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海の子供たち   作者: Siberius
竜との邂逅編
30/65

アスカニア

ルブリウス城にて。

「ベイン(Beyn)よ、我が竜族の軍団は編成し終えたか?」

「はっ、ルブリウス様。竜族の軍はすべて編成完了いたしました。いつでも出撃可能です」

「ベイン、おまえに軍の指揮権を与える。ただちに出撃し、人間の世界を侵略するのだ。これは戦争だ。人間どもに、我ら竜族の力を思い知らせるのだ。我々は竜族の帝国を実現する。まずはアスカニア領になだれ込め」

「はは!」

ベインはルブリウスのもとを去り、軍のもとへ向かった。

ベインは竜族軍の司令官に任命された。


サージュたちはブルンディシウムを去り、アスカニアの首都アレンタへと向かった。

「なんだろう、この道は。すべて舗装されているのか?」

サージュは舗装された道路を見て驚いた。

近くを通り過ぎた旅人がサージュを見て笑った。

「アスカニア人にとってこういう道路って常識なのかしら……?」

イーシャは恥ずかし気に答えた。

アスカニアでは道路はすべて舗装されている。

それだけでなくアスカニアは道路をネットワーク状につなげて整備した。

アスカニアにとって道路とは軍団の円滑な運用と移動のために構築されたものである。

つまり、すべての道路は軍事的目的のために作られ整備されたのである。

アスカニアはまずアレンタという都市国家から出発した。

その後戦争によって領土を手に入れ、さらに拡張していった。

その過程でアレンタという都市国家からアスカニアという領土国家に移行した。

アスカニアはこういう歴史を持っている。

アスカニアはアレンタ派とアスカニア派に分かれて対立した。

アレンタ派はあくまで都市国家であることを主張し、アスカニア派は領土国家に改革することを主張した。

双方は対立し、内乱へと発展した。

最終的に会戦で、アスカニア派がアレンタ派を打ち破り、アスカニア派が勝利した。

アスカニアでは血が流れた。

アスカニア派はアレンタ派の残党を粛清した。

かくしてアスカニアは共和国となり、こんにちまで続いている。

サージュたちは街道を北上し、アレンタを目指した。

サージュたちはアレンタまでしばらく歩かなくてはならなかった。

アスカニアにおける最高機関は「元老院」である。

アレンタの法律はすべて元老院で作られる。

そして元老院は魔道士で構成される。

全ての元老院議員は魔道士である。

アスカニアの国政は魔道士たちに独占されていた。

それはアスカニア――アレンタの建国者たちが魔道士だったからである。


夜、空中庭園ニネヴェ宮の上からフォルネウスは地上を見おろしていた。

夜空には満天の星々が輝いていた。

「人間、ヤハリ人間ハ自然ノ秩序ヲ乱ス害悪ダ。人間ハ都市ヤ町ヲ築キ自然環境ヲ破壊シテイル。我ハ人間ガ憎イ。人間ハ地上カラ消シ去ラネバナラナイ。人間ハアル土地ニ入ルト、マタタクマニ周辺地域ヲ汚染シテイク。マルデ病原菌ダ。人間ドモヨ、オモイシルガイイ。コノ世界ヲ傷ツケタ報イヲ思イ知ラセテヤロウ。我ガ人間ドモヲ滅ボシテクレル。我々ノ憎シミヲ、人間ドモニ味合ワセテクレヨウゾ……」


