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三題噺もどき

スマホの奥から

作者: 狐彪

三題噺もどき―ひゃくにじゅうご。

 お題:携帯電話・中毒・涙




「――んぁ…」

 暗い部屋の中で、ふいに目が覚めた。

 いつのまにか、布団の上にうつぶせで眠ってしまっていたようだ。

 私は、あまりベットは好まないので、薄っぺらな煎餅布団を使っている。

 そのおかげで、腰は悲鳴を上げたりするが、これは枕が悪いせいもあるので、何とも言えないところではある。

 マットレスとかにすれば、多少変わりはするのだろうが…そこまでお金をかけたくもない上、今はこれに慣れてしまったので、変える気はない。

「……、」

 それより…今何時だ。

 部屋には遮光カーテンをしているため、外の光が入らない。

 窓とピッタリサイズのものを使っているせいで、カーテンを開けない事には、この部屋に陽光は入らない。

「……、」

 たしか、スマホゲームのイベントをやっていて、今日が最終日で、寝ずにギリギリまでやっていたのだが―。

 一応は終わって、そのまま寝落ちした感じだろうか。

 いつのまにか、ほんの少し遠いところに置かれていた携帯電話が静かに光っている。

「……あれ?」

 時間経過で自動的に電源は落ちるようにしているはずなのだが…そこまで寝ていなかったのだろうか。

 ほんの数秒目を閉じて、意識が飛んで、目が覚めて―という方が正しいのかもしれない。

 ま、時間を確認すれば済む話なので、うつぶせ上体のまま腕を伸ばし、携帯電話を手に取る。

「……、」

 画面を視界に入れると、寝る直前まで見ていたゲーム画面が開かれていた。

 ゲームを閉じないままに放置していたから、ロックがかからなかったのだろうか…それならそれで、簡易的なロックがかかるようになっているのだが。

 ま、終わったことを気にしても仕方がないか。

「……、」

 寝ぼけ眼で時間をちらりと確認すると、夜中の二時…。

 このゲームのイベントが終わったのが、24時59分のはずだから、そこから少し携帯をいじっていたとしても、一時間以上は経っているはず。

 ん?結構寝てはいたようだ。

 …まぁ、いいか。

 本来起きる時間は、朝7時なので、もう一度寝直す…というか、今度こそちゃんと睡眠の姿勢をとることにしよう。

「……、」

 しかし、なぜ携帯は開いたままだったのか…無駄に充電を消費するのは嫌いなので、そうならないように色々と設定をしているのだが…。

 ずっと指か何かが、触っていたのだろうか…しかし若干手に届かないところにあったので、それはないはずなのだが。

 それか起きた拍子に投げたのか…それなら納得がいかないこともない。

「……、」

 気にはすまいと思いはしたが、やけに気になる。

 携帯の故障か何かだろうか…だとしたら相当困るのだが。

 これがないと生活に支障をきたす。

 スマホ中毒…と間ではいかないが、かなりこの文明の利器に頼っているところはあるのだ。

 朝のアラーム然り、日々の予定然り、他人との連絡然り…。

「……、」

 ん…中毒と言われても仕方ないのかコレ…。

 あれの程度がよく分からない。

 しかし、今時これぐらい普通だろう。

 それより携帯の生存確認をしなくては。

 最悪故障していた場合、朝一でショップに行かなくてはならない。

「……、」

 そう思いながら、携帯の画面を開いたり、様々なアプリを開いたりと、無駄な抵抗をしてみる。

 …特に問題はない。

 気にしすぎだろうか。

「……、」

 そう言うことにしておくか。

 そろそろ本格的に睡魔に襲われそうになってきた。

 心持ち体が重いような気がする。

 起きてからずっとうつぶせでいたせいか、背中のあたりが、痛い気もするし、全身が、重だるい感じもする…なんだ…?

「っ――?

 違和感を感じ、体を仰向けに戻そうと、体を動かす―が、思うように動かない。

 背中に何か、重いものが、乗っているような、押さえつけられているような…座られてる…?

 なんだ…?

 なにが…

「!?」

 混乱し、状況が理解できないままいるところに、何かが、目の前で、動いた。

 視界の中には、携帯を握った私の手と、その先に暗闇が広がっている。

 その暗闇の、奥で、何かが

「―――

 ズル―と、腕が、伸びてきた。

 私の持つ携帯に、手を伸ばしてくる。

 まるで、返せと言わんばかりの勢いで。

「ひっ―――!!

 漏れた悲鳴はやけに大きく頭にひびいた。

 いつの間にか、恐怖により、ボロボロと涙がこぼれていた。

 目の前には、血の気の引いた真っ青な手が、携帯を握り、動かない。

 頭は混乱し続けている。

 視界がゆがみ、背中の痛みと、目の前の恐怖に、歯の根が合わない。

「、 、 、

 恐怖に支配された脳は、情報処理をあきらめ、意識を手放すことを選択した。


「―――んぁ…」

 ふいに目が覚める。

 真っ暗な寝室で、携帯が静かに光っていた。


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