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のる

「ねぇ、そう言えば火ある?」

 彩芽の唐突な言葉に、ストラディゴスは我に帰る。


「火ぃ? 何するんだ?」

「タバコ」

「その辺のランタンので、いいか?」

「なんでもいいよ」


 そんなやり取りをすると、彩芽を一度地面に下ろし、ストラディゴスは密かに目を腕で拭ってから、その辺の建物の玄関を上から照らしていたランタンを一つ、勝手に持ってくる。

 ランタンの蓋を開け、彩芽はようやくタバコに火をつける事が出来た。


「ふぅ」


 独特の煙の臭いが周囲を包み込む。

 ストラディゴスがランタンを元に戻すのを見ながら、彩芽はこんな事を言う。


「ねぇ、背高いと、どんなふうに見えるの?」

「ん? 肩にでも乗ってみるか?」

「いいの?」

「いいから、ほら」


 ストラディゴスが姿勢を低くして大きな手に乗れと差し出す。


 彩芽はサンダルを脱ぐと、サンダルを片手で持って、裸足になってから手の上にフラフラと乗った。

 ストラディゴスは、彩芽を片手で軽々と持ち上げ、自分の肩に乗せる。


「立つぞ」

 彩芽はグラリとバランスを崩しかけるが、ストラディゴスの手で支えられる。


「頭につかまれ」

「待って、体勢を変えるからさ、一度肩の上に立つよ?」

 彩芽は、思っていたより座り心地があまり良くないと、フラフラの足で肩の上に立ち上がる。


「変えるって、おいそんなところで立つと危ないぞ」

 ストラディゴスが落とすまいと手で支えるが、彩芽はお構いなしに勝手に動く。


「平気平気」

 そう言って、ストラディゴスに肩車をされる形に座りなおした。


 彩芽の足をストラディゴスの太い首の横に放り出し、大きな頭を抱え込む。

 後ろで縛っているストラディゴスの髪の毛がくすぐったくて彩芽は髪の毛のポジションを横にそらし、頭髪の編み上げを持ちての様にして掴んだ。

 当然、ストラディゴスの頭の上には、柔らかい豊満な胸がたぷんと二つ乗っている。


「あはははは、高い高い!」


 そう言って彩芽はストラディゴスの後頭部に抱き着いている。

 例のごとく、完全に酔っぱらいの悪ふざけ。

 だが、ストラディゴスの方はと言うとすっかり酔いが醒め、視界の端をブラブラとちらつく足を大きな手でやさしく押さえた。


 その時、独特な匂いがした。

 鼻の奥、脳を直接刺激する甘い蜜の様に感じる何か。

 恐らく、彩芽の体臭だろう。

 一度、その匂いに気付くと、頭の奥が痺れ、くらくらしてくる。


 落とすまいとする以外の意味で、ストラディゴスは、段々と前傾姿勢になりつつあった。

 理性で本能を押さえつけ、紳士であろうと努めるのだが、昼間に何度も発散したというのに見た事も無い程に大きく育った欲望が解き放たれるのをうかがっているのが分かり、ストラディゴスはヤバいと呼吸を整える。


「ふぅ、ふぅ、ふぅ、って、おい、あまり暴れるな!」


 頭部を後ろから包み込む柔らかい感触と匂いに、すぐにでも彩芽の事を部屋に連れ込んで獣の様に襲いたい衝動に駆られる。

 だが、そんな事は絶対にしたくないと、自分の中に強力な抵抗感がある事も同時に分かった。

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