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05

 休憩を終えると夕飯の買い出しに近所のスーパーに出かけた。昨日のカレーはほとんど残っていないので、今日は何か作らなければならない。


「新君、何食べたい?作ってみたい料理でも良いよ」

「料理初心者でも作れる簡単なもので…」


 簡単な料理ねぇ。うーん、私が作れて簡単なもの…。


「肉じゃがとかどう?」


 簡単な家庭料理の定番と言えば肉じゃがのような気がする。


「肉じゃがって簡単なの?」

「簡単だよー」


 カレーの翌日に肉じゃがだと食材が被るけど、まぁ細かいことは気にしない気にしない。

 冷蔵庫に残っている食材を思い出しながら、必要なものをかごに入れていく。肉じゃがに関係ない食材をかごに入れると、新君が不思議そうな顔をした。


「キノコも肉じゃがに入れるの?」

「キノコは味噌汁用。新君、夜ご飯を肉じゃがにしようと言ったって、肉じゃが以外にも作るものはあるんだよ。ご飯を炊いて、味噌汁を作って、できればサラダも用意したい。食材を買う時は、そこまで考えて買うんだよ。もっと言えば明日、明後日のことも考えて買えると主婦力が高くなるよ」


 新君に必要なのは主婦力ではなく吸血する覚悟だけど、私の説明に深く感心していた。多分スーパーで食材とか買ったことないんだろうな。相場のこととか、日持ちのしやすさとか、いろいろ話しながら買い物をしていたら、意外と時間がかかってしまった。

 家に帰ると早速夕食作りに取り掛かる。米の研ぎ方から教えなければならないので、簡単な料理とはいえ早めに始めた方が良いだろう。新君は真面目なことにメモを片手にふんふんと頷きながら私の説明を聞き、実践していた。

 炊飯器をセットして、味噌汁を作って肉じゃがを作り終えた頃には、2時間以上が経っていた。うん、やっぱり思ったより時間がかかった。

 はー疲れた、と思いながら料理をテーブルに並べて食べ始める。


「美味しい…」


 新君は自分が作った料理に感動しているようだ。うんうん、初めて作った料理だもんね、嬉しさもひとしおだろうね。

 私はちょっとだけ残っていたカレーを食べつつ、新君の様子に満足していた。今日一日でいろんなことを教えたので、保護者のような気分になっている。

 食後はお風呂の洗い方を説明して、お湯を溜めている間に新君が皿も洗ってくれるというのでありがたくお願いして、私はスマホで動画を見始めた。特にこれといって見たい動画があるわけではないので、おすすめとして表示されたものを流し見る。

 しばらくそうしてから、お風呂に入ってリビングに戻ると、新君はテレビを見ていた。ちょこんと隣に座り、パジャマのボタンを外して首筋を晒してみる。


「新君、血、吸う?」


 新君は勢いよく私のパジャマの襟元を寄せると、真剣な目でこう言った。


「ちょっと由奈さん!だから女性がそういうことはしちゃ駄目だってば!ただでさえ由奈さんは魅力的な女性なんだから、軽々しくそんなことしないで」

「あ、ハイ、ゴメンナサイ」


 魅力的な女性…そんなこと初めて言われた。ちょっと背中がむずがゆいような、嬉しいような気分になった。

 お風呂に向かう新君の背中を見つめながら、紳士だなぁと思った。いやヘタレなだけか?

 でも新君、吸血しないと帰れないんだよ?分かってる?

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