情報提供
ハルコスから、マルギアスとカトラスの両国が置かれている状況を聞かされ、彩芽は聞きながら考える。
どの戦争でも言える事だが、歴史と権力が関わると、途端に解決不能に思えてくる。
「ねぇ、私も気になってたんだけど……あなた、結局のところは領主様の何なの?」
「友達です」
「付き合いは長いの?」
「昨日会ったばかりです」
ハルコスは、彩芽の答えで疑問が増えていくのを感じた。
「……あなた、貴族? それとも王族?」
「え? 平民かな?」
「……どうやったら領主様からそんなドレスをプレゼントされる様に、たったの一日でなったの? 是非聞きたいわ。そう言えばあなた、ディーとも友達なんですって?」
「ディーって、ストラディゴスさん、ですよね?」
彩芽は、これこそがチャンスだと思った。
どんな些細な事でも、共通点は情報を引き出す入り口になる。
それが個人的であればあるほど、深い所まで踏み込むチャンスが生まれる。
「今もディーは、変わらない?」
「変わらない?」
「女好きかって事」
「はい。と言っても、一昨日、初めて会ったばかりなんだけど……」
それから、ハルコスに異世界の事を伏せて、ストラディゴスと会ってからオルデンと出会い、さらわれるまでの経緯を細かに話した。
彩芽の状況に理解を示しているハルコスなら、もしかすると助けてくれるかもしれないと思ったからだ。
相手の得になる交渉材料が用意出来ない以上、自分の事を知ってもらって共感でも同情でも得なければ先に進めない。
ハルコスは、熱心に彩芽の話を聞き、彩芽と同じ様に相槌を打ち、彩芽への理解を深めていく。
「話してくれてありがとう、アヤメ。あなたの置かれている状況は良く理解できたわ。あなたが一刻も早く解放される様に、ポポッチ王子に掛け合ってみる。少し時間がかかるかもしれないけど、ここで待ってて」
ハルコスの親切で優しい言葉を聞いて、彩芽はこれで助かるかもと淡い期待を抱いた。




