表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海の子供たち   作者: Siberius
竜との邂逅編
18/65

不浄なる者

サージュとイーシャはトリデントを後にした。

トリデントの港から二人はターレント行きの船に乗った。

海を越えて新しい大陸へと進むのだ。

サージュはトリデントから去る時、感慨深いものがあった。

しばらく船からトリデントを見つめていた。

「ふう、今日はいい天気ね。さわやかな空だわ」

サージュの隣にイーシャが来た。

「? どうしたの、サージュ?」

「いや、トリデントではいろんなことがあったと思ってさ」

「そうね。戦争にも加わったしね」

二人は特に話もせずに海を見つめていた。

「お二人さん、ちょっとよろしいですか?」

そこに声がかけられた。一人の女性がいた。

「なんですか?」

サージュが答えた。

「私は行商をしているんですが、アクセサリーなんていかがですか? お兄さん、恋人へのプレゼントとしてどうですか?」

「恋人?」

「えっ!?」

イーシャは顔を真っ赤に染めた。

「いえ、俺たちは特にそういう間柄では……」

「それでもいい機会ですから、何かプレゼントされたらどうですか?」

「うーん……」

サージュは悩んだ。

隣にいるイーシャをサージュは見た。

イーシャの顔が赤い。

「そうだな……」

サージュはアクセサリーを目にした。

「じゃあ、これをお願いします」

サージュはペンダントを手に取った。

「ありがとうございます! きっとよくお似合いになりますよ!」

サージュはおカネを支払うと、行商人の女性は去っていった。

「イーシャ、これ」

「あ、うん」

イーシャはほおを赤らめながら、ペンダントを受け取った。

イーシャはペンダントを首からかけた。

「似合ってるよ」

「あ、ありがとう、サージュ」

「何、旅の記念にと思ってさ」

「ね、ねえ、私たちほかの人から見ると恋人同士に見えるのかしら?」

「うーん、そう見えるのかな……」

サージュの答えは今一つはっきりしなかった。

「はあ、サージュの鈍感……」

イーシャは小さく漏らした。

「? どうした? ため息なんて漏らして?」

サージュはふしぎそうにイーシャを眺めた。

イーシャはなぜか不満そうだった。

「別に、何でもないわよ! フン!」

「何で怒るんだ?」

サージュは理解不能だった。

と、そこに船の上で見知った顔を見かけた。

「あれはリエンテさんじゃないか?」

「え、どこ?」

イーシャはサージュと同じ方向を見た。

そこにはリエンテが一人で立っていた。

「リエンテさん」

サージュがリエンテに声をかけた。

「あら? お二人は確か」

リエンテが振り向いた。

「ヴェノーザで会ったきりでしたね」

イーシャが言った。

「そうですね、お久しぶりです。こんな所で再会するとは思っていませんでした。えーと、お二人のお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」

