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海の子供たち   作者: Siberius
竜との邂逅編
11/65

タイラント

サージュとイーシャはパルムを去り、北へと続く街道を歩いていた。

ここ数日は野宿の日々だった。

サージュは宿の寝心地が恋しかった。

サージュとイーシャは川のそばで休むことにした。

そのにはすでに先客がいた。

「こんにちは」

「ん? こんにちは」

サージュは先客の男性に声をかけた。

彼は大きな剣を持ち、川の前に座っていた。

彼は身長は大きく巨体だった。

筋骨たくましい体つきをしている。

「隣に座ってもよろしいでしょうか?」

「うむ。かまわんぞ」

サージュが男性に尋ねた。

「じゃあ、イーシャ、ここで休もうか」

「ええ」

サージュとイーシャは川のほとりに座った。

のどかできれいな川がサージュたちの前を流れていた。

「おぬしらは旅の者か?」

男性が口を開いた。

「そうです。いろんな町を訪れています」

「この先にはダイク(Deik)の村がある。もしよろしければ寄っていくといい。周りのは田畑しかないが、いい村だ」

「ダイクの村ですか? そうですね。イーシャ、寄ってみないか?」

「いいわね、そうしましょう」

「この川はダイクの村の中まで流れている。この川に沿って行けばダイクにたどり着ける」

「ありがとうございます。ところで、あなたは?」

「わしはガストン(Gaston)。ダイクの村の剣士だ。おぬしらは?」

「俺はサージュです」

「私はイーシャと申します」

「サージュにイーシャか。わしには敬語は不要だ。普通に話すがいい」

「わかったよ、ガストン」

「ところでおぬしも剣を持つ者だ。ここはひとつ、腕試しでもしてみようではないか」

「いいよ」

サージュとガストンは立ち上がり、間合いを取って剣を構えた。

サージュから見るとガストンの巨体は圧倒的だった。

「うむ。よし。ではかかってこい」

ガストンは大剣を構えた。

サージュはガストンに斬りこんだ。

ガストンは軽々とサージュの剣を受け止めた。

サージュはガストンに攻め込んでいった。

ガストンは徐々に後ろに下がりながら、サージュの剣を受け止めた。

「なかなかいい剣筋だ」

ガストンが剣に力を入れ始めた。

サージュの側に圧力がかかってくる。

「くっ!?」

「では今度はこちらから行くぞ!」

ガストンが力を入れて剣を振るった。

ガストンの一撃は重かった。

サージュはガストンのパワーに押された。

一撃の重みはサージュよりも上だった。

サージュはスピードでガストンの剣に対抗した。

「むっ、やる!」

二人の剣の刃が交差する。

二人はそのまま膠着状態になった。

「ここまでとしようか」

ガストンは剣を収めた。

サージュも剣をさやにしまった。

「強いな、ガストン。力の重みが違いすぎる」

「おぬしこそいい腕をしている。見事だ」

そんな二人のやり取りをイーシャはずっと見ていた。

「ねえ、そろそろ出発しない?」

「そうだな、そうしよう」

「夜になる前にダイクに入りたいわ」

「ではダイクまでわしが案内しよう。なに、心配せずとも夕方には着く」

サージュとイーシャはガストンに案内されて、ダイクの村へと向かった。



闇の魔道士ウンベルト(Umberto)は塔の中で水晶球をのぞきこんでいた。

「闇の魔法の力を世に示さなくてはならん。闇がすべてを呑み込み、広がっていくのだ。今こそ、闇の力を見せる時じゃ。クックック」

ウンベルトは台座に置かれた水晶球に左手を添えた。

ウンベルトの右手には木の杖があった。

「儀式はすでに終えた。闇の世が実現する日は近い。闇こそが正統なものとして君臨するのじゃ」

