彼女にかけた催眠術をどうにしかして解かないと!
俺の名前は佐藤こうせい、私立高校に通う2年生だ。
2月の文化祭の出し物が『おもしろいもの』と決定した為、俺は催眠術をやることにした。
まぁ一人じゃできないので、誘わないといけない。
女子に話しかけるにはうーん無理だな!
「トントン」なんだ?
「どうした?」
「こうせい君、テーマ決めた?」
彼女の名前は秋空かなで。
俺と同じくぼっちなんだが、決定的な違いがある。
彼女はそう周りから美少女と呼ばれている。
そして俺は周りから最悪な名前で呼ばれている。
全教科テストで絶対に赤点をとる為、
『赤点王』と。
まぁこれは自業自得だが。
このせいで女子からは話しかけられないんだが、
彼女だけは話しかけてくる。
彼女も男子には話しかけないが、俺にだけは話してくる。
「あー、決めたよ」
「一緒にやらない?」
え、大丈夫?催眠術だぜ?
「少し危険だけど大丈夫?」
「危険って?」
「長く寝てしまうとかかな」
催眠術ってたしか効果はこういう系だろ?
「なら大丈夫!」
あ、そうですか。
「じゃあ、やりますか、放課後図書室でやりましょうか」
「そ、そうね」
催眠術ほんとにやっていいのか?まあ学校の図書館にあるわけないから、通販で探さんとな。
放課後、一応図書室で本を探した。
ってあんのかよ!誰だよ、入荷した奴。まぁこれ借りるか。
「すいませーん、これ借ります」
よし借りた。お、来たな。
ええと、5円玉を紐につけて、揺らして、『眠くなーる』というのか。
「あなたはだんだん眠くなーる」
なぁ、これ単純すぎないか?
あ、寝た。催眠やったの数秒前だぞ?
これはまさか、
「起きろ、わざとか」
「わ、わざとです」
やっぱりな。
「明日休日だし、県立図書館に行こうぜ?」
「わ、分かったわ」
〜県立図書館〜
まあ、さすがにないよな?俺は催眠術の本を探した。
あ、あったわ。
あったけど……なんで異世界系の所においてんの?
まあ、学校の図書館じゃ効かなかったし、試す価値はあるか。まぁ失敗したら別のテーマにするか。
「こうせい君、き、きたよ」
「あ、ありがとうございます」
さて、試すか。ええと、
「俺の指をよく見てください」
で、残像できるぐらいに指を振る。
は?嘘っぱちだろ、これ、終わった。別のテーマになってしまうやんけ。
最後までは一応やるけどさ。
「これで、貴方は私の催眠にかかります」
ん?秋空さん寝たのか?どうしようか?
まぁ起きるまで待つか。
「………………」
って!いつまで寝てんだよ!もう2時間経ってますけど!?
「秋空さん、起きてください!」
「ん、んぅ」
「あ、起きました、帰りますよ」
「帰ろっか」
あれ〜なんで手繋いんでいるんですか?
「あの〜どこに帰る気ですか?」
「え?あなたの家よ」
「ちょっと何言ってるか分からない」
「こっちのセリフよ」
催眠術かかってんのか?またわざとだろうけど。
聞いてみるか
「あの、催眠術わざとかかってます?」
「なんのこと?」
え?とぼけている?
「だーから!催眠術わざとかかってますよね?」
「サッパリ分からない」
嫌がる命令をすれば、解除できるよな。
「チークキスしてみろ」
しくじった。キスにすりゃよかった。これだから女子の経験がない俺は。
あ、え、マジでしそうなんだけども。
「や、やっぱストップ!」
ほんとにかかってるのか。じゃあ解除するか。
ええと、解除方法はどこにあるんだ。
「あった!ええと、解除は頑張ってください?」
え、ないの?まずい!!!!
そうだ!学校の図書館の催眠解除方法でやってみよう。ええとこれか!
