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親子のような

 ストラディゴスは本日のメインディッシュ、豚(っぽい生き物)の丸焼きを昨日の様にナイフで切り分け、大きな手で肉の塊を持つと彩芽の口に直接持っていく。


 それに対して彩芽は、まったく抵抗も疑問も無く「あ~ん」と口でキャッチし、もっきゅもきゅと口いっぱいに頬張り食べ始めた。




 その一連の行動を目を細くして見ていたエルム。


 彩芽に「少し失礼する」と断って立ち上がると、どうしても今伝えたいのか、ストラディゴスの傍まで行き、耳を貸せと合図し、その場でコソコソと話し始めた。


「お前に面白い事を教えてやる」

「なんだ急に」

「これは人生の先輩としてのアドバイスだ、心して聞け」

「いいから早く言えよ。アヤメが待っているだろ」


 ストラディゴスが視線を彩芽に向けると、彩芽はまだ肉を飲み込めておらず、変わらずにもきゅもきゅ噛みしめている。

 それを見てストラディゴスは、なんて可愛いのだろうと思う。


「俺には、親鳥が雛に餌をあげている様にしか見えない」


 エルムのアドバイスに、ストラディゴスは肉を自分の口に運びながら少し考える。


「それは……どういう意味だ?」

「お前が昼に俺に話した話、恋愛童貞エピソード覚えてるか?」

「だから違うって言ってるだろ」


「はぁ……お前は、ようやくチェリー卒業でいい気になっている若造だ。でもな、卒業ってのは始まりなんだ。わかるか? 恋愛童貞卒業って言うのは、恋愛初心者って事。それでな、お前は初日にして進む方向を早くも間違っている可能性がある」

「はっきり言えっての」


 ストラディゴスはエルムの話を聞きながらも、空になった彩芽の口にまた肉を運ぼうとしている。

 その動きが、エルムの次の言葉でビクリと止まる。


「お前、父親と娘みたいな関係になりつつあるぞ」

「………………ん?」


 ストラディゴスが「アレ?」と思った。

 テーブルの上で止まった巨人の手につままれた肉に、彩芽はテーブルに身体を乗り出してパクリと食いついた。




「お前がそれが良いってなら、俺は止めないが」


 ストラディゴスは、すっくと立ち上がる。

 そのままエルムの背中を押して食堂の外に歩いて行く。


 急に知り合いが近くからいなくなった彩芽は、肉を噛みながら、やはり視線は二人の姿を追っていた。


 彩芽の目には、オーバーに頭を抱えて、エルムに何かを訴えているのか助けを求めているのか、人生の道に迷った巨人の姿が見えていた。

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