ウンベルトは妖しく水晶球を見つめていた。


「ついたぞ。ここがダイクだ」

サージュたちはダイクの村に到着した。

サージュとイーシャの前には簡素な家に畑、庭があった。

「そこが宿だ。旅する者を暖かく迎えてくれるだろう」

「ありがとう、ガストン」

サージュはガストンに例を述べた。

「何、礼など無用だ。特に目立ったものもないが、ゆっくりと休むがいい。ではわしは自分の家に帰るとしよう」

そう言うとガストンは去っていった。

サージュとイーシャは宿に入り、部屋を取った。

「今夜は野宿せずに眠れるわね。よかったわ」

「そうだな。ガストンが道案内をしてくれて助かった」

「サージュ、夕食にしましょう」

二人は宿で夕食を取った。

その後、各自の部屋で休んだ。

そうして次の日を迎えた。



次の日――

あいにくと天気は晴れなかった。

朝から雨が降っていた。

空は灰色に染まっていた。

「おはよう、サージュ」

イーシャがサージュの部屋にやってきた。

「おはよう、イーシャ」

「今日は雨ね。一日中止みそうもないわ」

「雨が降っているのか。嫌な天気だな」

サージュは窓から外を眺めた。

「ん!?」

サージュは雨に不信感を覚えた。

何かおかしい。

「どうしたの、サージュ?」

「これは!?」

サージュはイーシャに答えずに宿の外に出た。

サージュの体に雨が当たる。

サージュは両手で雨水に触れた。

「これは、ただの雨じゃないぞ!?」

「何? どういうこと?」

「これは、毒の雨だ!」

「毒の雨!? どうしてそんなものが!?」

イーシャが驚きの声を上げた。

「今はまだ毒性が強くないが、それが増したら猛毒になる! ガストンは!?」

「おお、おぬしらも外に出ていたのか!?」

そこにガストンが走ってやってきた。

彼は村中を駆けてきたようだ。

「ガストン! これは毒の雨だ! 普通じゃない!」

「わしも今朝起きてから気づいたところだ! 不浄な雨が降っているとな! とにかく村人には外に出るなと言っておいた」

「ねえ、この雨が普通じゃないなら自然に止むこともないんじゃない?」

「そうだな。逆に言えば、こんな毒の雨を降らせている何かがあるはずだ」

「このまま毒の雨が降り続けたら、田畑の農作物に甚大な被害が出る! 何とかしなくては……」

ガストンは途方に暮れた。

「何が原因なのかしら?」

状況は一刻の猶予もなかった。

「あれは……」

サージュは丘の上に視線を移した。

「サージュ?」

「どうしたのだ?」

サージュの目は何か歪曲したものを捉えた。

「あそこに何かある」

「それは何なの?」

「ぼやけていて何かわからない。おそらく塔だと思う」

「塔だと? あの丘の上にはそんなものはなかったはずだが……」

「空間を歪曲させてその姿を隠しているんだ。何かがおかしい。ただ、邪悪な魔力を感じる」

サージュは歪曲した空間を直視した。

「あそこに行ってみよう!」

「わかったわ」

「うむ、わしも行くぞ!」

サージュ、イーシャ、ガストンの三人は丘の上を目指した。



三人は空間の歪みがある場所までやってきた。

「本当にここなのか? わしの目には何も見えんが?」

「どうするの、サージュ?」

サージュは剣を抜き構えた。

「こうするんだ!」

サージュは剣を思いっきり振りかぶった。

サージュの一撃が歪曲した空間に当たった。

空間の歪みはガラスが割れるように破裂した。

そして一本の塔がその姿を現した。

「おお! あったぞ! 塔だ!」

ガストンは大声を出して驚いた。

「こんなものが隠されていたなんて……」

「入口がある。入ろう」



ウンベルトの間にて。

「何!? バカな!? 空間の歪曲を見破られたというのか!? いったい何奴じゃ!?」

