これは忘れられた記憶の一部
師弟関係 星と少女と師匠
この星では、『師弟関係を結ぶ』ことは何よりも重要な選択となる。
師は弟子が成人してもその者の責任を持ち、家族と同等に育てる義務が発生する。(無論、個人差と限度もあるが。)
弟子は師から教えを受け、ともに過ごすことになる。
そして師を支える業務の義務(例えば実験の材料収集、研究発表の準備など)が発生する。
そして、お互いの了解の元師弟関係を解消するか、弟子分から一方的に打ち切る法と、どちらかが死ぬまでは、関係は切っては切れないものとなる。
師匠にとっては、後進を育てる、技術を継がせる、共に研究する仲間として、
弟子は他者より秀でる部分を増やす(師となる者はなんらかの分野に突出している者が多いため) 技術を学べる、助けを得られる、人脈を広げる等…お互いにメリットがある。
…ただし、お互いの評判は共鳴し、自身の望んでいない結果に終わることも少なくない様子。
そのため、基本的には弟子を取らないものも多い。
魔法使いには自己中心で世界を回るものは必然的に多い。
『師弟関係について回る甘い話ほど、信頼できるものはないー』 とある魔法師の発言
そんな星の、都市の郊外。この辺りには標高がもっとも高いエリアが存在する。
『宙にもっとも近い塔』
精霊が上に行く程増える都合上、魔法使い…研究者たちがこぞって求める1つの理想郷の形。
そんな地域をただ1人の魔法使いが占領している。
この星の大魔法師の1人。
都市に出入りすることなく、1人で研究を行い続けている。 …という噂だ。(最も、見た者は多くは居ないのだとか。)
その場所にそびえ立つ展望台のような塔が1つ。
頂点には…なんらかの実験器具がある。
そんな所に、ある小さな背中が、足を踏み入れようとしていた。
ここは研究室。塔の最下。 その広い空間には、所狭しと物が散らかされ、世界を俯瞰して見る地図や、星の並びと精霊に関する記述がある。
『…これも駄目か。』
その中央に私は立っている。
『この星とも関係がない…となると。…どうしてもここに行き着くのか。』
指示棒代わりに指した杖の先には、『次元星』の記述がある。
『…そうなると、最大の問題点は…届かないことだ。』
なんども考えていた案を振り返る。
『…あと、何年あれば追いつくのだろうか。また近づ
く時に測ることにしよう。』
近くの紙袋を手に取る。破いて中を見る。
『…まぁ、こうなるのは予想していたよ。』
精霊に感情が存在する論文を私は学会に出した。
古典的で、保守的な連中に今、文で嘲笑されたが。
私は精霊とただしく交流できれば間違いなく会話できると考えている。 実際、私は何度か成し遂げた。
…そのことを証明できていたら、どれだけ楽だろう。
この研究に大事な鍵にもなるというのに。
杖を一突き。周りに散らかされた物が静かに片付く。
『…結局、私の代だけでこれは終わりなのだから、そう気にする必要はないが。』
息を吐く。 稀代の魔術師とどれだけ世間から言われようとも、到達出来ていない場所が多く在る。これもその1つ。
『…だれかが来たようだな。』
杖を突いて、外の景色を浮かべる。
『…映らない。 透過魔法でも使ったか? はぁ…面倒なことだ。』
それでも、来訪者には変わりない。…また、都市の秘密とやらを教えろ、やれお前だけが保有している魔法を話せ、など言ってくるのだろう。返り討ちにしてやろう。
扉から、誰かがノックをする音が聞こえる。
『…』
侵入者なら、こんな真正面から来ない。
となると、どこかの教授か。それとも、度胸試しに、肝試し感覚で来た若い者か。
『…まさかな』
もうそろそろ学院の進級のタイミングだ。まだ売れ残っている憐れな者が、一縷の望みをかけて来る…可能性は0ではない。
『…誰でも良いか。』
研究の邪魔になるような学生なら払い、教授なら無理難題を押し付ける。
それで大抵は解決できるのだから。
今だに叩く音の止まない扉を開け放つ。
さて、透過魔法の使い手はどのようなものか…
『…きゃっ』
