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海の子供たち   作者: Siberius
サージュの出生編
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眠り

「海の祭り」が行われた。

この祭りは「海との結婚」がテーマで、毎年必ず、その象徴としての指輪を海に落とすのだ。

サージュは海の祭りを陰から、王族の部屋から見ていた。

サージュにとって今回の旅の目的はもう終えたといっていいだろう。

自分のルーツや出自、海の都マリーノの王子という出自もわかった。

サージュは今回の旅をどう終えるかを思案していた。

「ふう……母さんにおみやげでも買ってこようかな」

その日夜に宴が催された。

その時である。

「がはああああ!?」

国王ゼイオスが口から大量の血をはいた。

「国王陛下!」

「誰か! 誰か! 王が血をはかれました!」

王はぐったりして動かなくなった。

「少し、いいですか?」

そこにリエンテが現れた。

リエンテは王に回復魔法をかけた。

王の顔色が良くなっていく。

「どうやら国王陛下は毒を飲んだようです。おそらくワインに毒が入っていたんでしょう」

リエンテは状態異常を回復させる魔法を使った。

「ワインに毒? いったい誰がそんなことを……」

ヘネラ妃が言った。

「ほう、王は死ななかったか……毒で死んでいればすこやかに逝けたものを」

「誰だ!?」

サージュが叫んだ。

その場に一人の男が現れた。

その男は仮面をつけていた。

「フッ、久しぶりだな、サージュ。会いたかったぞ?」

「おまえは……イシャール! おまえのしわざか!」

サージュは剣を抜いた。

「クックック! イーシャにリエンテだったか? おまえたちまでサージュと共にいたのか」

イシャールは仮面を脱ぎ捨てた。

イシャールの邪悪な笑みがあらわになる。

「イシャール! まさか今までの事件もおまえのしわざか!」

「クックック! その通り。海竜王アッティラをそそのかしたのも、巨大スライムにビーチを襲わせたのも、ガイコツ海賊団を動かしたのも、すべて、この私、仮面の魔道士がな」

