ルイシー
「お前さ、さっさといつもみたいに抱いちまえば?」
「出来るか、そんな事!」
ストラディゴスは、女性を一度もデートに誘った事も無い初心な少年の様な、弱気な事を言い始める。
しかし、ストラディゴスは実際、どうやって男女の仲が進展していくのか、あまりにも知らなかった。
少なくとも、今まで自分が経験してきた方法を採用して、上手く行くとは思えなかったのだ。
* * *
初めて彼が女の温もりを知ったのは、まだ背も伸びきらぬ十代だった傭兵になって間もない頃。
数人の孤児の集まりから始まった、まだ名前も無い小さな傭兵団で、金の為、生きる為に戦場を駆けまわる事に限界を感じ始めた時だった。
より多くの金を安全に稼ぐ為には、優秀な先輩同業者から学ぶのが近道である。
そこでストラディゴス達は、当時マルギアス王国で名を馳せていたフォルサ傭兵団に入る。
すぐに腕っぷしを買われ、ストラディゴスは前線の敵補給線にある村の焼き討ちに参加する事になる。
戦場では勝者による略奪・凌辱は、当然の権利である。
少なくとも、この世界の戦場では今も通用する常識であった。
野蛮な行為を取り締まる法律は無く、それらの行為を勝者がどう思うかの話でしかない。
戦争と言う殺し合いが許される非日常の環境では、殺人よりも軽んじて考えられる罪を取り締まる事は、日常よりも遥かに難しい。
勝者達は、生き残った敗者に辱めを与え恨みを買ったとしても、最後には殺してしまえば結果は同じ事となる為だ。
そんな世界に飛び込んで、ストラディゴスが初めて女を知ったのが、他の先輩傭兵達に散々輪姦された、戦火で焼け落ちた村の娘相手だったとしても、何も不思議は無かった。
まだ若い彼は、その時は見張りをさせられていた。
手がかじかむ季節。
焼け落ちた村の中。
まだ無事な、民家が一つあった。
自分が見張る扉の向こうで不愉快な行為が行われている事は当然知っていたし、止めたいという気持ちが無かった訳では無い。
だが、いくら巨人だとしても戦いの経験が浅い若造に、武装した手練れ揃いの傭兵達を止められる筈も無い。
扉の中で行われていた事が済むと、まだ若いストラディゴスは当時仲間だった先輩傭兵に部屋に入る様に言われる。
当時のフォルサ傭兵団の団長と、その部下たちがベルトを締めなおしているのが目に入る。
そこには、逆らう気力も失った幼い少女が、汚され、怪我を負わされ、血に染まった床に倒れていた。
少女の名前は、ルイシーといった。