「あなたは私にキスをすると、催眠が解除されます」
は?ばかやろう。できるわけねぇだろが。
あ、まずい、口に出しちゃったから、秋空さんがやべぇ。
「ストーーップ」
ほぉ、やめた、よかったわ。
「秋空さん、かなでという名前で呼んでいいですか?」
「はい」
まぁこれぐらいならいいか。
さて、これからどうするべきか。
学校には来ているので、日常生活には支障はないんだろう。
とりあえず授業受けるか。
あれ、今日テストだったんか?まずくねぇか?
かなでに俺テストをやれという催眠をしていない。
「かなで、テストは前みたいにちゃんと受けろ、いいな?」
「はい、分かりました」
これで一応いつも通り。
やっべぇ、分からん。だから赤点なんだよな。
テスト難しいんだよ。まじサラサラ解いてるやつ何なんだよ。
「はい、テスト全部終了だ」
やっと終わったか。
さて、どうするべきか。授業は今日ないが、こいつをどうやって帰らすべきか。
その前に催眠解けるか試すか。
「私はあなたに拍手を送ります、その音が聞こえたらあなたは催眠が解除されます」
「パチパチパチパチパチパチパチ」
「?」
うん、ダメだ、解除されねぇ。
「バタン」
「ど、どうした?」
「少し頭がクラクラしてるだけです」
え?県図書の本を見るか。
「注意!長い間の催眠は身体に影響を少し及ばせます」
え、解除方法ないくせに、こんなデメリットあんの?
「かなで、お前自分の家分かる?」
「分からない」
昨日教えたんだがな。一日しか記憶持たないのか?
じゃあ、俺の名前分かるはずないし、試してみるか。
「かなで、俺の名前は?」
「あなたの名前は佐藤こうせい」
あ、覚えてるんだ。けど、休ませな、あかんかよな。
「休むの俺の家でいいか?」
「いいよ」
「歩ける?」
「…………」
催眠術かかってるのに無言!?
けど泣いてるな、歩けないのか。
俺にも責任があるし、連れていくか。
「運んでやるよ、おんぶでいいか?」
「うん」
「よいしょっと」
「………………」
催眠かかってるのにボソボソとなんか言っていたような。
「あ!お前何してんだ!」
やべ、バレた!(当たり前)
こいつにもあの催眠をやるか。
「あなたは私の指をよく見てください、
そうすると催眠にかかります」
「なにやってんだ?お前」
かからんのかよ!なんでかなでは効いたんだよ。
「俺にもおんぶさせろ」
目的はまあ分かってた。
「やめろ、かなで、体調悪いんだよ」
「じゃあ、俺の家病院だし来るか?無料で診察してやるよ」
「まじか!ありがとうな」
てか病院最初から連れていけば良かったやん。
何してんだよ、俺。
「秋空さーん」
「ほら、いくぞ」
「ふうーむ、なるほど」
「お連れ様〜」
俺に何の用が?
「どうかしましたか?」
「あれ?さっきまで心拍数が急低下していたのに上がってる?」
「だから何の用ですか?」
「いやねー、あなたがいないとこの子の心拍数が通常に戻らないんですよ」
「ハァ」
「なので、常に居てくれますかね?」
え?
「あ、わかりました」
やべ、断れない癖が。
「熱は少しあるみたいので、薬出しておきますね」
「分かりました」
「秋空さーん」
お、きたか。
「ええと、お薬が2点、こちら2つとも昼と夜にお願いします、お会計4080円です」
あ、金そんなにあったかな?
財布をみてると14085円あった。
「あ、はいどうぞ」
「ありがとうございます、ではお元気で」
心拍数、俺がいないと通常に戻らないということは看病するしかないか。
薬代のせいで推し活は出来なくなったけど。
「頼む、元気になってくれ」
「うん」
俺の家にするか。
「かなで、制服どうする?」
「あ、あ」
喋れないのか。催眠術でも少し曖昧なのか?
