イシャールの塔
サージュとイーシャはトリデントの宿に泊まった。
トリデントの中では戦後処理が行われていた。
戦争が終結したため、トリデントでは海上貿易と海運業が再び活発になり始めた。
サージュはベッドから降りて立ち上がると、部屋の窓に近づいた。
窓を開けて、陽光と新鮮な空気を味わう。
ドアがノックされた。
「サージュ、起きてる?」
「ああ」
イーシャがサージュの部屋にやってきた。
「サージュ、おはよう」
「おはよう」
イーシャはサージュの近くまで歩いてきた。
「イシャールが言っていたことが俺には気になるんだ」
「次の舞台?」
「そう、その次の舞台って何なのか、それはどこなのか?」
サージュは考え込んだ。
「まずは朝ごはんにしましょう? 今はわからないんだから、考えても仕方ないわ」
「……そうだな」
サージュとイーシャは朝食を取ることにした。
二人は朝食を終えると宿の外に出た。
「とりあえず、今後の予定としては、トリデントからターレント(Taarento)へ向かおうと思っている」
「ターレントに? じゃあ、海を渡るのね?」
「そうだ。トリデントの都からターレント行きの船が出ている。それに乗ろう」
「あれ? ねえ、サージュあれを見て!」
イーシャが指示した方向に塔が建っていた。
「あれは!?」
塔は小高い森の中に建っていた。
塔全体から魔力があふれていた。
「あんなところに塔なんてなかったはずだわ」
「あれは……イシャールの塔だ!」
「あれが?」
サージュは塔を凝視した。
サージュは手を握りしめた。
「あそこから、イシャールの存在を感じる」
「何か、邪悪な魔力を感じるわね。危険だわ」
「行こう、あの塔に」
サージュとイーシャはイシャールの塔に向かった。
二人は森を上へと歩き、イシャールの塔を目指した。
二人は塔の前で立ち止まった。
塔には入口らしきものが見当たらなかった。
「入口がないな」
「そうねうの。どうやって入るのかしら?」
塔の前をよく注意すると、魔法陣が描かれていた。
「見て、サージュ。魔法陣があるわ」
「本当だ。罠には見えないが……入ってみよう」
二人は魔法陣の中に足を踏み入れた。
「緊張するな」
「きゃっ!?」
「これは……」
すると魔法陣から足場が出て、二人を上へと運んでいった。
「上に上がっているわ」
「これで上に行くのか」
二人は足場に運ばれて、塔の上へと向かって行った。
「この塔の中はどうなってるんだろう?」
しばらくすると二人は塔の上に到着した。
「降りよう」
二人は魔法陣から降りて塔の上に立った。
「あそこに階段があるわ。あれが入口かしら?」
サージュは塔の上で不審なものを見つけた。
それは赤く染まっている部分だった。
赤い部分に近づいてみる。
サージュはしゃがんで触れた。
「これは……血だ」
「血? こんなところにどうして血が?」
「わからない。何か流血ざたでもあったんだろうか……?」
サージュは血に染まった部分を険しく見つめた。
「イシャール……ここでいったい何があったんだ?」
サージュはしばらくそこにとどまった。
「考えても無意味よ。塔の中に入りましょう」
「そうだな」
サージュは立ち上がり階段へと向かった。
「ここから、中に入れそうね」
イーシャは階段を見おろした。
二人は階段を降りて塔の中に入った。
塔の中に入ると、廊下に出くわした。
二人は中を歩いていく。
「行き止まりだ」
「どうしたのかしら?」
「どうやって先に進むんだ?」
二人は迷った。
するとその時扉が開いた。
「! あいたわよ」
「何だろう? この箱型のものは?」
二人は警戒した。
二人が身構えたのはエレベーターであった。
「中に入れるみたいだ。入れば下に行けるのか?」
「どうするの、サージュ?」
二人はエレベーターを見つめていたがやがて足を踏み出した。
「入ってみよう」
二人はエレベーターの中に入った。
扉は自動で閉まった。
エレベーターは動き出し、下方へと進んだ。
二人にとってエレベーターは初めての体験だった。
「何か浮かんでいるような気がする」
「なんだか、怖いわ。落ちないかしら?」
二人の不安を無視して、エレベーターは下の階へと向かった。
「確かに、下に向かっているようだ」
「どこまで行くのかしら?」
エレベーターがゆっくりと停止した。
また自動で、扉が開いた。
「出よう」
二人はエレベーターから外に出た。
二人の前には怪物がいた。
ライオンのような顔にヤギの顔がついた化け物が待ち構えていた。
「キマイラだ!」
「戦うしかなさそうね!」
二人は戦いに備えて武器を構えた。
キマイラは侵入者をその目でとらえた。
「俺が前に出る! イーシャは後ろから援護してくれ!」
「わかったわ!」
サージュはキマイラの前に立った。
キマイラも立ち上がり、大きな姿勢を示した。
威風堂々たる体躯をしていた。
キマイラの咆哮が響き渡る。
キマイラは獲物を見る目でサージュを見た。
キマイラはサージュに向かって跳びかかった。
サージュはくるりと回避した。
キマイラの鋭い牙が光った。
キマイラは再度サージュに向かいなおった。
徐々に近づいてくる。
サージュはキマイラを引き付けた。
キマイラは口から炎の息をはいた。
サージュは水のバリアを張り、炎の息を防いだ。
「雷よ! 落雷!」
イーシャが雷の魔法を唱えた。
雷がキマイラを打ちつける。
「今よ、サージュ!」
サージュはキマイラがひるんだ隙に剣で斬りつけた。
キマイラはうめき声を上げた。
キマイラはヤギの口が紫色の息をはいた。
これは毒の息だ。
サージュは毒の息を横にそれてかわした。
キマイラはサージュに執拗に跳びかかった。
鋭い牙でサージュにかみつこうとする。
サージュは水を剣に収束した。
そしてキマイラを水の斬撃で吹き飛ばした。
キマイラは地すべりを起こして倒れこんだ。
すかさず、イーシャが魔法で追い打ちする。
「水の槍よ! 水泡槍!」
イーシャはワンドから水の槍をキマイラに発射した。
イーシャの魔法はキマイラに直撃した。
キマイラはゆっくり起き上がった。
キマイラは駆け出し、サージュに接近してきた。
キマイラがサージュにかみつこうとする。
サージュは足を使って巧みにかわした。
キマイラは前足の鋭い爪で攻撃してきた。
サージュはそれをかわし、剣でヤギの口を突き刺した。
キマイラは大きく叫んだ。
サージュはヤギの頭を潰した。
「水よ! 水泡弾!」
イーシャは水の魔法を唱えた。
水の弾をキマイラに命中させる。
水の弾ははじけ飛び、大きな衝撃を起こした。
サージュはその隙を見逃さなかった。
剣でキマイラに斬りつける。
キマイラは口に炎をともした。
キマイラは口から炎の息をはいた。
サージュは横によけた。
キマイラは突進してきた。
サージュは大きく跳びのいた。
サージュはキマイラに水の刃の剣「水波斬」で攻撃した。
キマイラは悲鳴を上げた。
キマイラは動かなくなり、息絶えた。
キマイラの体は赤い粒子と化して消滅した。
「倒したな」
「やったわね!」
部屋から魔法陣が出現した。




