表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DARK TROOP  作者: 崩紫タケル
1/2

窃盗事件


高層ビルが立ち並び、情報通信技術が発達し、AIが必須となった生活の中で近未来の都市。

生活のほとんどにAIやコンピュータが自動車やドローンなどは目的地や経路を打ち込むだけで全て自動で運転が行えるようになっていた。


深夜未明。少し冷たい風が吹く中、ある国で一番大きな街の郊外にある大きな銀行の周りでパトカーのサイレンの音がけたたましく鳴っていた。

サイレンが響く中、男の怒鳴り声が聞こえてくる。


「一体どこに行ったんだ!」

「わかりません!半径1キロの範囲内で捜索を行いましたが、それらしき人間は見当たりません!」

一人の武装した警官とその部下と思われる警官らが大きな声をあげている。


そんなやりとりの中、上司の警官の元に無線で連絡が届いた。

「隊長!銀行から北東へ約百メートル先に、大きなカバンを持った怪しい子供を発見しました!」


郊外の建物の屋根の上では、小さな影が非常に速く動いていた。

建物には地面をひたすら蹴り続け、郊外のもっと外側へと向かう少年の姿があった。

少年は上着のフードを被っており、かろうじて性別がわかる状態だ。


「どういうことだ!この銀行から1キロの範囲内には怪しい人間は見当たらないのではなかったのか!」

「わかりません...おそらく、ハアハア...全ての機器が、ハッキングされているのかと...思われますっ...!」

「おそらく複数人による犯行だな...クソガキどもめが!」


そう罵声を放ったと同時に車を殴った鈍い衝撃音が鳴り響いた。

周りの全ての乗り物が何者かによってハッキングされているため自動車やドローン、監視カメラによ捜索が行えないのである。


「何としてでも絶対に捕まえるんだ!決してこんなことはあってはならない!」

「かしこまりました!ですが隊長...」

「なんだ!無駄な話はしないで早く捕まえにいけ!」

「あの子供、建物の壁や屋上を利用し逃げているのですがスピードが速すぎてついていけません!」


「子供一人も捕まえられんのか!」


「...仕方ない。発砲を許可する!だが絶対に殺すなよ!」

「了解!」


連絡を寄越した隊員はそのほかの隊員とともに3人でそれぞれその少年を追いかけていた。

今から建物に登るとおそらく簡単に逃げられてしまうだろう。

地面を走る武装した隊員たちは銃を手に取り始めた。


警官たちは拳銃を構え足を狙って撃ち始め、深夜の郊外では銃声がひたすら鳴り響いていた。

しかし訓練された武装警官たちですら、足を狙うのは非常に難しい。

ましてや自身は全力で走っているため全く弾が当たる気配がない上、対象はもっと速く動いているのだ。


「拳銃では意味がない!サブマシンガンに切り替えろ!!」

警官たちは拳銃をしまい、拳銃よりも一回り大きい短機関銃を取り出した。

こんな重装備では殺してしまうのではないか。隊員のうちの一人が一瞬そんな考えを頭に思い浮かべたがそれどころではない。


少年その気配を感じ取ると刃渡り15センチほどのナイフを取り出し右手に握りしめた。

少年には攻撃を行う意思や殺意などはなかった。


すると警官であるにもかかわらず悪そうな声が聞こえてきた。

「おい!あいつ見てみろよ!あんなしょぼいナイフしか持ってないぞ。」

「俺たちはこんなに武装してるのになぁ。なめられたもんだぜ!撃て!」


先ほどよりも比にならないほど火薬の音が連続で町中に鳴り響く。

先程の拳銃とは違い多くの銃弾が少年の肌に掠めそうになる。


「もっとだ!撃て!」


その時一つの弾丸が少年の頭に向かっていった。


悪そうな警官の放った弾丸であった。彼は

(確実に命中した。俺の手柄だ...!)

