イシャールの塔2
サージュは魔法陣に近づいた。
「先に通じているのか? ……行ってみよう」
「ええ」
サージュとイーシャは魔法陣の中に入った。
するとほかの場所に移動した。
「ここは……地下室だろうか?」
このフロアにはさまざまな実験器具が置かれていた。
「遅かったな」
フロアの奥から声がした。
奥にはイシャールが立っていた。
「!? イシャール!」
サージュはイシャールに近づいた。
「待ちくたびれていたところだよ。エレベーターに驚いたか? それともキマイラにてこずったか? フッフフフフ」
イシャールは不敵な笑みを浮かべる。
「この塔は何?」
「これは魔法の塔だ。魔法によって作られた虚構の塔。塔であるのは我々魔道士が塔を英知の象徴とみなすためだ。塔は自由にその位置を変えることが可能だ」
「塔の上で血の跡を見つけた。あれは何だ?」
「ほう、そんなものが残ってたのか。別に大したことではない。私は個人的に私の魔法の教師と再会、対面した。彼女はいい教師だった、ただ理想主義的であったが」
「それで、どうした?」
サージュの顔がけわしくなった。
「フフフ、この私がこの手にかけ、殺した」
「ひどい……なんてことを」
「イシャール、おまえはいったい何をしたいんだ! 何を考えている!」
「私は闇の魔法の探究者。全ては闇の探究にすぎない。私は闇の真理を求めているのだ」
「トリデントとラケドニアの戦争もか!?」
「その通りだ。トリデントもラケドニアも最後まで私の手の平の上で踊っていたのだ。全ては闇の理だ。もはやトリデントにもラケドニアにも用はない。両国とも最初から使い捨てのコマにすぎん」
「イシャール!」
サージュは剣を構えた。
そして闘志を燃え上がらせた。
「フッフフフ。では約束通り相手をしてやろう」
イシャールが鎌を構えた。
イシャールは余裕たっぷりであった。
「イーシャ、手を出すな」
「え?」
「イシャールとは俺が一人で戦う!」
サージュの瞳には強さが宿っていた。
「ほう、いいのか? 私は二対一でもかまわんぞ? フッフフフフ」
イーシャは不安そうにサージュを見つめた。
イシャールには余裕と自信があるらしい。
サージュは足元を蹴った。
サージュの剣がイシャールを襲った。
イシャールは鎌でサージュの剣を防いだ。
サージュは連続でイシャールを攻撃した。
イシャールはサージュの剣を受け流した。
剣と鎌の金属音が鳴り響く。
イーシャは戦いの様子を心配そうに眺めていた。
「少しは前より腕を上げたようだな。旅がおまえを強くしたか。足腰も鍛えられている」
イシャールはサージュの攻撃を払いのけながら言った。
戦いはサージュが一方的に攻撃していた。
「フフフ」
イシャールは妖しく笑うと、サージュに反撃し始めた。
「くっ!?」
今度はイシャールの鎌がサージュを襲った。
イシャールは立て続けに鎌でサージュを攻撃した。
イシャールがサージュに攻め込んでいく。
サージュは押された。
サージュは後ろに下がりつつ、剣でイシャールの攻撃を防いだ。
イシャールは軽々と鎌を振るい斬りつけてくる。
イシャールは鎌を振り、闇の衝撃を放った。
「うわっ!?」
サージュは防ぎきれず、吹き飛ばされた。
「どうした、それで本気か?」
イシャールは闇のイナズマを出した。
直線的に迫るイナズマをサージュは剣でガードした。
サージュの剣から火花が飛び散る。
「闇のイカズチよ!」
イシャールは闇のイカズチを放った。
サージュの上からイカズチが降り下る。
「うわあああああ!?」
サージュは防げなかった。
「サージュ!?」
イーシャが叫んだ。
サージュはしゃがみこんだ。
サージュはゆっくりと立ち上がり、再びイシャールに剣を構えた。
