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暗闇の中で

 波の音だけが聞こえる暗闇の世界に少女は立って目覚める。

―ここはどこだろう?

 地上と海中が反転したような深い闇の中、深海に漂う孤独に飲まれていくような感覚。

「んー」

 短く声を発しても何も変わらない。

「ん?」

 少女は首元に何かある事に気付く。

―あーそうか、そうだ、そうだ。

 何も見えない闇の中でも少女はそれが何なのか理解する。

―私は君を待っているんだ。

 約束したこの場所で。この海で。

 それなら待てばいい。待つだけでいいのだ。

 再び暗闇の中から見つけてくれる―その時まで。

 だから少女は安心して目を閉じる。

 変わらず暗闇の世界の中、瞼の裏には彼女が会いたい人の姿が映り、次の時には少女の意識は再び消えていった。


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