扉に体重を掛けていたのか、ドサッと倒れる音がした。
『…』そこには。
扉にいたのは、私より遥かに小さい…少女だった。
ブロンドの髪に、濃い青色のリボンのような装飾物を頭につけている。
どこかの制服だろうか。 上半身は白色で統一された衣装。胸元にも革色のリボンがある。下は青に黄色の刺繍が施されているロングスカート。
茶色のブーツを履いている。
…まだ10歳にもならないだろう。
この小ささなら、高めに設定してある魔法範囲に入らない。透過魔法は使ってすらいないだろう。
『あ…あの、貴方が塔の魔法使いさんなの?』
尻もちをした少女は、私を真っ直ぐ見つめてくる。
『君は…なんというのかな。』
思わず聞いてしまう。迷い子か?しかし…
少女は何か勘違いをしたのか、目を輝かせながら答える。
『私は…めいどろっていうの! よろしくお願いしますなの! 弟子として!』
『…ぬ?』
…さて、どうしようか。
塔の中に入った少女が、目を輝かせながら周りを見て歩いている。
よほど気にいっているのか、星の模型を手にとってキラキラした目線を向けている。
…研究塔に単身で乗り込んできた少女に頭を悩ませる。
聞くと、一人で『都市』に来たらしい。
頭のおかしい話だが、こんなに小さい子が1人で来る理由は…都市の学院しかないだろう。実力が達せられれば節操なく、年齢問わず招待状を送るだろうから。
…そして、目の前のことで手一杯な3年生ではなく、入ったばかり。1年生。まだ数日しか通っていない。
『どうしてここを訪ねてきたんだ…?ここは私以外誰もいないエリアだ』
少女が笑顔で答える。
『貴方が星の研究をしてるって講義で聞いて、居ても立ってもいられなかったの!』
本と鞄を大切そうにもつ少女はそう答えた。
改めて少女をじっくりみる。
何も特筆すべき点はないように思えるが…
『…星が好きなのかな』
少女はぶんぶんと首を縦に振る。
『私、星が大好きなの!たくさん調べたの!』
1つのノートを見せてくる。かなり使われており、星のマークが付けられている。
『魔法として貴方は扱っているんでしょう? 私も学びたいの!』
パラパラとめくって見る。
…確かに、星に関しての知識が纒められている。専門の者でないのなら、優秀なまとめ方だ。
…だが。それだけか。一息ついてから話す。
断りの言葉は言い慣れてきた。
『なら3年生になってから来るといい。そのあたりから皆師弟関係について考えるだろう。
その際、いろんな人を考慮しながらまた考えてみよう。また…』
『どうして? 私は今からでも貴方の研究を見たいの! …それに、星に関して研究して教科書に載るぐらい有名なのは貴方ぐらいでしょう?』
『…ほう。』
…熱心なことだ。
少しだけ印象が変わる。魔法に狂ったように研究意識を向ける者もいるが、この年齢でここまで意欲があるとは。 少し侮っていた。
『だが、星に関する者は他にもいるだろう。例えば天文研究をする高名な学者が学院にいるだろう?その者を』
『そんな人知らないの。あとその分野は私の学びたい事じゃないの。 星に関して知りたいの!』
…幼いだけかもしれない。思考がまっすぐだ。
この子は都市にあてられず、純真な願いだけでここに来ている…
この策謀巡る世界では、似つかわしくない珍しい者だ。
…少し聞いてみよう。
『…君は師弟関係をむすびたいのかね。』
『その方法で学べるなら!』
即答。…こうなったらいつもどおり返してあげよう。
『そうか…。なら試験をしよう。 これに合格したら、この私が君を弟子にしよう。』
『! わかりました!なの』
…これから無理難題を課すつもりなのを知らないのだろう。
チャンスを得られた事でぱあっと笑顔が広がる。
周囲にその雰囲気が舞って…光?
『ジリリリリリリ!!!』
『…この反応は!?』
『!?…うるさいの…!』(少女が耳をふさぐ)
私の研究道具…星の精霊を観測できる成果物が…反応した。
こんな機会は○年に一度、いや〇〇年に一度だ。
目の前の子はいつかいなくなる。この瞬間1秒の変化を見逃さないように………!
