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決着?

 その時、ストラディゴスの剣が、フィリシスを薙ぎ倒し、見張り塔の壁へと激突させる。

 塔を揺らす強い衝撃。

 尖塔の上で振動と強い風に吹かれる彩芽は、デジャヴュを覚える。

 一度、経験したことがある感覚。




 塔の下では、ストラディゴスがフィリシスに剣を突きつけ、話をしていた。

 ストラディゴスの剣が、竜の指にある指輪を傷つける。


 フィリシスの竜の身体の全身から、鱗の色と同じ黒い煙が出て来る。

 その煙が指輪に吸い込まれていくが、煙を全て吸い込めずに周囲に散っていく。

 黒い煙の中で竜の身体が萎む様に小さくなり、最後には裸のフィリシスが姿を現した。


 フィリシスはストラディゴスに殴りかかる。

 ストラディゴスは、その拳を避けず、身体に受けた。


「俺じゃ……ダメなのかよ……」

 フィリシスの拳から力が抜ける。


「すまないと思ってる」

「お前が望むなら、何だってする……もっと女らしくなれって言うなら努力するから……」

「そう言う事じゃ……ないんだ」

「じゃあ、どういう事なんだよ!」


 フィリシスの目には涙が浮かんでいた。

 ストラディゴスは、剣を手放した。


「フィリシス、俺の事は煮るなり焼くなり好きにしてくれて構わない。一生お前にだけ尽くしてもいい。だから、あの人の事は助けて欲しい」

「なんなんだよ、もう……」

「自分よりも、大事な人なんだ。お前の気が済むなら、俺の事は殺してくれてもいい。頼む」


「なんで、それが俺じゃないんだよ……」


 フィリシスの戦意を失わせたのは、ストラディゴスが自分以外に本当に大切な人を見つけてしまった事実であった。

 浮気をされ、怒って別れた時では無く、今この時に初めてフィリシスは失恋したのだ。


 フィリシスはその場でべそをかき始め、ストラディゴスは胸を貸す。




 からっ、みしみしみし……




 見張り塔の壁が、悲鳴を上げていた。

 竜の巨体で塔の根本が抉られ、塔全体に緩やかな傾斜が付き始める。

 このまま倒壊すれば、城に激突する事は避けられない。


「たすけてーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 塔の頂上では、彩芽が叫んでいた。


 フィリシスが竜になって彩芽を回収しようと思ったら、今さっき指輪を壊された事を想い出す。


「アヤメエエエェーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 ストラディゴスは、フィリシスが止める間もなく、傾いてく塔の中へ飛び込んでいった。

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