ウンベルトは驚愕した。

この塔は魔法でその存在を巧妙に隠していたのだが……

「塔の姿が明るみに出てしまったのう……しかも何者かがわしの塔に侵入したようじゃな……」

ウンベルトは水晶球に手をかざした。

「いったい何奴じゃ?」

水晶球に侵入者の姿を映し出させる。

「小僧に、小娘、大男だと? こんな奴らにわしの魔法が破られたというのか……ええい、忌々しい奴らめ! 奴らは階段を上に登ってきよる。ここに来るであろうな」



サージュたちは塔の中の螺旋階段を上に上がっていった。

「いったい、どこまでつながっているんだ?」

サージュは最上階にまで到達した。

そこは開けた場所だった。

そこに老人の魔道士がいた。

右手には木の杖を持っていた。

「小僧ども、よくここまで来れたものじゃな。このわしの魔法を見破るとは」

「おまえが毒の雨を降らせているのか?」

「フォッフォッフォ! その通りよ。このわしが毒の雨を降らせているのだ」

「では今すぐこの雨を止めろ!」

ガストンが剣を取り出した。

「どうしてこんなことをするの!?」

「フォッフォッフォ! すべては闇が世を支配するためじゃ。この雨は闇の祝福よ」

「なら、おまえを倒してこの雨を止める!」

サージュが言った。

「愚かな。きさまらにわしを止めることなどできぬ! ここまで来た以上、生かしては返さんぞ。闇の魔法の力の前にひざまずくがいい!」

ウンベルトは魔法の球を作り出し、三人に向けて飛ばした。

サージュとガストンは剣で防ぎ、イーシャは防壁を張った。

「くらうがいい!」

ウンベルトの杖から、闇の蛇が現れ、三人を取り巻いた。

蛇の目が光り、闇の爆発が起こった。

「うわああああ!?」

「うおおおおおお!?」

「きゃあああああ!?」

三人は悲鳴を上げた。

サージュは蛇の首を剣で斬り落とした。

闇の蛇は消えた。

「災いをもたらした咎人よ! その罪、その命で支払ってもらうぞ!」

ガストンが剣でウンベルトを斬りつけた。

しかし、ウンベルトは闇の魔力でガストンの剣を平然と受け止めた。

「フン! 何か言ったかのう?」

ウンベルトはガストンに闇のいかずちを放った。

「ぐあああああああ!?」

ガストンは闇のいかずちをくらった。

ウンベルトは魔法の球でガストンを吹き飛ばした。

ウンベルトの攻撃が続く。

ウンベルトは魔弾を連発してきた。

魔弾はサージュとイーシャを襲った。

サージュは剣で魔弾をはじいた。

イーシャは光の球で迎撃した。

「これはどう?」

イーシャはワンドからイナズマを放った。

イナズマは正確にウンベルトを狙う。

「その程度か!」

ウンベルトは左手でイナズマを受け止め、無力化させた。

「くらえ!」

サージュはウンベルトに斬りつけた。

ウンベルトは杖で防御した。

サージュは海の波動を剣から放った。

「ぐおおおおおお!?」

ウンベルトは防御したまま壁に吹き飛ばされた。

「おのれ! 許さんぞ!」

ウンベルトは杖をつかんで立ち上がった。

ウンベルトは杖でサージュを打撃してきた。

ウンベルトの「スタン・ブロウ」である。

ウンベルトの攻撃には大きな衝撃が伴っていた。

「うわっ!?」

サージュは剣で打撃を受け止めたものの、押された。

しかし、サージュは踏みとどまり、ウンベルトの杖を切断した。

「なっ!?」

ウンベルトは瞬間移動で後方に下がった。

「クククク……よもやここまでやるとは思いなんだぞ。このわしを追いつめるとはな。だが、これで終わりだと思うな! 闇の魔法の真髄を見せてやろう!」

ウンベルトは手を高く掲げた。

「なんだ!?」

「何!?」

「クックック、いでよ!」

ウンベルトの背後に魔法陣が現れた。

その中から竜の影が姿を見せる。

現れた竜は紫色で、二足で立っていた。