「仮面の魔道士だと!?」

「フッ、そうだ。全てはこの私の手の平の上で踊っていたのだ」

「イシャール! おまえの目的は何だ!?」

「フッ、それはな。この国の王となることだ」

「王になる、だと!?」

「この私が王となれば、マリーノとポントゥスの怨念も消えるのだ! 闇の支配によってな!」

「そんなことは俺が認めない! 俺がおまえを倒す!」

「フッフッフ、威勢がいいな、サージュ。おまえのそういうところを私は大好きだ。だが私を以前の私と思うな? 私は新しい力を手に入れたのだ!」

イシャールは右手から黒い鎌を出した。

「フッフッフ、これは魔鎌(まれん)ダインベルト(Deimbert)。闇の鎌だ。おまえが聖剣シャイネードを持つように、私も闇の武器を手に入れた」

サージュは口をかみしめた。

サージュはイシャールに斬りかかりたかったが、そんなことをすれば返り討ちにあうことが読めた。

「さてと、おまえたちとの再会を喜び合いたいのだが私にはほかにやるべきことがある。サージュ、おまえはしばし『夢』とまどろむがいい」

桃色の闇がサージュを包み込んだ。

「Buona notte!」

「くっ! 待て、イシャール!」

サージュは強力な眠気を感じた。

サージュは抵抗しようとしたが、その力を破ることはできなかった。

サージュが覚えていたのはイーシャとリエンテの叫び声だった。

「サージュ!」

「サージュさん!」

サージュは眠り――まどろみに落ちていった。


サージュは目を覚ました。

そこは海の近くだった。

「サアジュ? お目覚め?」

「サージュさん、目を覚ましたのですか?」

「イクス、どうかしたの?」

「サージュさん、こんにちは」

四人の女性たちが声をかけてくる。

イーシャ、リエンテ、シルヴィア、エリザベッタの面々であった。

「あれ? 俺は何をしようとしていたんだっけ?」

「サージュはただ、ここにいればいいの。私たちがみんなでサージュの相手をしてあ・げ・る!」

イーシャたちはみんな水着を着ていた。

「サージュさんはずっとここにいればいいんですよ」

「すべては私たちがお世話をしますから」

「うふふふふ……」

サージュは違和感を感じたがすぐにかぶりを振った。

「俺は何かやらなくちゃいけないことがあったはずなんだけど?」

「ああ、もう、サージュ! サージュはただ愛されていればいいの! みんながサージュを愛してあげる。みんなサージュの味方よ。で、どうするの?」

「は?」

「は、じゃなくて、誰からにする?」

「へ?」

「もう、サージュったら、わかっているくせに。それともみんなといっしょにしちゃう?」

「はあ?」

「私、サージュになら何でもあげられるわよ。私をプレゼントしたいの……」

「はい?」

サージュは混乱した。

女性たちがサージュの周りに集まってくる。

「ちょっと、ちょっと待てー!」

サージュは服を脱がされそうになった。

立ち上がって抵抗する。

「お、おまえたち、正気か!?」

サージュはぶんぶんと頭を振った。

「何かおかしいぞ。こんなことはあり得ない! あってほしくない!」

「あってほしくない? サージュったら変なことを言うのね。クスクスクス……誰かい一人を選ぶ必要もないし、女の子、、みんながサージュのものになるんだよ?」

「いや、そうじゃなくて! 何か違うだろ! なんでこんなハーレムになってるんだよ!」

しかし、女性陣はくすくすと笑うだけだった。

サージュの訴えをまじめに取り扱ってくれない。

「だって、サージュは王子様なんでしょ? だったら、こんなことがあってもいいと思うな? 独り占めするなんておかしいわよ?」

「だー-! 俺はイシャールと! イシャール? イシャールはどこだ? そうだ! 俺はイシャールと戦うつもりだったんだ。何だ、この世界は!?」

「あらあら、目が覚めちゃったのねえ。この世界で甘い愛を与えられていればよかったのに」

「? イーシャ? いや、違うな……おまえは誰だ?」

「ふふふ、私はソムニフェラ(Somnifera)。この世界ソムニウム(Somnium)の主(あるじ)よ」

「ソムニウム?」

「そう、イシャール様が送り込んだ世界よ。ここではあなたの気息と精神がすべて」

イーシャだったものが姿を変えた。

長い金髪の美女へと姿を変えた。

「はじめまして。私がソムニフェラよ」

サージュは精神で剣を形成した。

「あら、もう、この世界の理を知覚できるのね。さすがイシャール様が一目置く存在ね。やはりあなたは危険だわ。ここで死の眠りへといざなってあげる!」

ソムニフェラが凍結の力を使ってきた。

「ふふふ……これは精神の戦いよ! あなたの精神をここで殺めてくれるわ!」

サージュの体が凍り付く。

サージュは力を少し入れた。

すると氷がはじけ飛んだ。

サージュは一気に前に出てソムニフェラを斬り捨てた。

「ふふふ! 無駄よ! その程度では……なっ!?」

「俺は確かにおまえを斬ったぞ?」

「こんな、こんなことが……イシャール様、もうしわけありません!」

ソムニフェラは消えていった。


サージュは本当に目を覚ました。

するとそこは教会だった。

「俺は……?」

「サージュ、目が覚めたのね!」

「サージュさん! 起きても大丈夫なんですか?」

「ああ、ようやく現実に戻ってこれた」

「現実に? どういうこと?」

「ああ、イシャールの奴が俺を眠りにつかせたらしい。そして危ない夢まで用意してくれた。イシャールは今どこだ?」

「イシャールは城にいます」

「城に?」

「はい。サージュさんが倒れた後、イシャールは魔物をカゲネコを召喚しました。今の城はカゲネコであふれています。王も王妃も退避しています。ただシルヴィア王女だけが捕らわれたままです」

「おそらく、イシャールは姉さんを使って、王位を手に入れようとしているんだ。合法的に王になろうとしているんだ。こんなところにいる場合じゃない。さあ、王城に向かおう!」

サージュたちは城へとやって来た。

「おそらくイシャールは玉座の間にいる! 俺はあいつの野望を止める!」

サージュは城の中へと入った。

するとカゲネコ三匹がサージュの前に現れた。

「こいつらがカゲネコか。俺はイシャールに見せられた夢のせいで機嫌が悪い。一刀で終わらせてもらうぞ!」

サージュはダッシュしてカゲネコ三匹を一刀のもとに斬り捨てた。

「サージュ……すごい……」

「さすがです、サージュさん」

「イシャールのもとまで行くぞ? 敵はすべて俺が薙ぎ倒す!」

「さすが、サージュね」


サージュたちは一気に玉座の間まで進んだ。

玉座の間ではイシャールが頬杖をついて座っていた。

「ほう……もう目を覚ましたのか……私がもたらした「眠り」は気に入らなかったかな? フッフッフッフ!」

「ああ、悪趣味な眠りを見せられたものだ。あんな非現実に屈すると思うな?」

「ハーッハッハッハ! さすがはサージュ。我が好敵手よ。おまえがここに来たということは王城に兵士たちが入ってくるだろう。私は袋のネズミになるつもりはないのでね。その前にお暇させてもらおう」

イシャールが立ちあがった。

「待て、イシャール!」

「安心しろ。おまえと私との決着は別の海で「死海」で行うとしよう。死海へ来い、サージュたちよ。そこにはアルカディオポリス(Arkadiopolis)がある。そこですべての決着を」

そう言うと、イシャールは闇の霧に消えた。

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