そう思っていた。


しかしーー。


弾が少年に当たりそうになる直前、少年は握りしめたナイフで弾丸を弾いたのだった。

警官は走りながら引き金を引くのをやめた。


「今、当たりそうになった弾丸だけを狙って弾いたのか...嘘だろ...」

「何やってんだ!もっと撃つんだ!!」

もう一人の悪そうな警官が

ほかの隊員たちはひたすらに弾を撃ち続けた。

しかし当たりそうな玉はすべて少年の手によって弾かれていった。


「リロードする!!」


警官たちが同時にそう言い放ち、短機関銃から弾倉を引き抜き、弾丸が詰まった新たな弾倉を差し込んだ。


銃口を再び屋根に向けると少し先の建物で少年は立ち止まっていた。


もうこれ以上建物はなかった。奥に見えるのは海を渡るためにある橋が1本だけだった。


警官たちはそれぞれ叫んだ。

「武器を捨てろ!カバンを寄越せ!」

「もう逃げるんじゃねえぞ!!」


少年は建物から飛び降り、広い道路の真ん中へとゆっくり歩いていった。


「何をしているんだ!早くこっちへ来い!」

「武器を捨てなさい!!」


少年はにやけながら顔を警官の方へと向けた。

すると少年は初めて言葉を口にした。


「かかってこいよ。全員相手してやるよ。」

まるで悪の組織に潜入した能力者にでもなった気分だ。


「何を言ってる!?」

「こっちはナイフ一本。俺は立ち止まってる。だから足でも何でも撃てばいい。そうすりゃ鞄が回収できるだろ?」


少年は全く表情を変えることはない。顔が引き攣っている様子もない。


「上等だ!やってやるぜ!」

悪そうな警官がそう言いながら銃の狙いを定め始める。


「待って!」

3人のうちの真面目そうな女性の警官が叫んだ。

「あの子は子供ですよ。しかも隊長からは殺すなと言われているでしょ!」


すると悪そうな警官が女性警官に寄っていく。

「だけどよ〜撃たなきゃまた逃げられるんだぜ?新人さんは黙ってなよ」


少年との距離は約10メートルほど。



「お前みたいなやつでも警官になれるんだな...警察も腐ったもんだな。

「なんだと!?」


「というかさ、そんな真面目な警官の上官とは...お姉さんも大変で...」


そう言いかけた時、悪そうな警官は叫びながら銃を少年の頭に向け引き金を引き、全ての弾を撃ち込んだ。

興奮しているせいか全ての弾丸は少年の体には向かうことはなかった。

少年は向かってくる弾丸をたった一本のナイフで受け止めた。

もう悪そうな警官には弾倉は残っていない。今回の事件は出動した隊員が多かったこともあり、あと武器といえば警棒くらいしか残っていない。


ほかの警官は呆然としながらその一部始終を黙って見ていた。AIなどの情報通信技術がどんなに文明や技術が発達していてもこんな技は現実であり得るようなことではない。


そんな中変わらず余裕そうな表情で少年は言った。

「そこのお姉さんは撃たないんだろ?じゃああんたはどうするの?」


もう一人の警官は変わらず銃を構えていた。

だがその手には大量の汗が流れており、少し震えていた。


ーーもし銃弾が当たらなければ、自分は少年の鋭いナイフで殺されるのではないか。


そんな恐怖と戦っていたのである。

しかし殺さなければ殺される。葛藤しつつも躊躇してはいけない。

そう思いを引き金を引く力にこめた。


火薬が爆発する音に加え少年のナイフに弾丸が当たる金属音が鳴り響いた。

警官は全ての弾丸を打ち終え、一瞬静寂の時間が流れた。少年は無傷であった。

そしてこう言い放った。


「じゃあ俺の勝ちだな。もう行くね」

そう言い放ち、再びとんでもない速さで走り、橋を渡っていった。

どの警官もまだ走る体力は残っていたが、あんな速さではもう追いつくことはできない上に銃も効かないため追いかけるの諦めていた。

