不死
サージュとイーシャはガストンに見送られながらダイクの村を後にした。
「今回の毒の雨の事件、解決できたのはおぬしらのおかげだ。村の者を代表して礼を言う」
サージュとイーシャは更にガストンから食料をもらった。
「道中危険もあろうが、元気でな」
二人はガストンとのあいさつを済ませると、ダイクから街道へと出て行った。
それから数日後――
サージュとイーシャは森の中の街道を北へと歩いていた。
二人の前に人相の悪い三人の男たちが立ちふさがった。
二人が先に行けないように妨害している。
緊張が走った。
「へっへっへ」
「お二人さんよお、ここを通りたくば通行税を払ってもらうぜ」
「ただで通れると思うなよ」
どうやら男たちはカネ目当てで街道に居座っているらしい。
「いつからそんな税金ができたわけ!? ふざけないで!」
イーシャは憤慨した。
「おとなしく払った方が身のためだぜえ?」
「さあ、持っているデナリオン銀貨を全部よこしな」
「潔く出せば命は助けてやるよ」
三人の男たちはナイフを取り出し、サージュとイーシャを脅迫してきた。
「おまえたちに渡すカネはない!」
サージュは剣を抜いた。
「バカな奴だな。そんなに死にたいのか?」
「サージュ、ここは私に任せて!」
イーシャはワンドを取り出した。
「なんだあ? 俺たちとやる気かよ?」
「けけけ、じゃあ死ぬしかないな」
「雷光よ!」
イーシャは三人の男たちに雷光を放った。
三人の男たち雷光の中に閉じ込められた。
「うおおおおおおお!?」
男たちは叫び倒れた。
「フン、どう? 私たちを甘く見ないで」
三人の男たちはイーシャの魔法で失神した。
「こんな奴らがいるのか。道中、気をつけなければいけないな」
「そうね。盗賊のやからが出るって聞いていたけれど」
盗賊は決して珍しい存在ではなかった。
街道や森の中に出没して、カネや金目のものを奪っている。
主に都市国家として出発する都が多く、街道の安全や治安にまで手が回らないのが実情だった。
さらにモンスターが徘徊しているのだ。
旅は危険と隣り合わせで会った。
サージュは剣をしまった。
「こいつらがのびているあいだに先に進もう」
「そうね」
サージュとイーシャは街道を先に進んだ。
上から雨水が落ちてきた。
ぽたぽたとたれて、サージュとイーシャを濡らしていく。
「雨が降ってきたみたいね」
そうして本格的な雨になった。
上空から雨水が降ってくる。
「どこか、雨宿りできる場所を探そう!」
サージュとイーシャは雨から避難できそうなところを探した。
すると、森の中に古城があった。
「あの古城に行って雨宿りしよう」
「あの古城なら雨をしのげそうね」
サージュとイーシャは古城に足を踏み入れた。
「ふう、ここまでくれば大丈夫ね」
「少し休もうか」
「そうね。私も疲れちゃった」
城の門は空いていた。
この城はどうやら放棄された後のようだった。
誰も手入れをしている跡がなかった。
サージュとイーシャは階段に腰かけた。
「なんだか打ち捨てられた城みたいね。誰も住んでないみたい」
イーシャが城の中を見わたした。
「誰も住んでないなら、ここに入ってもいいだろ」
城の床にはヒビが入っているところもあった。
二人は安心して休むことにした。
その時。
「我が城に何の用だ?」
ふと声が響いた。
「何!?」
イーシャが立ち上がった。
「我の城に何をしに来た人間よ」
「どこか別のところから話をしてるようだ」
サージュは立ち上がり、城の中へと歩いて行った。
城の大広間に、邪悪な存在が立っていた。
それは黒い鎧を着て、手にはランスを持っている。
「我はこの城の主ファントス(Phantos)。我は不死の王なり。人間どもよ、ここはきさまらが来ていい場所ではない」
「じゃあ、ここから出て行けばいいのか?」
「フッハハハハハハ! もはや手遅れだ! この城に足を踏み入れた以上、きさまらの命をいただく!」
サージュは剣を構えた。
二人とも臨戦態勢を取る。
「死ね、人間!」
ファントスはランスでサージュに突きを繰り出した。
「くっ!? やりずらい!」
ファントスはランスでサージュを打撃した。
サージュはガードしたが、手にしびれが残った。
ファントスのランス攻撃は強力だった。
ファントスはランスに魔力を集中し、それを突き出して放った。
鋭い突きがサージュに迫る。
サージュは横に跳びのきやり過ごす。
この突きはイーシャにまで及んだ。
「きゃっ!?」
イーシャも横にそれて回避した。
ファントスの力は強かった。
彼は強烈な打撃力を持っていた。
「イナズマよ!」
イーシャはファントスにイナズマを放った。
「フン!」
