第1話 何もない私
ねぇ、みんなは好きな事とか、熱中していることってある?
スポーツとか読書みたいな趣味とか自分が持っているこれって言えるもの。
私には、それがない。それが今ある私の悩みなんだ。
キーンコーンカーンコ―ン
「ツイちゃんまたね!」
「うん、サッカー頑張ってね」
「ありがとう!!」
私の名前は芽吹ツイ。小学五年生!
今年から新しい学校に来て、友達もできて楽しんでいたんだ。
でも、友達にはみんな特技や好きなものがある。
本当のことを言うと、この学校へ来る前は、こっそり生きてきた。
前に出た時に、皆に笑われたことがあってそれが怖かった。
皆周りを見て、目立つ人がいたら笑ったり間違っている部分を見つけてバカにしたり。だから前に出るのが怖かったの。
そんな学校生活だったけど、この学校にはそれがなくてキラキラしてる。
みんな前に出て、好きなものを思いっきり楽しんでいる。
いいなぁ。私もそんなものみつけてみたい。なんにもわたしはもっていない。
「はぁ……わたしってだめだめだな」
そんなことを考えながら、私は帰り道を歩いていく。
なにか私だけの特別なものってないかな。
今日の夕焼けはいつもより輝いているようにみえた。まるでクラスの子達の楽しそうな笑顔のよう。
何かに打ち込む人は輝いて見える。
私にもなにかないかな。
「もっと輝きたい。自分だけのものを見つけたい」
そう夕焼けに呟いた。でも、叶えてくれるわけがない。
願ってばかりじゃだめだよね。
そんなことを考えていると、
「――いたっ! なに!?」
なにかかたいものが頭にぶつかった気がした。
頭をおさえながら周りを見ると、分厚い本みたいなのが落ちている。
「?」
私は周りをみて、だれもいないのを確認した。だれかが投げたものでもないし、空から振ってきた……とか?
私はおそるおそる本を開いてみることにした。
少し怖いけど、すごく中身が気になった。
本を開いたとたん、本が勝手にとびあがり光りをはなつ。
「えっーーー!!!」