「竜か!?」

「召喚したの!?」

「フハハハハハ! これはタイラント! さあ、その力を思い知るがいい!」

すると、タイラントは口に炎を宿し、ウンベルトにはきつけた。

「ぐあああああああああ!? な、なぜじゃ……」

ウンベルトはタイラントの炎によって火だるまになった。

そして息絶えて、ウンベルトは死んだ。

タイラントは大きなうなり声を上げた。

「くっ! 召喚者にも手に負えない怪物か!」

「どうやら奴は自分で自らの破滅を招いたようだな」

ガストンが前方に出て言った。

「戦いしかないわね!」

イーシャが雷の魔法でタイラントを攻撃した。

雷がタイラントに降り注ぐ。

しかし、あまりダメージを与えているようには見えなかった。

ガストンが剣でタイラントを攻撃した。

続けてサージュがタイラントに攻撃した。

タイラントは口に炎をたくわえた。

「ガストン! 炎の息が来る!」

「むう!?」

タイラントは口から燃え盛る炎をはいた。

サージュとガストンはとっさに左右によけた。

イーシャは水のバリアを張って防いだ。

サージュはタイラントを攻撃した。

タイラントは豪腕で薙ぎ払った。

サージュはすばやくかわし、タイラントに斬りつけた。

今度はタイラントは豪腕で押しつぶそうとしてきた。

サージュは後方に跳びのいた。

ガストンは再びタイラントを剣で打ちつけた。

「ぬう! 何という耐久力だ!?」

タイラントはガストンを右腕で払いのけた。

ガストンは吹き飛ばされた。

タイラントは倒れたガストンめがけて、炎の息をはいた。

「まずい!」

サージュは水のバリアを張って、ガストンの前に出た。

燃え盛る炎の息吹がサージュを通り過ぎた。

「くっ、強い!?」

タイラントはまた炎の息をはこうとしてきた。

「氷の槍よ! 氷結槍!」

イーシャは氷の魔法を唱えた。

氷の槍がタイラントの口元に届いた。

そこのタイラントの炎と氷がぶつかり、爆発が起きた。

タイラントは苦しみの声を上げた。

「今だ!」

サージュは海の斬撃でタイラントを斬りつけた。

「まだまだ!」

サージュは連続で攻撃した。

タイラントは検圧にのけぞった。

そこにガストンが爆裂の一撃を繰り出した。

剣から爆発が起きて、タイラントを吹き飛ばす。

イーシャは大きな水の球をタイラントに放った。

タイラントはのけぞった。

サージュとガストンはいったん後方に下がった。

タイラントは三人をまとめて焼きつくそうと、炎を吹き付けた。

「はあああああ!」

サージュは海の波を放った。

炎と水がぶつかり、衝撃を巻き起こしていく。

タイラントはさらに炎の息を出した。

サージュは水の槍を形成すると、それをタイラントの口に投げつけた。

再び炎と水がぶつかり、爆発した。

タイラントは口を開けて悲鳴を上げた。

「この隙を逃しはしない!」

サージュはタイラントに接近し、口元に剣を突き付けた。

タイラントは絶叫を上げて倒れた。

タイラントは紫の粒子と化して消滅した。

「やったわね、サージュ!」

「うむ! 見事だ!」

「二人の援護のおかげさ」

突然、塔に振動が走った。

「これは何だ!?」

「この塔が消えようとしているんだ」

ウンベルトの塔はグラグラ動いて消滅していった。

塔が消えた後、三人は丘の上に残された。

「見て、雨がやんでいるわ!」

イーシャは上空を見た。

雨雲は消え去り、空から陽光が降り注いだ。

「毒の雨は消えた、か」

「今回の一大事、おぬしらがいなければ止められなかった。協力を感謝する」

ガストンがサージュとイーシャに言った。

「それでは、村に戻ることにしようか」

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