海竜王アッティラ
王国軍と海竜との戦いが始まった。
今回マリーノ王国軍は大軍を一気に投入してきた。
大軍によって、海竜たちを倒すつもりだ。
軍事作戦は短時間で終えるのがベストだ。
マリーノ軍の戦略は大軍を投入して、一気にケリをつける、これにつきる。
これは自分より弱い相手でも変わらない。
海竜王アッティラは島から王国軍と海竜との戦いを見ていた。
「ちっ! このまま配下に任せていたらやべえな……さすがにマリーノ王国も本腰を入れてきたというわけか……」
「そうはさせない!」
「誰だ!?」
「俺はサージュ、冒険者だ!」
「私はイーシャ、冒険者よ!」
「なんだあ、てめえらは?」
「俺たちは海竜王アッティラ、おまえを倒しに来た!」
「クハハハハハハ! これが笑わずにはいられるか! こんな小僧と小娘にこの俺様が負けるわけねえだろ! まずはてめえらからぶちのめしてやらあ!」
アッティラは黒いバットを手にした。
「イーシャ、まずは俺一人でこいつと戦う。おまえは下がっていてくれ」
「わかったわ」
「おら、死ねえ!」
アッティラがバットをサージュに叩きつける。
サージュは衝撃が来るのを予測して横によけた。
「ほう、今のをかわすか……どうやらただの小僧じゃねえみたいだな。だが、この攻撃にいつまで持つかなあ!」
アッティラは横にバットを振るった。
サージュは水煌剣を出して、アッティラの攻撃に対抗した。
「ぬおっ!? こ、小僧! この俺様の攻撃をたかが小僧が受け止めただと!?」
アッティラは驚愕した。
「フン! だがどれだけ防げるか、楽しみだぜ!」
アッティラはバットに魔力を込めた。
強力な魔力による打撃だ。
これならこの小僧も肉片と化するはず……
「なっ、なに !?」
アッティラは目を見開いた。
アッティラの魔力打をサージュは水煌剣で受け止めた。
サージュはアッティラに反撃していく。
サージュの剣が振るわれる。
それはつるぎの舞だ。
「うおおおおおおお!?」
海竜王アッティラはサージュの攻撃に圧倒された。
「はああああ! 水煌波!」
サージュは膨大な水の斬撃を放った。
海竜王アッティラはそれに呑みこまれる。
アッティラの姿が海に消えた。
「サージュ、アッティラは?」
「今に一撃でくたばるような奴じゃない。どこにいる! 姿を現せ!」
「クハハハハハハ! やるじゃねえか、小僧! 楽しい! 楽しいぜ! 何十年ぶりの高揚感だ! クハーッハッハッハッハ! この俺の全力を、おまえに見せてやるよ!」
海からアッティラの声がした。
どうやらアッティラは海に落ちたらしい。
海から禍々しい闇が立ち昇った。
すると巨大な竜に姿を変えた海竜王アッティラが姿を現した。
「ハーハッハッハ! どうだ!? これが俺様の竜化形態だ! 畏怖という概念を持っているか、小僧? 畏怖しろ! 恐れろ! 怖がれ! 恐怖せよ! それが竜を前にした時の正しい態度だ! ウオオオオオオオオ!」
アッティラは吠えた。
アッティラは豪腕で殴りつけてきた。
すさまじい風圧を伴う一撃だ。
サージュはジャンプしてこの攻撃をかわした。
そのままアッティラの腕を駆けあがり、アッティラに斬りつける。
「水波斬!」
「ぐおおおおおお!?」
海竜王アッティラはその反応が一つ一つオーバーだった。
「サージュ、私も雷で攻撃するわ! 雷の嵐よ! 雷嵐!」
雷電が次々と降り注ぐ。
「ぐぎゃああああああ!?」
どうやら雷はアッティラの弱点らしい。全身を感電させて肉が焦げ付くにおいを発する。
「ぐおおおおお! 許さん! 許さんぞ、小娘え! 死ね!」
アッティラが豪腕でイーシャを殴りつけようとする。
そのパンチをイーシャは聖障壁で防ぐ。
しかし、アッティラの豪腕は止められなかった。
そこにサージュが現れた。
サージュが水の障壁でガードする。
サージュの障壁も破られて、後方に吹きとばされる。
サージュは岩に激突する。
サージュはすぐに立ち上がる。
二重のバリアはアッティラの攻撃をかなり軽減したらしい。
イーシャは無事で済んだ。
「二人ともまとめて始末してやるぜえ! ビッグ・ブレス!」
アッティラが口を大きく開ける。
グリフォンライダー隊を殲滅したあの攻撃だ。
サージュはイーシャの前に立った。
聖剣シャイネードが光輝く。
「死ねえええええええ!!」
アッティラがビッグ・ブレスを発射した。
すべてが閃光に包まれた。
すさまじいブレスの放射は岩を貫通した。
「フハハハハハ! この攻撃の前では、たかが小僧ごとき……!? なっ、何!?」
サージュは無傷で立っていた。
「バ、バカな!? この攻撃を受けて無傷だと!? おまえ、何をした!?」
「ブレスを斬った」
「な、何!? ブレスを斬っただと!? そんなバカな!? な、なんだ、その剣は!?」
「これはリエンテからもらった剣で名は聖剣シャイネード。この剣は魔法を斬ることができる」
「なんだと!? 美竜王! あの裏切り者!」
サージュがゆっくりとアッティラに近づく。
「ヒ、ヒイイイイイイ!?」
海竜王アッティラがおじけずく。
アッティラはこれまで命のやり取りをしたことがなかったのだろう。
いつも圧倒的パワーで敵を粉砕してきたのだろう。
アッティラは拳を突き出す。
しかし、サージュはそれに乗って足場とすると、アッティラの額に水煌剣を突き刺した。
「ぎいやあああああああ!? この、この、この俺が!? 人間に敗れるだと!? がはああ……」
アッティラは青い粒子と化して消滅した。
そのころアンドレア提督は……
「海竜には雷の魔法が効果的だ! 魔法使い隊は雷で海竜を攻撃しろ!」
今回の海戦では主力は雷を使える魔法使いだった。雷が海竜の弱点だったからだ。
主戦力は雷魔法使い、補助戦力はグリフォンライダー隊だった。
「むっ!?」
アンドレア提督は海竜たちがバラバラになって逃げていくのを確認した。
「これは……サージュ様がアッティラを倒したのか……? さすが、サージュ様だ!」
アンドレア提督は退却の信号を出した。
かくして、この海戦はマリーノ王国の勝利に終わった。