「制服予備とかあるの?」
「な、ない」
まぁ、家のことを覚えてないから家にあると思うけど。
パジャマ買ってきてやるか。
「かなで、パジャマいる?」
「うん」
俺はダッシュで服屋へ行った。
「はい、買ってきたよ」
「ありがとう」
「じゃあ、着替えたらこの籠にいれてね、絶対制服を上にしろよ?一旦廊下でるから終わったら呼べよ?」
「分かりました」
「入っていいですよ」
「かなで、籠もってくぞ」
「はい」
俺は籠をできるだけ見ずに洗濯機へ行き、
洗濯機へ入れる時は目を瞑り、服を入れた。
「よーし、洗濯機へ入れてきたぞ〜」
「ありがとう」
なんというか、可愛いのは分かっていたけど、パジャマ姿見ると、さらに可愛いな。
まぁ催眠状態だから『付き合え』と言ったら
付き合うことはできるけど、なんか強制させたみたいで嫌だからしないけど。
「大丈夫か?」
「はい」
赤くなってるし、熱あんじゃねぇのか?
「ほら、体温計新品だから気にするな」
「うん」
「ピピ」
なんか体温計口に入れてるのいいな。
36.8℃か、平熱で良かったわ。
「体調回復するまで、支えるからな」
「ありがとう」
催眠状態だから本心なのかは分からんけど、お礼はやっぱ嬉しいな!
体調も回復して、無事学校に復帰出来たかなでだが
その間俺も欠席していた為、どうするべきか。
葬式1週間は無理があるな。
まぁ仕方ない、全部欠席扱いとするか。
かなでは出席停止扱いにできたし、良かったわ。
「よし、かなで、授業受けようぜ」
「はい」
まだ催眠かかったまんまか、試しに解除試みるか。
「私と手を握ればあなたの催眠術が解けます」
手を握ったがやはり解けない。
先生来たか。
「xに2を当てはめるとこの問題は求められるわけだ」
あ〜かなでの催眠術解けてくんねぇかな。
「あ、おい、こら佐藤お前話し聞いていたか?」
「え?」
「え?じゃないぞ、隣を見すぎだ、可愛すぎたのか?」
「ん、んぅ、んぅ、そうです!」
「見すぎるのも程々にな」
「は、はい、すいません」
クラスメイトは大笑い、まじこういうのやめて欲しい、赤点王という名前もつけれられてんだから。
「キンコーンカンコーン」
やっ終わったか。
「よぉ、佐藤やっぱ隣に惚れたのか?」
はぁ、やっぱこうなるよな。
「まぁ」
催眠かかってるし、このことすぐ忘れるしいっか。
「俺告白したんだけど、ふられてよ、辛いんだぜ案外」
辛いなら自分から話すなよ。
まぁ告白を断るようにしてるのは俺だけども。
催眠術状態にかかっているので、かなでは本命でなくても受け入れてしまう。
なので俺はこう言った。
「いいか?好きな人以外断れよ」
「はい、分かりました」
好きな人なら止めるつもりはないが、催眠は解除したい。
そして俺は様々な催眠解除を試した。
パンを食べたら解除やテレビを見たら解除等をやったが、未だに解けない。
おい、あと少しで高3になっちゃうぞ?まだ解けないのか。
「バタン!」
え、かなでが前以上に大きく倒れた。
「かなで、大丈夫か?」
「……」
口が少ししか動いていない。
「先生!かなでを保健室に連れて行っていいですか?」
「その倒れ方は尋常じゃない、救急車を呼ぼう、心肺蘇生してくれるやついるか?」
皆は挙げない。
なぜだ?お前ら人が倒れているんだぞ、見捨てるのか?