身構え、装置に向かって突進する前に、
思考が纏まり、身体が止まる。
…待て。 この反応の仕方。
この場所の変化は一切ないことがわかる。証明などしなくても、大魔法師の名にかけて断言しよう。
目の前の耳をふさいでいる少女を見る。
…周囲に微弱な『何か』が舞っている。
装置がなり止む。 …もしかして…いや。
もう一度少女を、まじまじと見つめる。
…星、か。
『…君、試験はこれだ。 この杖を持ち給え。』
『えっと…それでいいの?』
『ただ、その杖が光ったら、の話だ。』
『それだけなの…? わかったの! …せーのっ えぃっ!』
その杖を握る。
『星の精霊に関する適正を見る装置だ。』
光るなら、必ず助手として迎え入れよう。
…その様な者は私以外いなかったが。
『………えいっ、ふんっ、うーん…』少女は力を込めたり、振り回しているが、何の反応もしない。
私の期待は外れたのか?
あの反応…気の所為ではないはずだが。
思わず私が焦ってしまう。
少女は光ることがないことに対する焦りからか、
ひっくひっくと子供特有の嗚咽が混じり始めた。
感情の揺れが大きいか。…いや、年齢特有の揺れだ。
『どうしてだ…? 先程の反応は君から…』
杖が光らないのなら、合格することはできない。
今更変更はできない。 …だが…確かに…
『残念だがー』
その時。 少女が目から涙を流し始めた。小さい子供特有のひくっという嗚咽が本格的に始まる。
杖がぼうっと光り始めた。
同時に先程と同じような…微弱な精霊の反応。
装置がまたジリリと鳴る。
明らかに違う反応。
…少女の感情の高まりを知っているように…まるで
精霊が慰めている…?
『…そうか』
精霊に感情が存在する論文を提唱したのは私だ。
信じない道理はない。
目の前の少女が…私の予想が正しければ。
ただの星好きの女の子ではない。
この子は…磨けば文字通り『星魔法を自由に操る魔法使い』になる。
棒が光っていることに少女が気づく。
『ひっ…ひっ… あ…。光ってる、光っているの!』
驚きは涙を飛ばし、瞬く間に笑顔になる。それと同時にまた光が強くなる。
『…合格だ。』
『本当に…? えっと、その、弟子にしてくれるの…?』
透きとおった目。純真な子供の目だ。
きっと、都市の学院に行き、3年もすると、その目は腐ってしまうかもしれない。
その前に、今このタイミングなら。
弟子を取る気はいままでなかった。
取る理由がなかったのだ。
…だが、この機会を…星の精霊が存在するならば。
目の前に星の精霊と共に過ごしているような少女だと仮定するなら。
色眼鏡を持たず、星の研究をしたいと単身でここに突っ込んでくるこの子は、研究だけの関係ではない、真っ当な師弟関係も築けるだろう。
『あぁ。今すぐ正式にしたい程だ。 …だがするには準備が必要なんだ。 少しの間、この場所に留まるといい。』
『…! ありがとうございます!!!』
少女はやったぁ!と飛び跳ねて喜んでいる。本を大事そうに持ちながら。
チラッと確認する。『星と歩みし魔法使い』本の名前は有名なものだ。
…私も、この本を小さい時に読んだ記憶がある。それがこの研究を続けている動力の1つ。
『ああ…。』
少し懐かしくなった。あの時の、がむしゃらに走り続けた日を。 小さな頃に見た、あの、青緑色の精霊…星を纏ったあの『星の精霊』に会うことを夢見て。
『研究を続けて。 私と会えるまで。』
そう残し、どこかに行ってしまった精霊は、
私の研究意欲を永遠に刺激し続ける。
研究会の深い所に触れ、この星の魔法の深淵の破片を見つけることは数度あった。だが見つかることはなく。
そう語った精霊は…今だ会えていない。
その影が、少しだけ掴めたような気がして。
『そうだな…今から14日後、『次元の星』が1年に一度輝く時が来る。その時に結ぶとしよう。』
小さな少女に語りかける。
『いいわ!その時に結んでくれるのね!』
はにかんでいる少女が、幼かった自分と、少しだけ重なった。
『そろそろ後継者が欲しいと思っていたところだ。』
少女は、都市の学院に招待状で呼ばれ、最初の講義で『師弟関係』『この世界の有名な魔法、魔法使い』等を初めて知ったらしい。 …そして星の研究をしている私に躊躇なく弟子入りしにきたと。
何度でも言おう。なんと単純な思考で、かけがえのないな考えだろう。
都市で…いつか私のように闇を見て、この純真を終わらせてしまいたくない。
この子は…きっとあの精霊さえも引き寄せる。
そこから14日間、ここに通ってくる少女にこの塔を紹介しながら、準備をすすめる。
(視点変更)
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そして、当日。次元の星が最も近づくと言っていた深夜。 私は、この研究塔の一番上の研究場にいるの。
中は大事そうな研究器具がいっぱいで、私にはさわれないものもたくさんあるの。
いつか、さわれるときが来るのかなぁ…なんて。
『さあ、ついてきたまえ。』
あの人の後ろ姿を追って、奥の扉を抜け、古びた階段をのぼって、その先に。
『わぁ…すごいの!』
そこに広がる光景は、私がこの世界で初めて見た『圧倒的な景色』なの。
塔のもっとも高いところ。吹き抜けの空間。
下には、私が越して来た『都市』が一望できるようになっていたの。
この時間でも光っている部分が垣間見えたの。 あそこは…きっと今行っている学院なの!
