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突然の解放

 ハルコスから聞いたストラディゴスの証言をもとに、作戦が立案されていく。

 エルムの指揮で、総力を挙げてのオルデンと彩芽の救出計画が実行に移されるのだ。


 エルムはストラディゴスの参加も許し、今回はネヴェル騎士団の正に総力戦と言った様相であった。




 すぐに出せる四十隻の船を出し、指定された海域には二十隻のカトラス王国の大型帆船。

 そのどれかに二人は乗っているのか、それとも罠か。

 わからないが、それでも行くしかない。


 両船団の大砲の有効射程距離の外の海上で陣形を整え、交戦しようとした時、敵船の一隻から煙が上がり始めた。

 すると、まだ交戦前だと言うのに、カトラス軍の船が次々と燃えていく。


 その光景を前にして、ネヴェル騎士団は全員何が起きたのか訳が分からない。

 勢いよく燃える帆船には近づけないと、エルムの指示で小舟が出され、周囲の海域が捜索される事になった。


 彩芽の姿を求めて、必死に小舟を漕ぐストラディゴス。


 しかし、彩芽とオルデンはおろか、カトラス軍の一人さえ姿は見えなかった。

 浮いているのは、焦げた傀儡人形の残骸のみ。


 ここまで来て、ようやくエルムは罠の意味に気付く。


「総員、ネヴェルに戻れ!」




 * * *




 同じ頃。

 商業都市ネヴェル。


 城の屋根の上にガーゴイルの様に構えて、眼下の街を威嚇する一人の竜がいた。


 大空から舞い降りたフィリシスの姿に、誰一人として戦いを挑もうなどと言う者はいなかった。

 カトラス船団とフィリシスを倒しに大船団で出て行った筈のネヴェル騎士団は、水平線の向こう側である。


 城の謁見の間には、ポポッチとアスミィの姿。

 オルデンの椅子に座ったポポッチが、ネヴェルの城の役人や使用人達に対して偉そうに何やら命令を出している。


 非戦闘員は、支配者が変わったのが不満だからと言って抗う事が出来るものではない。

 戦場の掟と同じである。


 ネヴェルは、領主とその客人を取り戻す為に散々振り回された挙句、戦わずして陥落したのだった。




 * * *




 彩芽は、と言うとネヴェルの城で一人監禁されていた。



 ハルコスとフィリシスに捕まって連れてこられたオルデンの無事は確認しているが、オルデンが城内のどこに捕まっているかは分からない。

 いよいよ大変な事になったぞと思っていると、部屋を誰かが訪ねて来た。


「どうぞ」


 ノックに返事をすると、入ってきたのはルイシーと呼ばれていた一人のメイドだった。


 ポポッチの指示で、フィリシスがいるのに反抗する者はいないだろうと、使用人達は変わらず働かされていたので、自由に動けた。


「これを着て、今すぐ」


 ルイシーに渡されたのは、揃いのメイド服であった。

 彩芽は急いで着替えるとルイシーに誘われるまま、部屋を出る。


 すると、そこにはもう一人メイドが立っている。

 よく見ると、それはオルデンである。


「オルデン公!?」

「元気そうで何より」

「……結構似合ってますね」

「アヤメ、君も似合っているよ。さあルイシー、計画通りに行こう」

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