「俺はサージュ」

「私はイーシャ」

「サージュさんに、イーシャさんですね。お二人はごいっしょに旅をされているんですね。ひょっとして恋人同士ですか?」

リエンテは穏やかに笑いながら答えた。

「はい?」

「ええええ!?」

イーシャは顔をまた真っ赤に染めた。

「いえ、特にそういうわけでは」

サージュは素っ頓狂とんきょうに答えた。

「違うのですか? でもお二人はずいぶん仲がよろしいように見えるんですけど」

「俺とイーシャは幼なじみなんです」

「まあ、そうでしたか」

リエンテはほほえましそうに笑った。

「リエンテさんもターレントに行くんですか?」

「はい、ターレントからフィオレンティア(Fiorentia)へと向かうつもりです」

「フィオレンティア?」

「花の都フィオレンティアです。よかったらお二人も訪ねてみてください。では私はこれで。お二人の邪魔をしたくありませんから。ふふふ」

リエンテはその場から去っていった。

「邪魔ってなんのことだろう?」

サージュは疑問に思った。

「…………」

イーシャはサージュから顔をそむけた。

イーシャの顔は赤かった。



船は夜、闇の中を航行していた。

その船をゴーストの一群が目をつけた。

ゴーストの一群は空から、夜の中浮遊して、船に接近した。

ゴーストたちは船に音もなく降り立ち、船の中へと侵入していった。

船は幽霊船と化した。



リエンテは自室の明かりをつけた。

「どうやら、不浄なる者たちが現れたようですわね」

そう言うとリエンテは杖を手にした。

そして、部屋を出た。



サージュは何か不吉な感じがして目が覚めた。

「なんだ?」

サージュはベッドから降りると、武器を手にした。

「ん? どうしたの、サージュ?」

イーシャは眠たそうに言った。

「何か変なんだ。何かが船に侵入したような気がする」

サージュには確信があった。

サージュはドアを開けて外に出た。

「!? ゴースト!?」

サージュは部屋を出るとゴーストに出くわした。

サージュは剣を抜き、聖なる刃でゴーストを斬りつけた。

ゴーストはちりじりになって霧散した。

「え? 何? どういうことのなっているの?」

イーシャも部屋から出てきた。

「ゴーストだ! ゴーストが船に侵入した!」

「なんでゴーストが船に?」

「わからない。けど、撃退するしかないな」

サージュとイーシャはゴーストを退治に向かった。

船の中はゴーストであふれていた。

サージュとイーシャはゴーストを退治して回った。

ゴーストの数は多かったが、さほど強くなく、十分撃退できた。

「これなら何とかなりそうだ」

サージュが一体のゴーストに攻撃をかけようとした。

その時、光の閃光が起こった。

ゴーストたちは光に呑まれて消滅した。

閃光の奥にはリエンテがいた。

「お二人とも! お二人も気づきましたか?」

「ああ、ゴーストが船に侵入した。うようよしていたよ」

「リエンテさんも、ゴーストの侵入に気が付いたの?」

「はい。何か不浄な者が侵入した気配を感じました。もう、船の中にはゴーストはいないでしょう。今ので最後だと思います。ただ、船の甲板からもっと強大なゴーストの存在を感じます」