ファントスは左手の盾でイナズマを防いだ。
そこにサージュがファントスに斬りかかった。ファントスがランスでガードする。
サージュはすばやく、剣で横なぎに斬り払った。
「ぐおおおお!?」
サージュの攻撃がファントスに当たった。
ファントスはランスでサージュに叩きつけてきた。
サージュは横に跳びのいた。
それから反撃を行った。
サージュの攻撃はファントスの盾で防がれた。
ファントスはランスで突いてきた。
サージュはランスを剣で受け流す。
サージュは斬撃を放った。
ファントスはランスで打撃した。
サージュの斬撃とファントスの打撃がぶつかり合った。
双方、硬直状態に陥った。
しかし、ファントスが力でサージュの剣を払いのけた。
サージュよりファントスの方が力が強かった。
サージュは力勝負では、不利だと悟った。
ファントスは盾で打ちつけてきた。
サージュは剣でやり過ごした。
続けて、ファントスは鋭い突きをサージュに出した。
サージュは大きく後ろにバックステップした。
「聖なる光よ!」
イーシャが白い球をファントスに放った。
白い球はファントスを包囲し、レーザーを発射した。
「ぐおあああああ!?」
「サージュ、聖なる攻撃が弱点よ!」
イーシャがサージュの後ろから言い放った。
「わかった!」
サージュは剣に聖なるオーラをまとわせて、ファントスに斬りつけた。
ファントスはランスでガードした。
聖なる刃がファントスを押しのけていく。
「バカな!? 我は王なのだ! 不死の王なのだ! きさまらごときに押されるとは!?」
サージュは連続で攻撃を加えていく。
「おのれ!」
ファントスはランスでサージュの攻撃をしのいだ。
不利を悟ったファントスは後方へ退いた。
「王よ、ここは我らにお任せあれ」
「むう!?」
サージュとファントスとのあいだに三人の魔道士が浮遊して現れた。
「なんだ!?」
「魔道士?」
「次は我々が相手だ」
「我らは闇の呪法を探究せし者」
「おまえたちには我々につき合ってもらう」
三人の魔道士は魔法陣を展開した。
「これは!?」
「我らの真の城に招待しよう」
サージュとイーシャは光の中に消えていった。
気が付いたとき、サージュは城の外にいた。
城の周りは森で囲まれていた。
城は隅々まで手入れが施されていた。
まるで新しい城のようだ。
「ここは……」
サージュはここがどこだか気になった。
どこかに飛ばされたのだろうか。
「イーシャ!」
サージュはイーシャを探した。
イーシャはサージュの近くに倒れていた。
「ん……あれ、サージュ?」
イーシャが目を覚ました。立ち上がる。
「ここ、どこ?」
「わからない。さっきまでいた所とは違うようだ」
「ほんとね。城が新しいわ。ここはもしかしたら亜空間なんじゃないかしら?」
「亜空間……魔法で作り出した虚構の世界か……」
サージュは城を見つめた。
「俺たちはあの魔道士たちからここに連れてこられたんだ」
「どうすれば、元の世界に脱出できると思う?」
「あの魔道士たちを倒せば脱出できると思う」
「とりあえず、この城の中に入ってみるしかないわね」
「ああ」
サージュとイーシャは城の門を開けた。
二人は城の中に入った。
「ずいぶんきれい。あの古城とぜんぜん違う」
城の内部はすみずみまで管理され、掃除されていた。
まるで新品の城のようだ。
「特に敵の気配は感じない」
サージュたちは城の階段を登り、廊下を進んでいった。
サージュはいつ敵と遭遇してもいいように剣を持っていた。
サージュとイーシャは王の間へと入った。
「クックック、ようこそ」
「ここが我らの城だ、歓迎しよう」
そこには二人の魔道士がいた。
「おまえたちは何者だ?」
「我らは人間から不死になったもの」
「我らは闇の呪法により不死へと至った」
「元人間ですって!?」
イーシャが驚きの声を上げた。
「我はダーリク(Daarik)」
「我はガルス(Galus)」
「王に代わって我らが相手をしよう」
「ククク、不死の力を見せてやろう」
彼らはとっくに人間をやめていた。
サージュはダーリクと、イーシャはガルスと対峙した。
二人の魔道士の顔がどくろになり、体は骨がむき出しになった。
「行くぞ!」
「行くわよ!」
戦いが始まった。
サージュはダーリクに斬りかかった。
ダーリクは杖で防いだ。
ダーリクはサージュに冷たい息を吹きかけてきた。
「!? 冷たい!?」
「ククク、これが人ならざる者の力よ」
ダーリクからサージュは離れた。
「死ぬがいい!」
ダーリクはサージュに氷のつららを降らせた。
サージュはよけた。
ダーリクは凍結の魔法を唱えた。
「凍れ!」
凍てつく吹雪がサージュに吹き付ける。
