出会い
「えええええええええええええええええーーーーーーーー!!!???」
と言う、意味のある言葉にもならない動揺しか湧きあがらない。
ポケットのスマホを取り出し見ると、五分前の新着メッセージがホーム画面に表示されている。
どうやら、再就職は成功したようだが、時間は十二時丁度を指し電波は圏外とある。
その直後、圏外の表示の横で赤いバッテリーマークが点滅すると、画面が無慈悲にもブラックアウトしてしまう。
これは充電のし忘れであり、停電は関係ない。
ヤバい。
メッセージにとりあえず返信したいのだが、スマホは反応しない。
とりあえず落ち着こうと、タバコを口に咥え、ライターで火をつけようとする。
だが、最近補充を怠っていたせいか、ちょうどオイル切れを起こし、火がつかない。
「そんなぁ~」
これにはスマホのバッテリー切れよりも大きなショックを受け、その場で打ちひしがれる。
やけくそにビールを飲もうと手に持った缶を見ると、猫缶である事に気付き、更に落ちこむ。
あまりの暑さにビール程度の低アルコール飲料を数口飲んだぐらいで、あり得ないバッドトリップでもしたのか、全てが夢なのか。
下手をすると熱中症でアパートの中で、自分は今まさに死にかけているのではないかとまで考え、頬を強めにつねる。
目は覚めず、ただ頬が痛む。
もう一度目を閉じ、後ろを振り返ると、そこにはやはり見た事の無い町並みが広がっている。
夢では無い異常事態に目と眉を引くつかせていると、不意に誰かに声をかけられた。
「よう、そこのお姫さま」
えらく低く渋い、身体がかなり大きな男性の声だった。
こんな事態だが、とりあえずライターをポケットに押し込み、猫缶片手に返事をする。
「あの、よかったらで良いんですけど、火貰えませんか?」
とりあえず、一服して落ち着こうと思ったのだが、どうもそうはいかないらしい。
「あ、何の話だ? それよりお姫さまよ。あんたいくらだ?」
声のする上の方に振り返ると、そこには身長が三メートルを軽々超える髭面でマッチョの大男が立っていた。
彩芽が一メートル七〇センチの身長なので、自分よりも身長が一メートル以上高い所にある顔を見上げる事になる。
大男と目が合うと、驚きのあまり口からタバコが零れ落ちた。