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事情聴取

 彩芽がさらわれた一方、その頃ネヴェルでは。




 領主誘拐未遂と、領主の客人誘拐事件が起きたとして大きな騒ぎとなっていた。


 マルギアス王国と戦争状態に突入するカトラス王国は、東西で隣接する国である。

 大陸最西端のマルギアス王国では、敵は東からやってくると言うのが常識だ。


 地理的な問題だけでなく、最西端の商業都市ネヴェルを守る騎士団が優秀ゆえに、敵もすき好んで最初に攻めて来ることが無いと言う今までの経験則が、この常識の根拠である。

 東から攻めれば、ネヴェル騎士団は到着には時間がかかり、移動の消耗も合わさって敵からすると良い事尽くめなのだ。


 しかし今回は、その盲点を突かれた事に間違いは無かった。




 状況を更に悪化させているのは、首謀者が分からない事だった。

 戦争状態に突入予定のカトラス王国が犯人だとしても、証拠が無ければ戦争以上の事は何も出来ない。

 証拠があっても、周辺の国に卑怯者国家のレッテルを張られる以上のデメリットは今回の戦争に限って言えば無く、カトラス王の命令なのか、六人いる王子の誰かが犯人なのかも分からない。


 分からなければ、相手から接触があるまで待つしかないのが現状である。


 さらに都合の悪い事に、ネヴェルに三人いる魔法使いのうち二人は王都の会議に出ていて不在な上、誘拐犯の一人が竜人族だと分かり、兵士達には動揺が広がっていた。




 * * *




 事件の直後エルムは、ストラディゴスに対して、対応の不手際と犯人と知り合いである事に憤っていたが、それ以上に小娘に出し抜かれた自分の不甲斐なさに腹が立ち、オルデンの為、さらわれた彩芽の為に、救出の準備を進め始めていた。


 その中で、ネヴェル騎士団副長のストラディゴス・フォルサは、玉座の間にて領主オルデン公爵と騎士団長エルムによって直々の事情聴取を受けていた。

 その場には、フォルサ傭兵団出身の騎士、兵士、使用人にメイドと、全員が傍聴に集められ、さながら裁判である。

 しかし、ストラディゴスの過去の過ちを今責めている暇など無く、犯人に繋がる情報の収集が最優先に行われるのだった。


 オルデンは、家臣達にこれ以上の動揺が広がらないように平静を保っているが、彩芽の事が気がかりでならないのは皆にも分かっていた。




「フォルサ、では、犯人はその二人は間違い無いんだね?」

「恐らくは……」


 自身の犯した過去の罪が追ってきている。

 ストラディゴスは、力なく答える事しか出来ない。


 直接的には、ストラディゴスに非は無いと言える。

 だが、間接的に考えると、自身が全ての原因に思えてならない。




 竜人族のフィリシス、猫人族のアスミィ。

 アスミィがハルハルと言っていたのを素直に受け取るなら、恐らく、裏にはダークエルフのハルコスがいる。

 もしかすると兎人族のテレティもいるかもしれない。


 そうストラディゴスが伝えると、その四人を知っている元傭兵団員達から、現在彼女達がどこに所属しているのか、何者なのか等が聞かれ、活発な意見交換が行われる。


 そうすると、どうしても過去の事件に触れざるを得なくなり、ストラディゴスは衆人環視の前で自身がどんなに愚かな事を行ってきたのかを、仲間達の口から客観的に聞かされる事となった。


 これは、彩芽と出会ってしまった今のストラディゴスには、相当に堪える拷問に等しい事であった。

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