I-V momentary rest
5月23日午後6時
「こんだけ聞き込みとかしても、何の手がかりも無いのかよ」
途方に暮れていると、前方から神田が歩いてきた。
「おーい、修ちゃん。こっちだにゃ〜」
ちなみに、新井のことを修ちゃんと呼ぶのは神田だけである。
「ん?おう、神田か。用事は済んだのか」
「おかげ様で」
「で、何してるんだお前は」
「いやさ〜、修ちゃんが困っていると思ったから手伝おうと・・」
「嘘だな」
新井は神田の言葉を遮って言った。
「ばれてますか」
「当たり前だ」
「実はですねぇ、修ちゃんの仕事とは別件で新島先生に頼まれたんですにゃ〜。それでね、その別件と言うのが何故か『小波高校生徒殺人事件』と関係があるみたいなんですゼエィ」
「一体どういう関係だ」
「それはですね、殺され方の類似点が多すぎるんですにゃ〜。というか、全部いっしょなんですにゃ〜」
「それはまた不思議だな。で、その事件ってのは何だ」
「今日の昼にテレビでやってた連続殺人事件の事ですたい」
神田は、ちょくちょく語尾にいろいろ変な言葉をつける癖がある。最初は新井も慣れなかったが、今は、そのしゃべり方じゃなくては逆に不自然だ。
「用は、犯人がいっしょでまだこの辺をうろついてるんですにゃ〜」
「はぁ、まだこの辺をうろついてんのか。だったらヤベーじゃん」
「心配いらないですゼエィ。この事件は霊の仕業って事ですから、『特別除霊軍』が出動しているにゃ〜」
『特別除霊軍』とは、自衛隊直属の軍隊であり、霊専門の警察みたいな物である。小波町周辺の区域を中心に日本全国に展開している。
何故、小波町を中心としているかと言うと、小波町は世界で一番天界に近い所だと言われているからである。実際に、毎年12月12日に小波町の穂都掘神社の鳥居から天使が出てくる。
日本は、天界と好友関係を築き上げた。そして天使は、「霊がこの世界に下りるとき、災いが起こる。それを阻止するために『超霊媒体質』の人間を天界は創る。そいつらを使って霊を除霊しろ」と言った。日本の政府は天使の言葉を信じ、いち早く霊にたいしての対策を打った。そして、現在に到る訳である。
「じゃあぁ、俺達は帰りますか」
「そうだにゃ〜」
新井と神田は、学生寮に帰っていった。
5月23日午後7時
小波高校の男子学生寮の前。
「あ、お兄ちゃん」
そんな妹ボイスで新井と神田は振り返った。
「おう、舞」
「お久しぶりですにゃ〜」
彼女の名前は、新井舞。新井修太の双子の妹である。同じ小波高校の1年生で、ちょっとした霊媒体質である。
「おい舞。先に行くなよ。あ、お兄さんこんばんわ」
彼の名前は、柿本徹。同じ小波高校の1年生で、舞の彼氏である。ちなみに、新井は1年6組で、柿本と舞は1年3組である。
「おい、止めてくれよ。同い年だろ。お兄さんってのはちょっとなぁー」
「良いじゃん別に。そんな事気にしない。ところで、お兄ちゃん達は何やってたの」
「あぁ、委員会の仕事だ」
「また〜。そんなのばっかリやっていると、人生腐るよ」
「亜美もそんなような事言ってた」
「会ったんだ。どう、少しは亜美さんと進展した」
「元々何もねぇーよ。お前らはどこに行くわけ」
「地元の祭り」
「そういえば、今日、祭りがあったな」
「忘れてたですゼエィ」
小波町には、5月22日に行う、『小波町感謝祭』と言う物がある。『小波町感謝祭』とは、小波町の創立を祝うために作った小波町独自の祭りである。
「それでは行ってきます、お兄さん」
「じゃあねぇ、お兄ちゃん」
柿本と舞は、祭りに行くために中央公園に向かって歩いていった。柿本達が見えなくなってから、新井の携帯にメールが入った。
「では、俺達も向かうとするか」
新井は、メールを読み終わるとそう言った。
「どこに行くにゃ〜」
「小波町感謝祭にだよ」
新井と神田も、中央公園に向かって歩いていった。