サージュの周りに氷雪がまとわりついてきた。
サージュは水のバリアを周囲に展開した。
ダーリクは氷の結晶を弾にして撃ちだした。
「!? 足が重い!?」
サージュは凍った足に力を入れて跳びのいた。
サージュは積極的にダーリクを攻撃した。
接近戦に持ち込む。
サージュはダーリクの体が異常に冷たいことに気づいた。
ダーリクは杖先に氷の刃を作り、杖を槍に変えて応戦してきた。
サージュは接近戦に持ち込んでダーリクの魔法を封じた。
サージュの剣がダーリクを攻める。
「くっ、こざかしいわ!」
サージュはダーリクに執拗に接近戦を仕掛けた。
ダーリクは後退した。
「逃がすか!」
サージュは剣でダーリクを突き刺した。
「ぐうあああああああ!?」
ダーリクは聖なる刃に貫かれ絶命した。
一方、イーシャとガルスは共に魔法攻撃で火花を散らしていた。
イーシャの炎とガルスの氷がぶつかり合う。
「死ぬがいい、小娘!」
ガルスはイーシャの上に大きな氷の球を落とした。
イーシャは特大の火球で氷を迎撃した。
イーシャはガルスの足元から炎を噴き上げさせた。
「ぐあ!?」
更にイーシャは炎の槍をいくつもガルスに命中させた。
「これで最後よ!」
イーシャはワンドから大きな炎の波動を撃った。
ガルスは杖を構えたが防ぎきれなかった。
炎の波がガルスに直撃した。
「おのれ……」
イーシャは聖なる光を起こした。
「ぐぎゃああああああ!?」
聖なる光は不浄なガルスを消し去った。
決着はついた。
二人の魔道士は死んだ。
「イーシャ、大丈夫か?」
「サージュこそ」
サージュとイーシャは合流した。
その時、城に振動が走った。
「なんだ!?」
「亜空間が消えていくんだわ」
サージュとイーシャはまばゆい光に包まれた。
再び気づいたとき、サージュは古城の王の間に戻っていた。
「ここは、古城だ。戻ってきたのか」
隣にはイーシャがいた。
「ほう……きさまらが戻ってきたということはダーリクとガルスは死んだようじゃな」
三人目の魔道士が言った。
「生きて戻ってきたのか。どうやらおまえたちとは我自らの手で決着をつけるしかないようだな」
ファントスがランスで突いてきた。
サージュは聖なる力で応戦した。
ファントスは突き、打撃し、打ちつけてくる。
サージュはファントスのランスの隙を見つけて斬りつけた。
ファントスの盾はサージュの剣で斬り裂かれた。
さらに斬撃はファントスにまで及んだ。
「ぐわっ!?」
ファントスがのけぞった。
それを逃さず、サージュはファントスの首をはね飛ばした。
ファントスは倒れた。
「クックック、王も倒したか。だがその王も所詮は道化にすぎん」
「道化?」
サージュは三番目の魔道士に向かいなおった。
「その通りよ。我らがたばかって王を不死の領域に連れ込んだのだ。コマとしては役に立たなかったがな」
「あとはあなた一人よ! 覚悟しなさい!」
イーシャが強く言い放った。
「それはどうかのう。クックック、これぞ不死よ!」
三人目の魔道士の姿が変貌した。
どくろの頭、骨の体、蛇の尾を持っていた。
「我はヴォルザム(Wordzam)!」
ヴォルザムは長い尾でイーシャに巻き付いた。
「きゃあああああ!?」
「イーシャ!」
イーシャはヴォルザムに締め付けられた。
サージュはイーシャを助けるためにヴォルザムに斬りかかった。
「イーシャを離せ!」
サージュの斬撃がヴォルザムに打撃を与えた。
イーシャがヴォルザムの尾から解放された。
「イーシャ、大丈夫か?」
「え、ええ。それよりも、あいつの体が異常に冷たかったわ」
「死ねえい!」
ヴォルザムは長い尾でサージュを打ちつけた。
「うわっ!?」
サージュははじき飛ばされた。
ヴォルザムは冷たい息をはいた。
凍てつく冷気が二人の体温を奪う。
イーシャは炎の魔法を放ち、冷気を相殺した。
ヴォルザムは氷のつららを斜め上から放った。
サージュは横によけた。
そして急接近して、剣を振り下ろす。
「ぐあああああああ!?」
ヴォルザムの体が斜めに切断された。
「サージュ、離れて!」
イーシャに言われてサージュはヴォルザムから離れた。
「炎よ!」
ヴォルザムの下から炎が噴出した。
「ぐぎゃあああああ!?」
サージュはヴォルザムの首を斬りつけた。
ヴォルザムは倒れた。
ヴォルザムの体は白い粒子をまき散らして消えていった。
「勝ったわね」
「ああ、雨宿りしたかっただけなのにとんだ目にあったよ」
「私もそう思うわ」
「ここで休むのはやめよう。先に行こうか」
「そうね。こんな所じゃ宿営したくないわ」
サージュとイーシャは古城を去り、街道に戻った。
雨は上がっていた。