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海の子供たち   作者: Siberius
竜との邂逅編
44/65

外宇宙からの生命体

外宇宙――

一つの生命体が惑星に侵入した。

外宇宙からこの世界にとって『異質な』生命体が飛来したのである。

それは夜だった。

空には満月が輝き、満天の星々がきらめいていた。

突如、流れ星のように侵入した生命体の存在を、竜王たちはすぐに察知した。

「? 何だ? これはいったい何なのだ?」

青竜バハムートは夜の空を飛んだ。

そして、上空から三日月の形をした島を見おろした。

「何かが外宇宙から侵入した? いったい、何者だ。それが何であれ、この世界に災いをもたらす存在であることに変わりはない」

バハムートはけわしい表情をした。

同じことは白竜や黒竜、赤竜、美竜王リエンテも気づいた。

「この気配は……!?」

リエンテは急に目を覚ました。

リエンテはベッドから起き上がると、窓を開けて、ミラネウムの夜空を見上げた。

「いったい、何が起こったのですか!? 突如、この世界に、オイクメネに異質な存在が現れました」

「あなたも気づいたか、美竜王よ」

「白竜、あなたもですか?」

「私もだ」

「我も気づいた」

「黒竜、それに赤竜」

「これは世界の災いだ。何か、異常なものを感じる。この世界に大いなる災厄をもたらすものだ」

と白竜。

「私も同じ考えだ。これは何かおかしい。普通の事態ではない。この世界の危機だ」

黒竜が言った。

黒竜は白竜と似ていた。

四つ足で歩行し、翼を備え、頭には角があった。

「今、青竜バハムートが現場にいるようだ。詳しいことは彼から聞こうではないか?」

赤竜が言った。

「そうですね、今テレパシーを送ります。……青竜バハムート、聞こえますか?」

リエンテはバハムートとシンクロを試みた。

「? 美竜王か?」

バハムートが答えた。

「はい、わたくしです。今あなたは現場にいるのですか? 詳しいことをわたくしたちに教えてほしいのです」

「白竜や黒竜、赤竜もいるらしいな。わかった。私が目にしたことを伝えよう。外宇宙から未知の、異質な生命体が侵入した。それは三日月の島に飛来した。それはまだ今のところ、目立った動きを見せていない。今のところは、な。しかし、私にはこの生命体がこの世界に平安をもたらすとは思えない。むしろ、災いをもたらすように思える」

「外宇宙からの、生命体……」

リエンテが口からこぼした。

「私はその生命体を肉眼で確認できていない。今はまだ、その生命体がどういう姿形をしているかはわからない」

青竜バハムートは夜の空、三日月の島の上空でたたずんでいた。

「すみやかに対処する必要があるな。どうする?」

黒竜が言った。

「今は監視すべきだろう」

白竜が言った。

「むっ、待て!」

「どうしたのだ、バハムート?」

赤竜が言った。

それも突然だった。

三日月の島から闇が現れた。

発生した闇は瞬く間に島全体を呑みこみ、そして広がっていった。

闇は世界を侵食していった。

この闇は一種の毒気を伴っていた。

ただの闇ではなかった。

それは蝕む闇だった。

この闇は他の生命体や万物を呑みこみ、喰らうものであった。

さらに闇それ自体が世界を汚染していった。

「闇が、世界を侵食していく!? これは闇の災厄だ!」

バハムートは自分が見たことを他の竜王たちに報告した。

全ての竜王が危機感を共有した。

「闇の、侵食……」

「これはまずいぞ! 事態は一刻を争う! この闇はずいぶん早く世界に広がっていく! 侵食のスピードが速い! このまま手をこまねいていれば世界全体がこの闇に侵食されるのも時間の問題だ!」

バハムートが警告を発した。

「どうする? この非常事態をくい止めるには?」

と黒竜。

「わたくしが現地の調査に赴きます。そして外宇宙からやって来た生命体と対決します」

「それでは三日月の島に連れて行くのは私の仕事になるな。待っていろ、今迎えに行く!」

「白竜、お願いします!」

白竜がミラネウムに来るには最短でも二日かかるだろう。

そのあいだに事態がどの程度悪化するか、それがリエンテの心配だった。


次の日、「朝」は訪れなかった。

時刻は午前7時45分、とっくに太陽が現れ、朝日が照り付けてもいいころである。

人々はこの異常に気づいた。

朝は訪れず、夜が続いていた。

「どうしたんだ? もう朝になってもいいころなのに……」

サージュが言った。

「おかしいわね。もうすぐ、8時になるわ。それなのに空が夜のままなんて」

サージュとイーシャは朝食を済ませた。

二人は宿の外に出て、ミラネウムの人々を見た。

人々の戸惑いは隠せなかった。

ミラネウムは宗教色が意外と強い都市である。

ミラネウムの大学では最高の学問は「神学」であった。

一見すると、ファッションや服、有名ブランド、宝石、高級レストラン、オーケストラなどが有名であるが、ミラネウムでは宗教がすべてをけん引しているのである。

ミラネウムの大司教は人々に非常に大きな影響を与えていた。

ミラネウムの人々はこの現象……夜がずっと続いていることを宗教的に解釈した。

終末の日が訪れた。

預言が現実化する。

審判者にして、裁判官が到来する。

この世の終わり。

神が怒り、鞭が降り下される。

我々は神の目から見て悪とされることを行っているのではないか?

悔い改めねばならない。

などなどである。

ミラネウムの人々は禁欲的になった。

さらに宗教心と信仰をむき出しにした。

ファッションショーの中止、レストランの閉店などが相次いだ。

さすがにパン屋や市場は営まれていたが、利益を追求することは宗教的に好ましくないと考えられた。

ミラネウムの人々は教会に殺到した。

神に祈りを捧げ、許しを請うためにである。

基本的に、ミラネウムの人々は宗教的である。

表面的には華やかでも、本質的には宗教的であった。

大司教は人々にいつも通りの行動をとるよう教え、説いた。

ミラネウムの人々の中には資産を教会に寄進したいと申し出る人も、現れた。

人々は夜がずっと続いている現象を、我々は罪を犯した。

神は見ておられる。

我々は悔い改めねばならない、そうとらえた。

一種の狂行まで広場で行われた。

それは鞭打ちであった。

罪深い者たちに神の鞭が振りかざされるのだ。

それを上回るものは「神の鉄槌」と考えた。

「なんかいつもと変わったわね。人々が宗教的になっているわ」

「これがミラネウムなのか……」

ミラネウム人のこうした態度はアレンタ人には理解不能であろう。

「サージュさん、イーシャさん」

サージュとイーシャの背後から声がかけられた。

そこにはリエンテがいた。

「リエンテ、どうかしたのか?」

「至急、話しがあります。わたくしの部屋まで来てください」

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