依存
出会ったその日から、ルイシーはストラディゴスと共に生きる事を余儀なくされた。
だが、土地も家族も失った今、当ても無く孤児になるよりは、状況はマシとも考えられた。
傭兵達の中には、さらってきた村娘を奴隷として売り飛ばす者もいたが、恋人や妻にする者も当たり前にいるのだ。
ルイシーもそれは常識として承知であったし、戦火で村を焼け出されて親の仇を取ろうなんて考える者は、殆どいないのが現実である。
ルイシーも、誰が仇であるかなどは正確には知らなかった。
自分を犯した連中のうちの誰かとしか分からず、それがストラディゴスなのでは無いかとも疑っていた。
それでも生きる為には、環境に順応しるしかないと割り切り、親の仇かもしれない無法者に媚びを売って卑しくても生きるのが現実の一つであった。
当然、ルイシーは残りの人生を、自分の家族を殺した仲間の、若い巨人の玩具にされて終わると思っていた。
しかし、ルイシーが覚悟をして巨人のベッドで待っていても、ストラディゴスが抱きに来ることは無かった。
ストラディゴスはルイシーの傷を手当てし、服と食事を与え、寝床を共にした。
ルイシーは、隣で眠るだけの巨人を殺して逃げようと何度となく思った。
しかし、先の見えない人生と、保身を考えると、それを実行する事は出来なかった。
一方で巨人は、あわれな村娘を救うと同時に、無意識の中で過去の自分を救おうと必死だった。
自分が孤児になった時にして欲しかった事をして、ルイシーと自分を、どうにか癒そうとしていたのだ。
巨人は稼ぐ為に戦場に行き、怪我をして戻ってくる。
ルイシーは、傷の手当てをするのが日課になっていく。
そんな日が続いたある日、ルイシーは気付く。
いつしか、自分が今日を生きる為に戦場からストラディゴスが戻る事を願う事をやめていた。
ただ、その身の無事を願っている自分がいたのだ。
ルイシーは、自然な成り行きで巨人の事を、愛していた。
いつしかストラディゴスは、ルイシーに求められて、互いに慰め合う様に毎晩その身体を抱くようになる。
ここまで聞けば、戦場で良くある話でしかない。
ここからが、ある意味でストラディゴスの転落の始まりである。
純朴だった幼い村娘は、ストラディゴスを喜ばそうと美しく成長し、彼の為に昼も夜も尽くした。
ルイシーは、ストラディゴスの幸福こそが自分の幸せと感じるまでに、深い愛情を注ぎ始めたのだ。
ストラディゴスが自分の中に過去の自分を映す様に、ルイシーもまたストラディゴスの中に自分の未来を見ていた。
そんな、歪でも幸せだったある日、事件が起きた。




