ムクロ
ミラネウムでは、一つの事件が起きていた。
それは通称「ムクロ」と呼ばれていた。
骸の怪物――それがミラネウムで暗躍していた。
ミラネウムの警察はこの怪物ムクロの事件を追っていた。
「ムクロ」は闇の魔法の実験で誕生したらしい。
ムクロは夜のあいだしか活動しない。
ムクロは巨人のように大きかった。
警察はこのムクロと交戦し、多くの犠牲者を出していた。
ムクロは神出鬼没で、どこに現れるのかわからなかった。
この事件はニュースとなり、新聞にも大きく取り上げられた。
サージュたちはミラネウムに到着した。
「ここがミラネウムか。宗教的建物が目立っているな」
「そうね。それに宗教的な雰囲気を感じるわ」
「アレンタより、ミラネウムの方が宗教的ですね。見てください、あの教会は荘厳ですわ」
サージュたちは都市の中心的存在である教会を見た。
この教会はミラネウムのシンボルであった。
「このミラネウムには修道院も多く建てられています」
サージュは教会に興味を覚えた。
「? どうしたの、サージュ?」
「いや、なんでもない」
「では、まず宿に向かいましょうか。町の中に出るのはそれからにしましょう」
サージュたちは宿に向かった。
そして、受付を済ませた。
「さて、これからどうしましょうか?」
「俺はちょっと行きたいところがあるんだ。イーシャとリエンテは服でも見てきたらどうだ? ミラネウムでは服飾も有名なんだろ?」
「じゃあ、私たちは服を見てくるわね。行きましょう、リエンテさん」
「はい、では行きましょうか」
イーシャとリエンテは宿の外に出て行った。
サージュは一人だけになった。
どうしても一人で訪ねたかったからだ。
「さて、行くか」
サージュは宿の外に出て、町の中を歩いた。
サージュは教会に向かった。
首を上に上げて建物を見上げる。
「大きいし、高いな……」
サージュは教会の中に入った。教会の中は正常な空気で満ちていた。
サージュは教会を奥に進み、祭壇の近くまでやって来た。
教会は神聖な建物だった。
「ようこそ、神の平安があなたにあらんことを」
一人の司祭がサージュに声をかけた。
「一つ、話をしてもいいでしょうか?」
「何でしょうか?」
「俺は今迷っているのです……それはこのまま旅を続けるか、それともふるさとに帰るか……」
サージュは改まって答えた。
「神があなたをお導きくださるでしょう。それがどのような道であれ、神はあなたと共に在ります」
「俺はどう生きればいいのでしょうか。今の俺は冒険者です。冒険の旅をしています。しかし、このまま旅を続けることに疑問を抱いています。俺は旅を続けるのか、それともふるさとの村で定住すべきなのか……」
「人がどう生きるか、それは容易に出る答えではありません。それは人間の尊厳ともかかわっているからです。あなたがどちらの方向に行こうと、神はあなたをお招きくださるでしょう。神の声があるかもしれません。神を信じましょう。神が私たちを憐れんでくださいますように。神の祝福があなたにありますように」
司祭は神に祈った。
サージュは教会を後にした。
途中の道でサージュは新聞を目にした。
「何だ? 『ムクロ』?」
サージュは新聞を詳しく読んだ。
どうやら今、ミラネウムでは「ムクロ」と呼ばれる怪物が夜、徘徊しているらしい。ムクロは禁断の魔法で誕生した怪物のようだ。
「もしもし、ちょっといいでしょうか?」
「はい、何でしょうか?」
一人の警官がサージュに声をかけた。
「失礼ですが、あなたは冒険者ですか?」
「はい、そうですけれど」
「今、『ムクロ』の事件をご存じですか?」
「今、新聞で知りました。夜、徘徊しているとか……」
「気をつけてください。目下、我々警察が事件の対処に当たっておりますが、『ムクロ』を退治できておりません。くれぐれも夜間の外出は控えてください」
「わかりました」
「それでは、失礼いたします」
警官は去っていった。
サージュは宿に戻ってきた。
そこでイーシャやリエンテに出会った。
「あっ、サージュ、おかえり」
「サージュさん、おかえりなさい」
「ああ、ただいま。ファッションの方はどうだった?」
「いろいろと試着させてもらったわ。ドレスも着てみたの。でも私は今の服が一番気に入っているわ」
「わたくしは特に試着はしなかったのですが、きれいな服をたくさん見ることができましたね。さすが、ミラネウムですわ。ミラネウムはアスカニア一の服飾の都ですから」
リエンテがほほえんだ。
「そっか、それは良かったな。ところで『ムクロ』って知っているか?」
「え、何? ムクロ?」
「ああ。どうも禁断の魔法で誕生した生物のようだ。それが夜、ミラネウムの町中を徘徊しているようなんだ。新聞を読んだら犠牲者も出ているらしい」
「禁断の魔法で誕生した怪物、ですか? それはほおっては置けませんね」
「今、警察がムクロの捜査をしているようだけど、正直警察の手に負える相手とは思えない」
「ムクロ、ね……そんな怪物が町の中を徘徊しているなんて、不安だわ。ねえ、私たちでなんとかできないかしら?」
「そうですね。わたくしの探知の魔法でトラップを仕掛けることができます。不浄なる存在を追跡できますわ」
リエンテは手から水晶球を出した。