「いいのか? 今から二対一で戦ってもいいんだぞ?」
「おまえとはあくまで俺一人で戦う!」
サージュはイシャールに斬りこんだ。
「フッ」
イシャールも鎌でサージュに斬りかかる。
剣と鎌がぶつかった。
イシャールの鎌がサージュを襲う。
イシャールの攻撃にサージュも対抗していく。
それでもイシャールの攻撃に反撃するチャンスがサージュにはなかった。
イシャールはサージュの剣をはじき飛ばした。
サージュの剣が後ろに吹き飛ばされた。
イシャールは鎌から闇の球を放った。
闇の球はサージュに当たり、サージュを後方に吹き飛ばした。
「うう!?」
「サージュ!?」
「どうした、これまでなのか?」
「まだだ……まだ、終わらない!」
サージュは起き上がりつつ言った。
近くに落ちていた剣を取ってサージュは立ち上がる。
「フッ、そう来なくてはな。しかし、いささか残念な知らせがある。私はこれでもいそがしい身でね。おまえたちの相手をしている時間はもうないのだ。その代わりおまえたちが戦える相手を用意してやろう」
イシャールの前に魔法陣が現れた。
その中から竜の戦士が現れた。
両手に曲刀を持っており、体は灰色をしていた。
「こいつは邪竜兵だ。私の代理としてこいつを置いていく」
イシャールは宙に浮かび上がった。
「待て!」
「フッフフフフ、私と戦いたいのならもっと腕を上げるのだな、サージュよ」
イシャールはサージュを見おろした。
「どこに行く気?」
「アスカニア(Ascania)だ。そこに私はいる。では、さらばだ」
そう言い残すと、イシャールは闇の中に消えた。
「アスカニア……」
サージュはつぶやいた。
「は!?」
邪竜兵がサージュにめがけて二本の曲刀を振りかざしてきた。
サージュはとっさに後ろによけた。
邪竜兵が持っている曲刀から冷たい風がサージュに伝わった。
サージュは邪竜兵に応戦した。
邪竜兵の攻撃は大振りで隙があった。サージュはその隙に剣を叩き込んだ。
「私も戦うわよ!」
イーシャは聖なる球を出した。
聖なる球ははじけ飛び、聖なる光があふれだした。
邪竜兵は大きくのけぞった。
「今だ!」
サージュは邪竜兵に渾身の一撃を叩き込んだ。
邪竜兵はダウンした。
「雷光よ!」
イーシャは雷光を邪竜兵に放った。
雷光は邪竜兵に直撃した。
邪竜兵はゆっくりと立ち上がった。
「まだ、来るか!」
邪竜兵は灰の息をサージュに吹き付けた。
サージュは水のバリアでそれを防いだ。
邪竜兵が右手の曲刀で斬りかかってきた。
サージュはそれを剣で受け止めた。
邪竜兵は左手の曲刀で横に薙ぎ払った。
サージュは後ろに下がって回避した。
邪竜兵は二刀流でサージュに襲いかかってきた。
サージュは水の斬撃を繰り出した。
サージュは邪竜兵を吹き飛ばした。
邪竜兵は倒れた。
「聖なる光よ!」
イーシャは聖なる光の柱を出現させた。
光の柱が邪竜兵を浄化していく。
サージュは倒れている邪竜兵にジャンプして剣を突き刺した。
サージュの剣が邪竜兵を貫いた。
邪竜兵は灰色の粒子を噴き上げて消えていった。
「やったわね、サージュ!」
「ああ」
サージュはけわしい表情をしていた。
「どうしたの?」
「いや、結局、俺はイシャールに勝てなかった」
「サージュ、今はイシャールの方が強いだけよ。きっとサージュならイシャールよりも強くなれるわ」
「そうだな。俺はもっと強くなりたい! イシャールに勝つためにも!」
その時塔から轟音が走った。
「魔法の塔が消えるんだ」
塔が消えた後、二人は森の丘に立っていた。
「戻ってきたわね」
イーシャは周囲を見わたした。
「今日はもうトリデントの宿に戻りましょう。私疲れたわ」
「そうだな」