I-XII twin fall angel
5月23日午後9時16分
「おーい、木乃、委員長。2人ともどこ行ったんだ」
石橋は閉じ込められた結界の中を歩いていた。辺りには何もなく、真っ白だ。永遠に白い景色が続いている。
「くっそ、何だこの空間。気味悪いぜ」
「そんなことは無いでしょ。白から作り出す世界って感じで、良いじゃないですか」
石橋の目の前に、突然Σが現れた。手には、水が入ったペットボトルが握られている。
「またお前かよ」
「おや?私じゃ駄目かな」
「いいや、ちょうどリベンジしたいと思ってたところだからな」
石橋は先ほど木乃から受けたエネルギー波を剣先から飛ばそうとした。しかし、剣は構えたが、肝心のエネルギー波は出なかった。
「な、なんだこりゃ」
「言ったでしょう、一方的の殺し合いだって」
Σは堕天使の翼を広げ、石橋の方に飛んで行った。そして、その勢いのまま石橋に重い拳をぶつけた。
「ぐぁぁぁ」
石橋は後ろに飛ばされた。
「この戦場は、超霊媒体質を無効化する能力があるんです。しかし、超霊媒体質の人間は、その能力さえ奪ってしまえば脆いものだと思っていたのですが・・・・・案外、基礎体力もしっかりしているんですね」
「当たり前だ。これ位の攻撃で、倒れるかよ」
石橋は立ち上がり、日本刀を構え直した。
「しかし、能力を封じられて、どう私を倒す気ですか。この結界は天使の能力を上げる効果もあるんですよ」
「そうか」
石橋は日本刀を鞘に納めた。
「そうか。だったらこれで、おあいこさまだ」
「何をする気だ、貴様」
石橋は右目を左手で隠した。
「神紅眼」
石橋は左手を下に振り下ろした。そして、右目が赤く染まっていく。
5月23日午後9時20分
「……」
Ωは無言のまま、Щ(シシャー)を作っている結界陣を見張っていた。
「ここにあったのかにゃ〜。この陣を壊せばあの結界は無くなるんだな、堕天使」
結界の方から神田が歩いてきた。手には『お札』の金槌が握られている。
「・・・・・・・またお前か」
Ωの手の平にある口が開き、舌が出てきた。
「我は喰らう、餓狼餓鬼」
「今の言葉、お前の能力の発動呪文的なやつか」
神田が話していると、Ωが十字砲を放った。
「容赦ねーな。だったら、こっちも攻撃させてもらうぜ」
金槌のハンマー部分が大きくなっていく。そして、神田は金槌を振り下ろした。
「おらよ」
Ωは後ろに跳んで金槌を避けた。振り下ろされたハンマー部分は地面に当たり、そこから周辺にクレーターが出来た。
「逃げて良いのか。あの陣を打ち壊しちまうぜ」
「・・・駄目に・・・・決まって・・・・・いる」
Ωは堕天使の翼を広げ、神田の方に猛スピードで突っ込んだ。
「喋んのは遅いくせに、動きはメッチャ速えじゃねーかよ」
神田は、金槌の大きさを元に戻した。
「ここからは、俺も本気だ」
神田の前に大きな陣が出現した。その陣を神田は持っている金槌で叩いた。陣は形を変え、エネルギー波になってΩの方に飛んでいった。
Ωは右手の口を前に突き出して、エネルギー波を喰わせた。
「くそっ。あの口は厄介だな。先にこの陣を壊させてもらうか」
神田は、釘打ち『陣壊し』の陣を纏った金槌を結界を作っている陣に向かって振り下ろした。Ωは、神田が陣を壊そうとしたのが見えたが、距離があって間に合わない。
「こいつで終わりだ」
「余計なことすんなよ、除霊委員会の奴」
神田の持っていた金槌が撃たれ、遠くの方に転がっていった。
「おいおい、何てこった」
神田が見上げる先には、銃を片手に堕天使の翼で飛んでいる×の姿があった。
「・・×さん・・・気になる奴とは・・・・会えましたか」
「あぁ、会ってきた。実にムカツク奴だったよ。名前は・・・たしか新井修太とか言ったな」
「新井に会ったのか。あいつは今どこだ」
「知らねーよ。逃げられたからな。だけど傷も深そうだったからなぁ・・・・・死んだんじゃねぇか」
「そうか、新井は無事か」
「おーい。俺の話聞いてたか」
「あぁ、聞いてたさ」
神田は、落ちている金槌を拾った。
「逃げ切れたならあいつは助かる」
「根拠はあんのか」
「あいつはそういう奴なんだよ」
神田は、金槌を構えた。
「さてと・・・さっさとあの陣を壊すか」
×はΩの近くに降りてきた。
「Ω、一緒にあいつを嬲り殺すか」
「・・・命令ならば」
「よし、これは命令だ。あいつを殺すぞ」
×は禁金金武を構え、神田目掛けて撃った。そして銃声だけがそこには響いた。