最後に引き金を弾いた警官は膝から崩れ落ち呆然としていた。



やがて2人の男の警官は立ち上がった。

「おい!先に帰ってるからな!早くしろよ!」

そう言いながらゆっくりと歩き街を出ていった。


怒られつつも女性警官は少年について何か手がかりかないか黙って探していた。

少年が去ってから約5分ほど経った頃、薬莢の転がる音が聞こえてきた。


郊外のある場所から端にかけての道には、少年を狙った弾丸の入った薬莢が道標のように落ちていたのである。



その道標に沿って女性警官に向かって歩いてくる男がいた。

女性警官は2人が自分を連れ戻しに戻ってきたのだろうと顔を上げると見知らぬ男がいた。



見た目は40代くらいだろうか。無性髭に髪は長くて後ろで結んでいる、服は昔の騎士のような服をきており、明らかに警察の人間ではない。私服警官にしてもこんな時間にいるはずはないし、仮にいたとしても明らかに警官ではない見た目をしていた。女性の警官はその怪しい男に向かって銃を向けた。


「止まってください!」

「おいおい...俺は怪しい者じゃないっての...」

「明らかに怪しいでしょ!その見た目!」

「最近の若い子はひどいなぁ見た目で人を判断しちゃダメだよ〜」


そう言うと男は左手で頭をかきながら、うしろから何かを掴んでた右手を出し女性警官の前に押すように投げた。

押されて出てきたのは眼鏡をかけた痩せ細った少年だった。


「い、痛い!!」


「ちょ、ちょっとこの子は...?」

「ハッキングしたガキだよ」


「ハッキング...。なぜあなたがそのことを知ってるんですか...」

「深夜なのに銀行の周りでサイレンが鳴りまくってるしでうるさくてありゃしねえ。」

「え、ええ。そうだけど、ハッキングに対する答えにはなってないでしょ!」


男が笑いながら答える

「ああ、すまねえすまねえ。俺はこう言うもんだ」


そういうと上着のポケットから警察手帳のようなものを取り出してみせた。

女性警官は何かを悟ったようだった。

「こ、これは...」


「ほう。俺たちのことを知ってるのか。珍しい警官もいるもんだ。」


「ま、まあ色々あるんですよ...それよりどうしてハッキングのことを...!」


「それは機密事項だから言えないな。とにかくこのメガネのガキは俺が預かる。この辺は俺たちの管轄下だからな」


「機密ですって...!?どういうことですか!」

「機密は機密だ。とりあえず俺たちの存在ですら警察の中ですら機密事項なんだよ。」


「わかりました。じゃ、じゃあ私たちは隊長に報告を...」

「それもダメだな。機密事項だから。」


機密事項...なぜなのかと女性警官が考えてるうちに男がまた喋り出した。


「というか、あんたたちにはここで”死んで”もらう」


男は銃を取り出した。

のように女性警官の目には映ったが、何か違和感を感じたようにも思えた。しかし自分が殺されるという恐怖でその思いは消されてしまった。


「え、ちょっと...」


バン!!!


女性警官が何も答えることはなく銃声が鳴り響いた。しかしそれは麻酔銃であった。

そして銃を向けていたのは眼鏡をかけた少年の体であった。

言いたいことはたくさんあったのに突然の発砲により、言葉が出てこなかった。


「こ、これはどういう...」

悲鳴をあげるよりも何故か冷静な言葉を口にした。女性警官には麻酔銃だとは判断できなかったため、驚きのあまり悲鳴すら上げられなかった。


バン!!!


再び銃声が鳴り響く。

ドサっという音と共に女性警官は倒れ込んだ。


「あんたはここで死んだんだ。後にニュースになるだろう。と言ってももう眠ってるから意味ねえか...」


そう言いながら男は女性警官を抱えこみ街から去っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