真下は…なぜだか光っているの。精霊がたくさんいるってあの人は言っていたの。
その集合した光が、私にも見えるように動いているの。 繊細で…一つ一つが意思を持っていることを感じるの。
『ねぇ!下を見て!あそこにいる精霊達、私には、何かを喜んでいるように見えるの!』
そんなことを言うと、あの人はハハッと大きく笑った後、
『君には、精霊の感情が見えるのかね? 真に痛快なことだ! …私が必死に探しているものを、君は『感じる』ことが出来るのかね! 実に面白いことだ!』
そんな事を言ったの。 …後半は聞き取れなかったけど…喜んでいたのは確かなの。
宙に広がる空間は、どこまでも続く夜空と、たくさんの星。 故郷では見えたけどずっと遠くて、都市では見えなくて。
ここが『一番近い場所』と言っていた理由が、なんとなくわかったの。
そして、この小さな空間には、とっても立派で綺麗な『杖』と、あの人が着るであろう、『装具』
そして…小さな祭壇。
『…さて。ここで執り行なうとしよう。…少し待っていてくれ。』
その場所にあった装具を着ようとしていて…
『!?』
私は慌てて目を逸らそうとして手で顔を覆ったけど、
『変換。 …どうして目を閉じている?』
その言葉だけで一瞬で装具に姿が変わっていたの。
…すごいの。 便利なの。
小さな祭壇に向かい合うようにして、私と魔術師は向き合ったの。
『それでは、師弟関係を結ぶ…『儀』を始めよう。名前は…そうだな。『星承の儀』としよう。星にもっとも近い場所で執り行なうのだから。』
『星承の儀…』
1つ、咳払いをしてから、彼は続ける。
『今、星を研究し、この星で生を受けしこの私と、星に憧れと、想いを持つ君で、同じ一門に下る。 例え世界が裂かれようとも、ここに裂かれない関係を。今ここに結ぼう。 …さあ、私の手を取り給え。』
『はい…ここに。』
差し出された手を、私は取る。
『さて…本来なら、ここで両者の杖を交わすのだが…どうやら君はまだ本格的に使おうとしている杖がないようだ。 その時に再び行うとして…今はこれを使ってくれ。』
前に試験の時に触った杖を、私に手渡してきたの。
『これは私の物だが、儀式の代わりぐらいは受け持ってくれるだろう。』
杖を、手を繋いでいないでない方で持つの。
…そして、杖はまた光らない。
『…本当に、私は合格したの? 怖くなってきたの。』
『大丈夫だ。 いずれ光り続ける時がくる。』
その言葉を聞いて、ちょっと安心する。
前に出された杖に、そっと杖を交わす。
『今ここに、両者の杖を交わし、師弟の儀を交わすことを誓う。我、師としてこの者の義を尊重し、誓い続ける限り支えると誓おう。 …私に続いて言ってみてくれ。』
『えっと… 今、私は弟としてこの師を支え、苦楽を分かち合うことを誓います…。 これでいいの?』
『ああ。それでいい。』
互いの杖が共鳴する。 私の持っている杖は光り輝いて、彼の杖ははめ込まれた綺麗な石が光を放つ。
…やがて光が収まる。杖を交わすのをやめるのに続いて、私も杖を引っ込める。
『次は、師から魔法を1つ教えるというものだ。
…私からは、君に研究している魔法の1つ、星魔法を教えよう』
彼は杖を一回転させた後、詠唱する。
『星魔法 『スターショット』』
杖が一度震えた後、彼の持っている杖から水平に…星のような形のエネルギー弾が発射される。
宙高くまで速い速度で上がりきった後、エネルギーが衝突しあって小さく星を散らす。
『…これが、光魔法じゃなくて…私の探している魔法。星魔法。』
思わず…見とれて、声を失ってしまう。
