I-II first event
『霊』と言うものは、この世の『異物』である。
霊は、死んだ人間の魂が『天界』と言う『器』から零れ落ちてできるものである。霊を『除霊』すると言うことは、霊を『天界』に戻すのではなく、《霊そのものをこの世から抹消する》と言うことだ。
5月23日午前0時
「あれから丁度102年たった。今こそ、天界に復讐する時」
その声は闇に消えた・・・
5月23日午後0時
「何でまたいるんですか」
「いや、くまの料理が美味いから」
「にゃ〜」
ここは小波高校の寮の一室。新井の部屋。そこには三人の人がいた。一人はもちろん新井。残りの二人は、神田と高森だ。寮は、男性寮と女性寮に別れていが、高森は度々来ているらしい。理由は、食費代が浮くからである。
「最近物騒なニュースが多いにゃ〜」
テレビでは、どこかで起こった殺人事件のニュースがやっていた」
「そうだな。まぁ、私たちには関係ないがな」
「そんな事言わないほうがいいですよ。はい、できました」
机の上には、四人分の焼きそばが置いてある。
「それにしても遅いな。もう昼だぞ」
「それは、委員長が朝から居るからでしょう」
ガチャ
玄関の扉が開いた。
「いや、すまんすまん」
新井の部屋に、『除霊委員会』担当の新島正治が入ってきた。
「遅いです先生」
「えっ、合ってるよね。時間どうりだよね」
「委員長が早いんですにゃ〜」
部屋には、焼きそばの食べる音が響いていた。今日は土曜日である。土曜日と日曜日には、大抵高森と神田が新井の部屋に来る。新井にとっては、その分食費代がかかるので財布には優しくない。それに今日は新島先生も来てるので、今、冷蔵庫の中はろくな物がない。
【今日、買い物に行こ】
新井はそう思いながら新島先生に渡された書類を見ていた。
「今週の金曜日にうちの学校の生徒が一人殺された」
「・・・・」
全員が黙った。
「君たちには、その子がどうして殺されたのか、どうやって殺されたかを調べて欲しい」
「何で俺たちだけなんですか。木乃さん達は」
「あぁ、あいつらは友達と遊びに行っている」
「・・・・」
違う意味で全員が黙った。
「すいませんにゃ〜。俺も今日は用事があるんですにゃ〜」
「私もだ」
「何だ、二人とも用事があるのか。しかたがない、新井任せた」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「よろしくですにゃ〜」 「すまんな、新井」
新井は一人でこの事件の捜査をしなければならなかった。
「はー、最悪だ」
ちなみに、『最悪だ』は新井のこの頃よく言う台詞である。
「じゃあな」
新島先生は焼きそばを食べ終わると、さっさと新井の部屋から出て行った。部屋の中には、焼きそばの食べる音だけが響き渡る。