、もう帰らないと。

 疲れたけど、わたしだけのすごいものに出会えたのがうれしかった。

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