『これは私が生み出したものだ。もっとも、ここに来るまで長い年月を割いた。 …だが、基礎を構築することができた。 惜しまず君に教えよう。 君なら…きっと発展させることもできるかもしれない。』
『ほんとに…!? ありがとなの!!!』
思わず儀式の途中ということを忘れて、抱きついてしまう。
『おっと… 本当に星が好きなんだな…君は』
そんな私を師になる者は優しく受け止めてくれた。
『さあ、受け取ってくれ。』
彼は杖越しに何かを渡してくれる。
『これに触れれば、この魔法は君も使うことができる。』
迷わず杖で触れる。
身体で、なんとなく研究していたであろう跡と、発動を補助する術式がわかってくる。
『さあ、打ってみてくれたまえ。』
『わかったの! …。星魔法、[スターショット]!』
杖をぎゅっと握る。 一瞬の間をおいて、世界を置き去りにするスピードで星のようなエネルギーが射出される。
さっきより速く飛んでいるような…そのまま爆発を起こさずに消えてしまった。
『最初からその調子なら、習得には長くかからないだろう。 配分が大事なんだ。』
誰かに語ることが嬉しかったのか、嬉しそうに笑ったの。
『最後に…嫌がらずにやってくれるといいんだが…私の趣味じゃないことをわかってくれ。 伝統を守りすぎる文化は良くも悪くも古典的だ。』
1つ息を置く。
『師と抱擁を交わすのだと。
…さっきも似たようなことはしたが、言葉にされると辛いものがあるだろう?っ!』
直後に私は抱きつく。
『私に星に関して教えてくれる師匠になってくれるの。 迷う理由は1つもないの。』
まさかノータイムで来ると思わなかったのか、師の動きがピタリと固まった。
『…ハハ。驚いた。 私も昔は、こんな風に飛びついていたんだろうな…。 純粋だ。それでいい。そんな君の師となれること、嬉しく思う。』
彼からもそっと抱きしめてくれる。 その感覚は…きっと、いつまでも覚えていたかったんだけど。
『…これで儀は終わりなの?』
『ああ。 最後に一言だけ言ってくれれば、それで終わりになる。』
こっそりと耳打ちしてくる。
『………。』
私は頷いて、抱擁を解き、再び向かい合う。
片足をクロスさせるように後ろに回す。杖をもう一度、今度は強く打ち付け合って。
『「ここに、師弟関係を築くことを誓おう(の)。」』
そして、周囲から青色の光が短く上って、消える。
『さて、…改めて、師としてよろしく。 私の名前は…『○○○○』。大魔導師○○○○だ。』
透き通った声に、私も反応する。
『私の名前は…めいどろ。 星が好きな貴方の弟子なの。 …お師匠さま!!これから、どうぞよろしくお願いします!なの!』
そうして、ほほえみあう。
私にとって、ずっと記憶に残り続けたであろうこの日を、私は忘れない。
この時から、誰よりも誇らしい師匠を持って。
夜は明け、星はまた見えなくなるの。
…けど、私が必ず輝かせるから。
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きっと、この子なら、私が届くことのなかった星に、手を届かせることができるだろう。 …あの精霊にも、きっと引き合わせてくれる。
独り立ちする日まで、私は師として。大魔法師として。 支えよう。
この時から、愛おしい弟子を持って。
夜は明け、星はまた見えなくなるが…また昇る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…そして、また1人。違う星で。
『どうか、私を弟子にしてもらえないでしょうか!』
少女の後ろ背中に頭を下げる者。
『…!?』
そして、振り返る『星の魔法少女』が。
2部 星の魔法少女の場合 終