アレンタの元老院にて。

アスカニアの首都アレンタにある元老院では、執政官リキニウス(Licinius)が内閣の汚職問題で手厳しい批判にさらされていた。

さらにリキニウスが任命した、アイトラ州総督の不正についても追及されていた。

リキニウスは苦しい反論を述べた。

リキニウスは元老院議員たちの前で、汚職の一掃と、総督の不正について断固たる措置を取ることを約束した。

元老院ではリキニウスの任命責任についても言及された。

「元老院議員イシャール」はリキニウスの苦し気な立場を見てあざ笑った。

元老院では竜の問題も持ち上がった。

まず、イシャールに発言の機会が与えられた。

全ての元老院議員が注目する中で、イシャールは演説を行った。

「元老院議員諸君、すなわち国家の父たちよ、私は竜とは徹底抗戦以外ありえないと考える。竜は我々人間にとって、驚異の種族であり、その対処に速やかに執り行わねばならない。諸君らも知っての通り、先日、一匹の竜がアレンタを襲撃した。幸いにして竜は倒されたが、根本的な問題は解決していない。諸君、我々人間は竜と戦わねばならない。なぜなら、竜は我々の文明や伝統と相いれないからであり、我々の秩序を敵視しているからだ。諸君、この戦いではどちらかが滅ぶしかない。我々が生き残るためには竜を皆殺しにしなければならないのだ。この戦いは二つの種族の抗争であり、この世界と地上の平和における戦いだ。アスカニアの平和のためには竜たちを皆殺しにしなければならないのだ。元老院議員諸君、竜は強大な存在だが、恐れてはならない。我々の文明は竜と戦うことができるほど高度なものになっている。それは我々が竜と戦えるほどの力を持っているからだ。諸君、ともに力を合わせて竜たちをこの世界から一掃しよう。それが、我々の存在意義なのだ!」

イシャールは大勢の元老院議員の前で竜との抗争を言い切った。

元老院議員たちはイシャールの演説を称賛し、ほめたたえた。

元老院議事堂は拍手喝采に包まれた。

執政官リキニウスは圧倒された。

リキニウスはのちに、イシャールを法務官に任命した。

イシャールの人気で内閣に箔をつけようとしたのだ。

イシャールは不敵な笑みを浮かべていた。

イシャールにとって元老院の権威など、愚かしいもの以外の何物でもなかった。

闇は元老院を確実にむしばんでいた。


サージュたちはアレンタに到着した。

サージュにはアレンタまでの道のりがずいぶん長く感じた。

「ここがアレンタなのか。アスカニアの首都、世界の首都アレンタ……荘厳な建物が並んでいるな」

「あの荘厳な建物は何なのかしら?」

「あれはアレンタの国政を司る建物です。元老院議事堂ですね。あそこでアスカニアの国政が行われています」

サージュたちはいつも通り、宿に入り受付を済ませた。

いつもなら観光するのだが、疲れていたので、サージュたちは各々の部屋で休むことにした。

サージュたちは知らなかったが動乱がアスカニアに迫りつつあった。

急な知らせだった。

知らせは国境警備隊から首都アレンタに通信によって知らされた。

「竜の大軍が出現!」

この報告を受け、ただちに元老院が招集された。

執政官リキニウスは事の次第を元老院で報告した。

現在、竜の大軍がアスカニアの国境に現れ、国境警備隊と戦闘状態に入ったことを告げた。

イシャールは。

「ほう……」

と興味深げに漏らした。

元老院では竜の軍勢との戦いを議決した。

リキニウスは軍団をただちに編成すると、国境へと出撃した。

「竜の軍勢が出現! 現在アスカニア国境で戦闘中!」

このニュースは高度な通信技術によって、すみやかにアレンタ中に知れ渡った。

アレンタの市民たちに衝撃が走った。

そしてアレンタ市民を震駭させた。

アスカニアは常備軍を保有していた。

その軍制は志願制であり、主に平民で構成される。

軍の司令官や士官は魔道士が務めた。

アスカニア軍の主力は重装歩兵である。

伝統的に槍を主武器とし、密集隊形を組んで戦う。

執政官は軍の司令官も兼任する。


「人間どもを蹴散らせ! 我々の力を見せつけてやるのだ!」

ベイン率いる竜族軍はアスカニアの国境に攻撃をかけてきた。

国境警備隊は竜族の侵攻に混乱していた。

ベインは黒い色をしたタイラント種の竜で、知性を持っていた。

ベインを司令官とする竜族軍は国境警備隊を一方的に蹴散らした。

アスカニア軍国境警備隊は撤退を余儀なくされた。

竜族軍はアスカニアの砦を破壊すると、アスカニアの国内になだれ込んでいった。

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