どうにかして一緒に
フィリシスと付き合っている時、最初に関係を持ったのは猫人族のアスミィだった。
彼女は、元々暗殺者だったが、人を殺すのが嫌になって逃げだし、マルギアスまで流されてきたと言う。
フォルサ傭兵団では、長年斥候を務めていた。
アスミィは、典型的なルイシーに影響を受けた娘の一人であった。
ルイシーの様に幸せになりたいが故に、ストラディゴスを慕い、無邪気にじゃれ付いているうちに意識し始め、アスミィからストラディゴスへ夜這いをかけて関係が始まったと言う。
アスミィにとっては初恋であり、ストラディゴスのハーレムと言う、一夫多妻的な関係に入りたいと思っていた故の行動であった。
フィリシスを皆が恐れているからこそ、ストラディゴスを独占できると思ったと言うのだから、意外と策士である。
しかし、アスミィ一人ではストラディゴスは満足できなかった。
相手も、遊びだと思ってくれる相手を求め、そこで次に手を出したのが、テレティだった。
テレティは、元々戦士で、傭兵としてフォルサ傭兵団に加わって来た。
兎耳の美女で、知的な見た目とは裏腹に、思考がかなり単純でもある。
その上、兎人の特性のせいか、そう言った事にも積極的で、最初はお互い良い息抜きになったと言う。
だがテレティは、次第にストラディゴスに対して本気になってしまう。
すると、盛りのついた雌兎の様に、所かまわずストラディゴスを求め始める様になり、ストラディゴスは身体がもたないと別の息抜きを探し始める。
最後に関係を持ってしまったのが、ダークエルフのハルコスだった。
彼女は、家族が流行り病にかかって亡くなり、里を追い出された過去がある。
行く当てもなくさまよっている所を、フォルサ傭兵団に拾われたと言う。
傭兵団では、弓の腕を活かす為に弓兵をしていたが、木の上から戦場を俯瞰して分析する能力を見出されて、後に戦術家としてストラディゴスと共に指揮をとっていた。
フィリシスとアスミィとテレティと同時に関係を持っている事を、友人として相談され、ストラディゴスに最初から呆れていた。
だが、友人として恋人同士でコンフリクト(衝突)を起さない様にスケジュール管理を手伝ったり、助言を与えていたと言うのだから、良い性格である。
お互い恋をする対象として見ずに戦友として見ていた為、愚痴や相談にもよく乗っていた。
そんな善き友人だと思っていた相手が、友人の一線を越える時は突然やって来た。
二人の場合は、ストラディゴスが表向きフィリシスと付き合い、隠れて二人とも付き合っているのに慣れ、デートスケジュールをハルコスと共に組んでいた時に、ハルコスが「こうすればあと一人ぐらい」と、スケジュールに空きを作って、誘ってきたと言う。
スケジュールが空いているのだからと、ストラディゴスに断る理由は無い。
そして、ついに運命の日が近づき……
* * *
「ストラディゴスさん、前」
「すまん、話していたら……」
「むらむら?」
「違う! 勝手に! これは男なら仕方が無い事で!」
「……まあ、いいですよ。続けて」
「……すまん」
* * *
ストラディゴスは、ハルコスの協力を得る事で、デートスケジュールの圧縮を目論見始める。
同じ時間に同時に楽しめないかと考えたのだ。
ハルコスは、危険が少なく余暇が多い物資の馬車での運搬や見張り、斥候と言った任務を利用しだす。
違和感の無いメンバー構成や任務の理由をつけては、様々な場所に出かけては逢瀬を重ね、アスミィ、テレティ、ハルコスの三人はすぐに秘密を共有する仲間となった。
次にストラディゴスが目論んだのは、フィリシスをも仲間に引き込む事だった。
ルイシーを使って恋人関係に持ち込めたのだから、同じように「慣らせて」いけば、落とせると考えたのだ。
そこで、三人をフィリシスにとっての第二のルイシーにするべく、ハルコスが任務を割り当てていく。
ところが、フィリシスの人見知りの激しさは中々のもので、ルイシーとストラディゴスと一緒にいる時は活発なのに、他人が一緒にいると急に大人しく、内向的になってしまう。
どうにかせなばとストラディゴスは、三人をフィリシスとなるべく長く共にいられるように、裏に手をまわし始め、その甲斐もあってか、フィリシスは徐々に明るくなっていった。
* * *
「……目的さえまともなら、良い話っぽいのに……」
「……」




