プロローグ「それは昔の話」
今日から連載を初めていくわけですが昔僕が書いた「わすれたものは」の設定を土台としてあるので多少のネタバレがございます。内容は全くの別物となっておりますがもしネタバレが嫌な方はご注意お願いします。
いい? 今から話す事が重要になるんだからしっかり聞きなさいよ?
……大丈夫そうね、それじゃあ話すわね。
昔々あるところに……って、何よ? 今昔物語でも始める気なのかって?
こんなに分かりやすく昔々って言ってるんだから当たり前でしょ?
話に入りやすいように定型句を使ったのよ。
別に桃太郎を朗読するわけじゃないから、安心して、黙って聴きなさい?
それじゃあ改めて、昔々あるところに。
あるところっていうか、まぁ私達が住んでいるこの町よね―女神がいたの。
女神様は美人で優しく村人みんなに愛されていたそうよ。
海沿いの小さな村の小さな神社への信仰だから、そんな大仰なものじゃないけどね。
私がそれを言うのはマズくないかって? 違うわね、私だからこそ言ってるの。
とにかく、女神がいたわけよ。
そこにある日、舟に乗った一人の男が海を超えてやってきたの。
その男は言ったわ。自分は神で旅をしている、と
様子を見に来た村人そう伝えたんだけど、現代でこんな自己紹介したら通報よね。
まぁ当時は女神もいたから特に怪しまれず、その村人はその男神を女神様のところまで案内したの。そして女神の元に案内された男神は同じように自己紹介をして、しばらくこの村にいさせて欲しいと女神に頼んだ。
心優しい女神はその申し出を快く受け入れた。
この後の展開は予想が出来るかもしれないけど……そうね。
二人の神は色々あって恋に落ちるわ。
そりゃもう熱烈に。どころか熱血に愛し合っていたらしいわ。
今はその話はおいて置くけどね。
でも、そんな熱々な二人の幸せは長く続かなかった。覚えてる? 男神が何してたか?
……そうね旅よ、バカのくせによく覚えていたわね。
あーもう、あまりギャーギャー喚かないで、まだ話し中よ。
旅。男神は元々旅をする神様。
たとえ女神をどれだけ愛していても再び旅に出なければいけなかった。
止める事も出来ず悲痛に胸を痛めながらも女神は旅に出る男神あるものを渡して言うの。
これを受け取ってください。私とアナタをを繋ぐ為のお守りです、と。
渡されたものを男神が確認するとそこには儚くも小さく美しい ピンクの貝殻が一枚。
この貝殻の片割れは私が持っています。これが私達の約束の証です、と女神は言う。
それを聞いた男神は貝殻を割れないようにそっと懐に入れた。
一年に一度、この日に必ず女神に会いに来ると約束をして旅立ったの。
それから毎年、約束通りに男神は女神の元へ訪れ村人達はそれを盛大に祝うのでしたーーめでたし、めでたしってね。