世界地図
オルデンは、首から下げていた鍵で扉を開け、中に入る。
彩芽も続いて部屋に入った。
そこで目に入って来た物を、彩芽は知っていた。
「……!」
それは、巨大な額縁に入れられた彩芽の世界の古地図であった。
地図としてかなり大きく、大きな複数の紙をつないでいるのが分かる。
経年劣化が酷いが、焼けやボロボロになった折り目を見ると、折りたたんで持ち運び、実際に使われていた物の様であった。
メルカトル図法ではなく、ランベルト正積方位図法で描かれていて、地図には大きな丸二つの中に大陸や島が描かれている。
驚きながら彩芽が近づき、地図を見る。
彩芽が黒板に描いた地図とは南北が逆転し、さらにヨーロッパを中心に描かれていた。
だが、多少、歪な形だがちゃんと日本も載っていて、重要な大陸にも抜けは見られない。
文字は英語で表記されており、一色刷りだがちゃんと印刷されている所を見ると、そこまで古い物では無いらしい。
「キジョウアヤメ、あなたのいた国はわかりますか?」
「ここ! ここです!」
彩芽は興奮気味に地図の左端にある列島を指さす。
「では、これが何と書いてあるか読めますか?」
そう言ってオルデンが指さしたのは、ヨーロッパだった。
彩芽が顔を近づけて文字を見る。
そこには、手書きでこんな事が書かれていた。
「This is my country……ここが私の国? イギリスの人?」
これで良いのかとオルデンを見ると、その瞳だけがらんらんと好奇心に輝き、異常なまでの興奮が彩芽にも伝わってくる。
それでいて落ち着いて見えるのに、明らかに目の前の領主様の、彩芽を見る目が変わっていた。




