ゲーム説明
「勝者は一人。一位の全どりだ。勝者は敗者から一千フォルト分の働きと、言う事を何でも一つきいてもらう権利を与えられる」
「はい」
「それでいい」
「あと、このルールは後で正式な契約として魔法で刻む。つまり、踏み倒しは、俺も含め誰にも出来ない。特にお前だが、わかってるよな?」
「ちっ、わかってるよ」
エルムは、彩芽とストラディゴスが同意した事を確認すると、満足そうにマントの下を弄り始めた。
「ゲームはカード。要するに運の勝負だ。問題あるか?」
エルムは服の下からカードの束を取り出した。
それを見て、ストラディゴスは口を出さずにはいられない。
「お前……まさかそれ、わざわざ持ってきたのか?」
「趣向は凝らすべきだろ? さあ、アヤメ、これのルールは知ってるか?」
そう言うとエルムは絵の書かれたカードの束を、扇状に広げて彩芽に見せた。
彩芽は首を横に振る。
「ふむ、なら簡単だから説明するぞ。カードをシャッフルして、それぞれ三枚配る」
エルムはカジノのディーラーの様な慣れた手つきでカードを切り、さっさと配り始めた。
「お互いカードは表にして説明するぞ? 見りゃわかるが二十一枚のカードには、それぞれ『1』から『5』までの数字が書かれている。数字は四色の四セットあって、この太陽のカードは一枚だけあるって事だ」
「うん」
カードを見ると、星が星座風に数字の数だけ並んでいる。
星と太陽の柄のカードは、ペン画で印刷されているが印刷精度が低いのか手作り感があり、独特の味があった。
「太陽は、どのカードとも対になれる。数字は小さい程強く、色は白・黄・赤・青の順で強い。これを本番では相手に見せずに、一回だけ二枚まで山札から交換が出来る。交換したカードは、墓場に表にして重ねて置いていく」
彩芽は、要するに『5』までのトランプでやる三枚ポーカーかと思いながら、うなずいた。
トランプを知っていれば、確かに何も難しい事は無い。
「あとは、お互いカードを並べて数字を一番小さくして見せ合うだけだ。簡単だろ? すぐに終わる」
エルムの説明で、ポーカーとは役の作り方が違うのは分かるが、それでも単純なルールだと思った。
彩芽は自分の理解が正しいか、確認の為に質問する。
「並べるって、『111』が一番強くて『555』が一番弱いって事で良いんですか?」
「おっと、それを今から説明しようと思っていたんだが、同じ数字は重ねる事が出来る。つまり、1を三枚重ねて『1』にするのが一番強い役だ。一種類でも同じ数字が揃えば二桁の数字に出来るって言う事だ」
「なるほど」
「この勝負を一位に三回なる奴が出るまで繰り返す。三連続で一位になれば、その時点で終わりだ」
エルムはカードを回収すると再びシャッフルし、テーブルの上に配り始めた。
カードゲームに慣れている様子で、その動きだけで運のゲームの筈なのに強そうに見えるのだから不思議である。
「あと一つ、最初に数字のカードを一枚表で出して、数字が一番小さい奴から右回りにカードチェンジだ」
「一枚見せたカードは、手札に戻すんですか?」
「そうだ」
彩芽は、手札プラス他の人の見せたカードで引きやすいカードを推測するのかと、ルールを理解し始めた。
引く順番では無く、捨てる順番の取り合いである。
大きい数字を選んでカードチェンジの順番を後にした方が、墓場に置かれるカードを見てから選択出来るが、相手に渡していい数字情報がどれかを考えつつ、良い役が揃う確率を考えてプレイしなければならない。
なるほど、どうしよう。
彩芽は、内心、少しだけ不安になった。
実は、こういうゲームが昔からあまり強く無いのだ。
はっきり言ってしまえば、賭け事においてだけ、ここぞと言う時の引きが弱いタイプであった。




