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良い人

 言いづらそうにされる説明。

 聞いているうちに、二日酔いで悪かった顔色に別の不安な色が足されていく。


「わ、私ストラディゴスさんの服に、吐いちゃったの?」


「まあ、そう言う訳だ。本当に何も覚えて無いのか? 何かちょっとぐらいは?」


 彩芽は首を横にふり、

「もしかしなくても、私の服も?」

 と、自分が裸だった理由に行き当たる。


 ストラディゴスは黙って首を縦に振る。


 それに対して、彩芽は無言でジェスチャーをして、口もとにあてた手をぱっと広げ、こんな感じ?

 とやると、ストラディゴスは返答のジェスチャーをやはり無言で、自分の手で自身の肩を撫でおろし、被害ヶ所を分かりやすく説明した。


「本っ当に、ごめんなさい!」




 この時、ストラディゴスは彩芽に細かい事は伝えずに「酒場で酔いつぶれて、一服した後に城まで連れてきたら、リバースした」と、大分要約して説明していた。

 覚えていない相手に詳細を話して、同じ反応が返ってくるか分からないのが理由だ。

 彩芽が覚えていない時点で、告白しようとした事は彩芽が思い出すまで黙っていようと心に決めていたのだった。




「もういいから、酔い覚まし持って来るまで静かに寝てろ」

「え、でも」

「いいから」


 そう言ってストラディゴスは、彩芽の身体を、下からすくう様にひょいとお姫様抱っこで優しく持ち上げると、そのままベッドに連行する。

 大人しくベッドで横になり、彩芽は昨日の話を思い出す。


「ねぇ」

「なんだ? 他に欲しい物でもあるのか?」

「ううん、昨日さ、アコニーの所で」

「うん?」


「ベッドは一つしか無いって言ってたじゃん。もしかして、私に譲ってくれたの?」


「……ああ、そんな事か。床に寝かせておくわけにもいかないだろ」


 ストラディゴスは、少し照れ臭そうに答える。


「でも、それだとストラディゴスさんが床なんじゃ?」

「他の部屋にベッドならある」


「それなら、私をそっちで寝かせた方が良かったんじゃ」

「おいおい、あるって言っても兵士の宿舎だぞ。他に男が大勢いる大部屋に裸のお前を寝かせられるかよ」


「……裸」


 彩芽が黙ってストラディゴスをじっと見る。


 視線の意味を考え、ストラディゴスは取り乱して慌てだす。


「まて! 服を脱がせたのは俺じゃないし、裸だって見てないからな! ここに運んだのも身体を洗ったのも全部、城のメイドだからな!」


「……ぷっあははは!」

 彩芽は慌てる巨人を見て笑い出した。


「な、なんだよ」


「ははは、だって、なんとなくそんな事だろうって思ってたから」

「どういう意味だ?」


「だってさ、ストラディゴスさんエッチだけど、実は良い人でしょ?」

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