シルヴィア
サージュとイーシャはマリーノ王国の港に到着した。
マリーノの王城が都市を圧倒していて、高く天へとそびえたっていた。
「あれがマリーノ城か……天へと至るかのようだ……」
サージュはマリーノの王城に感激した。
「それにしても、すごいわね。水の上に都市が建てられているなんて……」
「どうも、陸地と海とはつながっていて、陸地側に行くこともできるようだ」
港にはいくつもの船が停泊していた。
本格的な工事が施された港だった。
「この、下郎! 下がりなさい!」
「ウへへへへ! お嬢ちゃん、かわいいねえ……」
「俺たちといっしょに遊ばないかい?」
一人の女性の周りに不良たちが集まっていた。
サージュはさっそくその中に割り込んだ。
「やめろ」
サージュは女性の前で左手を横に上げた。
「な、なんだあ、おまえは!?」
「俺たちにたてつく気か!?」
不良はあっさり動揺した。
サージュは剣を抜いた。
「やるか? やるなら命のやり取りをすることになるが?」
「くっ、くそっ!」
「ちっくしょう!」
不良たちはサージュが冒険者であることを悟ると、おじけづいて、逃げてしまった。
「大丈夫ですか?」
「……ウソ……」
「? どうかしましたか?」
「あなたそのアザは?」
「ああ、これですか。生まれつきあるんですよ」
女性は信じられないというような表情をした。
さらに硬直した。
「イクス(Ix)!」
女性は突然、サージュに抱きついた。
「は? え? え?」
サージュは動転した。
この女性は誰かと人違いをしているのではないかと思った。
「ああ! こうして会えるなんて! 神はやはり私たちを祝福してくださったのですね!」
(これは、何だろう? どこか懐かしいように感じる。俺はこの人を知っている? まさか……だが、どこか心地よいことも確かだ……)
「ちょっと、二人とも! 抱き合うのはもっと別のところでやってもらえる?」
サージュは混乱した。
「すいません、離れてもらえませんか?」
「ああ! ごめんなさい!」
女性はサージュから離れた。
「あなたは誰ですか?」
「ごめんなさいね……びっくりしたでしょう? 私はシルヴィア(Silvia)。このマリーノ王国の王女です」
「「ええー!?」」
「声を静かに!」
「ごめん」
「ごめんなさい」
「あなた方のお名前は?」
「俺はサージュ」
「私はイーシャよ」
「そのアザは生まれつきと言いましたね? そのアザは海の王国マリーノの王子に現れる海の紋章なんです」
「それはつまり?」
「サージュさん、あなたはこのマリーノの王子であり、五歳年下の私の弟です。あなたの本当の名前はイクスといいます」
「え?」
「えー-!?」
サージュとイーシャはシルヴィアの言ったことを聞き取れたが、理解できなかった。