「俺がやります、みんなは早くAEDを持ってこい」
皆は俺の顔に震えた為、走っていったやつがもってきてくれた。
「ありがとな」
心肺蘇生をしていたが、ちゃんと皆途中から俺の懸命な姿に心を打たれたのか、交代してやってくれた。
救急車が来た。
くそ、心配だ。
「あ、こら佐藤どこへ行く?」
「補習や成績1にしてもいいですから行かせて下さい」
「そうか、わかった、行ってこい!」
「心拍数が徐々に増加しているだと!?まずい!」
「かなでーー、起きろー!」
「君は誰だね?」
「…………」
俺は彼氏でもないので何も言えなかった。
「助けるために来ました」
これ以上は言えない。
「なに?心拍数が下がってる!?」
「良かった」
「かなで、お願いだ、必ず生きてくれ」
「……」
無言か。
病院に着いた。
「君はここで待っててね」
「あ、はい」
「………………」
「そんなに気になるかね?」
「はい」
「お、来たみたいだぞ」
「また、心拍数が増加したみたいだ」
かなで、待ってろ!
「あ、おいこら君どこへ行く?」
「言ったでしょ?『好きな人を助けるために来たと』」
救急隊員は無言だったが、行かせてくれた。
「かなで、秋空かなではどこの室ですか?」
「それなら404号室です」
「よしそこか!」
エレベーターなんて使わない、階段で行く。
「かなでー!!」
「な、なんだね!?君は勝手なことはやめてくれたまえ」
「医者!かなではどうだ!?」
「今は心拍数が徐々に下がっているが、
彼女は残念ながら余命は多く残っていません」
「かなで、死ぬな、俺よりも生きろ」
「わかった、生きる」
「もし完全な健康状態になれば、ボール置き場の所へ来てくれ」
「うん」
俺は寝ずにかなでを見守った。
2ヶ月ほどたち、完全に回復した為、かなでは退院なった。学校もあったんだが、俺は休んだ。
「かなで、歩けるか?」
「うん」
「今日授業終わったらボール置き場へ来てくれ」
「わかった」
「あ、先生欠席俺何日ですか?」
「なーに言ってんだ、お前は出席停止扱いだよ」
え、なんで?
「なんでですか?」
「お前は誰よりも先に動いた、そして命を助けた、先生達が欠席扱いする理由なんてどこにもない、1人の命を救ってくれてありがとう」
「ありがとうございます!」
授業は受けたが、やはりなんか久しぶり感はあるんだけどもやっぱかなでを見ることは変わらない。
授業が全部終わった。
では約束の場所へ行くか。
「ごめんね、呼び出して」
「いいよ」
「催眠かかってる状態で悪いんだけど」
「はい、なんでしょうか?」
「俺はあなたに告白します、告白されたら催眠は解除されます」
残りの催眠解除方法はこれしかない。
「あなたのことが好きでした」
「………」
ん?催眠だから付き合うと思ったんだが、
まさの無言!?
「ん、んぅ?あれ何でこうせい君がいるの?」
あ、催眠解けたのか。
「良かった」
「なにが?」
「実は………………」
俺は全て(告白以外)を説明した。
「フフ、分かっていたわよ」
「え!?分かっていたんですか?」
「まあ、記憶1部は曖昧だけどね」
「あ、あの〜病院の事覚えてます?」
「わからない」
良かった〜、あれ覚えられてると少しだけ恥ずかしいし。
「あの、あともう1ついいですか?」
「いいわよ」
「あなたのことが好きでした」
「返事は後で送るね」
あ、後なんだ、まぁいいけど。
「あ、あと1つと言いながらあと1つありまして」
「なに?」
「県図書から借りた催眠術本知りません?返さなければいけないんですが」
「知らないわよ、じゃあまたね」
「は、はい」
ん?人差し指でのバイバイ?おかしいような……。
「あなたは催眠にかかりました、これから返事を言いますね、伝えた後催眠が解けます」
少しだけ意識あるのなんでだ?
「好き」
は、え!?催眠を利用して伝えやがった。
「は!俺は一体なにを!?」
「ちょっとだけ眠ったのよ」
「あの〜返事は?」
「伝えたよ?ちゃーんと」
「えぇ」
催眠状態でも意識少しあったのは黙っておくか。