I-IV matter sign
薄暗い裏路地。太陽が雲に隠れて、より、いっそう裏路地は暗くなった。裏路地に置いてある自転車の近くには、ナイフが転がっていた。
血の付いたナイフが・・・・・・
5月23日午後1時55分
「うぅぅぅ・・・・うぅぅぅ」
男の呻き声が聞こえた。
「く、くま。遣り過ぎだろコレは・・・」
「最初に喧嘩を吹っ掛けてきたのはあいつらだろ」
暗い裏路地には三人の男達(もとい、ボコボコにされた男達)が倒れていた。
「うぅぅぅぅ・・・・」 「い、痛い・・」 「あぁぁぁぁぁ・・・・」
皆、それぞれに声を出している。
「これに懲りたら、もうこんなもの持って人を襲うな」
新井は、落ちていたナイフを男達のほうに蹴った。新井は、喧嘩が強い方である。昔からよく、いろいろな人から喧嘩を吹っ掛けられたほうだ。もう一度言っておくが、新井は喧嘩が強いほうである。
「だから止めろと言ったのに。まったく、人の忠告を無視するからこうなるんだぞ」
亜美は、新井が喧嘩に強いことを知っている。知っていると言うよりは、何回も新井に助けてもらったことがある。小さい頃から新井が喧嘩に強い事を知っている。だから、ヤンキー達に「やめて」と言ったのだ。
「さて。こんな所、さっさと出ますか」
「こんな所って、お前がやったんだろ。全く、お前は本当に喧嘩が強いな」
「誰のせいだよ」
新井が喧嘩に強いのは、と言うより喧嘩に慣れているのは、幼馴染を何度も何度も不良やら、何やらから守ってあげてたのが原因だ。
「じゃあ、行きますか」
新井と亜美は、暗い裏路地から出て行った。
5月23日午後2時
「うぅぅぅぅぅうぅぅぅぅうぅぅ」
暗い裏路地に男達の声が響き渡る。
「はははははははははは。まったく、無様だなぁ」
仮面をつけた一人の男は笑いながら男達に話し掛けた。
「な、何だテメェは。あいつらの仲間か。そうじゃなくてもなぁ、こっちは今、イライラしてるんだ。悪いが、気分転換させてもらうぜ。死ねェェェェェェ」
三人の男たちが仮面をつけた男に向かって、一斉に走り出した。
「そっちがな」
三発の銃声。それと同時に倒れる男たち。裏路地の近くを通った人は、あれだけ五月蝿い銃声にも何の反応も無い。まるで、銃声が聞こえていないみたいに・・・
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
苦しい悲鳴をあげる男たち。
「こいつら喰っても良いぜ」
その声が合図だったように三体の得体の知れない固体が男達の周りを囲った。
「やめ・・・やめろォォォォォォォォ」
三人の男たちは、光となって消えていった。
「そんな腐った奴らを喰わせてどうするんですか。何の足しにもなりませんよ、×さん」
×と呼ばれた男は仮面を外した。外した仮面を地面の上に投げ、男達を撃った銃で仮面を撃つ。銃は、西部劇にでも出てきそうな銀色のリボルバーの銃だ。
「いや、足しにはなるぞ。こんな奴らでも、何百人、何千人と喰わせれば物凄い力になる」
「そんな事言っても、そんなにも人を喰べたらいくら何でもあいつらが気付きますよ」
そう言った男は、仮面を脱いで×の方に投げた。
「大丈夫だ」
×は、眼鏡を掛けながら、その仮面を撃った。眼鏡の縁は青色で、髪の色は銃と同じ銀色。横にメッシュがはいっている。そのメッシュの半分が黒色で、もう半分は白色になっている。仮面を投げた男の髪の色は、深みのある黄色で、×と同じくメッシュがはいっている。メッシュは、半分が黒色で、半分が白色になっている。
「何が大丈夫なんですか」
「気付かれたら気付かれたで、倒しちまえば良いだけだ」
「・・・・。はぁ、まったく、それがどれだけ大変か分かっているんですか」
「あぁ、分かってるさぁ」
不適に笑う×。
「・・・・・。何を考えているんですか。まさか、伍領郭を使うつもりか。あいつらはまだ使える状況じゃない。考え直せ、×。他に良い手があるはずだ」
「感情的になるな、Σ。大丈夫だって言ってるだろ。手なら幾らでもある。まずは、手始めに『桐野楓』でも使ってみるか」
「あ、あいつを・・・。何を考えてるんですか。あいつは伍領郭ですらないじゃないですか。あんな奴に『除霊委員会』の連中を仕留める力なんてないですよ」
「俺に何回大丈夫だと言わせればいい。Щの準備をしておけ」
「くぅ、分かりました。やればいいんでしょ。やれば」
「あぁ、まかせたぞ」
5月23日午後2時30分
「は〜、今日は疲れたな」
「そうだな」
亜美は、パフェを頬張りながら答えた。
「てか、何でお前はランチFを食べてるんだよ。誰が金払うと思ってるんだぁ」
亜美は、パフェを頬張りながら新井を指差した。新井と亜美は、裏路地を抜けた後、ひとまず小波町の商店街に一つしかないファミレスの店内に入った。ちなみに、ランチFはこの店で一番高いランチだ。その値段は1900円だ。
「やっぱりな」
そう言いながら、新井は机の上に2000円を置いて席を立った。
「な、何だよ。もう帰っちゃうのかよ」
「帰るんじゃない。こっちとら調査を頼まれてんだ。今日中にやっとかないとな」
新井はそう言うと、自動ドアが開いた瞬間に店内から出て行った。
「お、おい。何だよ。本当に帰っちまうのかよ」
亜美は、机の上に置いてある二千円を見ながらパフェを食べた。
「・・・・・、は〜。明日にでも返しておくか」
そう言うと、亜美は二千円をポケットにしまった。