「船の甲板からか。よし、行ってみよう」

「それと、わたくしのことはリエンテとお呼びください」

「わかった、リエンテ」

「それじゃあ、船の甲板に行きましょうか」

三人は船の甲板を目指した。



船の甲板――

甲板にはもやが漂っていた。

「何、これ、寒い……」

「ゴーストの親玉か……どこにいるんだ?」

「あそこです!」

リエンテは上空を指さした。

「あれか!」

「降りてくるわよ!」

三人は戦闘態勢を取った。

ゴーストの親玉ゴルヴァ(Gorwa)は静かに甲板に降り立った。

リエンテが杖先から光の光線を放った。

ゴルヴァは姿を消してかわした。

「どこに消えた!?」

サージュはゴルヴァの姿を探した。

「あそこか!」

サージュはゴルヴァを見つけて攻撃した。

ゴルヴァはまたもや姿を消した。

サージュの剣が宙を斬った。

三人はゴルヴァの気配を探り、身構えた。

「どこにいる……」

「気をつけてください。甲板の上にいることだけは確かです」

するとゴルヴァはイーシャの背後に現れた。

「!? イーシャ! 後ろだ!」

サージュが叫んだ。

「後ろ!?」

イーシャは走ってゴルヴァから距離を取った。

ゴルヴァは手から白い霧を発ち起こした。

白い霧が甲板中を覆っていく。

「寒いな」

ゴルヴァは冷たい息をはきつけた。

「下がってください!」

リエンテは前に出ると、前面に大きな魔法のバリアを展開した。

魔法のバリアは冷たい息を受け流した。

ゴルヴァは氷の魔法を唱えた。

氷の刃がサージュたちに襲いかかる。

「くらうか!」

サージュは剣で氷の刃を粉砕した。

「炎の槍よ!」

イーシャは炎の槍で氷の刃を迎撃した。

「不浄なる者よ、覚悟なさい!」

リエンテは光の輪をゴルヴァに向けて放った。

光の輪はゴルヴァに多段ヒットした。

サージュはすかさず、ゴルヴァに接近し、攻撃した。

斬撃をゴルヴァに叩き込む。

イーシャは炎の魔法を唱えた。

「炎よ!」

イーシャはワンドの先から炎の槍を二本出した。

双連・火炎槍は二本ともゴルヴァに命中した。

ゴルヴァは猛吹雪を巻き起こした。

「くっ!?」

「寒いわ!?」

サージュたちは氷雪に流された。

ゴルヴァとのあいだに距離ができた。

リエンテは杖を構えて、ゴルヴァの下に光の輪を描いた。

「聖なる光よ、ここに!」

光の輪から聖なる光が噴き上がった。

ゴルヴァは突然、奇声を発した。

「なんだ、これ!?」

「何? 頭が痛い!?」

サージュとイーシャは頭を抑えた。

しかし、リエンテには効いていないようだった。

「はああああああ!」

サージュは駆け出し、跳びこんでゴルヴァを斬りつけた。

その後サージュはゴルヴァとのあいだに間合いを取った。

「こいつ、攻撃が効いているのか?」

「サージュさん! 焦らないでください! こちらの攻撃は確実に効いています!」

「なんてタフな奴なの……」

ゴルヴァは手を上げると、氷の塊をいくつも投げつけてきた。

「よけろ!」

サージュは氷の塊を回避した。

「光の槍よ!」

イーシャが上方から光の槍を放った。

光の槍はゴルヴァを貫いた。

「これで、どう!」

光の槍は爆発し、ゴルヴァを呑み込んだ。

爆風が収まり、ゴルヴァの顔が見えた。

「なんて奴なの……」

「切り裂く風よ!」

リエンテは追撃した。

風の刃がゴルヴァに放たれた。

風の刃はゴルヴァに当たった。

ゴルヴァは両手から氷の波を起こした。

リエンテは杖から炎の波を出して相殺した。

そこにすかさず、サージュが斬りつけた。

「くらえ!」

聖なる刃がゴルヴァを襲う。

それでもゴルヴァは平然としていた。

ゴルヴァは冷たい息をはいた。

サージュは横にそれてかわした。

ゴルヴァはまた姿を消した。

「また、消えたか!?」

サージュは周囲を警戒した。

周囲には冷たいもやが立ち込めていた。

ゴルヴァはイーシャとリエンテの前に姿を現した。

「でたわ!」

イーシャはゴルヴァに光のしずくを放った。

さらに光の光線をゴルヴァに降り注がせた。

光線は何本も放たれ、ゴルヴァを襲った。

「これで、どうだ!」

サージュは聖なる刃でゴルヴァを斬りつけた。

渾身の一撃だった。

「まだ、効いてないの?」

イーシャも焦りを覚えた。

その時、ゴルヴァの体から光が出た。

ゴルヴァの体は小規模な爆発を巻き起こした。

ゴルヴァは爆発し、吹き飛んだ。

「これは……どうやら倒したようですわね」

リエンテが安堵した。

「倒した、のか?」

「やっつけたの?」

サージュとイーシャはしばらく呆然としていた。

甲板を覆っていたもやは消えた。

「不浄な気配は消え去りました。お二人の協力のおかげです」

「なんだかすっきりしないな」

「でも、これで一安心ね」

「船はこのまま順調に進んでいくでしょう。数日後にはターレントに着きます。お二人ともご苦労様でした。夜も遅いですし、船の中に戻りましょう」

三人は船の中に戻った。

サージュとイーシャはリエンテと別れて自分たちの部屋へと戻った。

「ふう、まさか幽霊船になるなんて思わなかったな」

「そうね。おかげで眠気が吹っ飛んだわ。このまま眠れるかしら?」

「それにしても、リエンテの魔法はすごかったな。かなりの腕の魔法使いなのかな?」

「私より上なんじゃないかしら? 私もがんばらないと」

「とりあえず、寝ようか」

二人はいつの間にか眠っていた。二人が目を覚ましたのは次の日の正午だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