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私は異世界で百合の花園(ハーレム)を創ることにした。  作者: 虹蓮華
第1章「異世界生活を始めよう」
10/43

本編1-8「冒険者、始めてみました」

2018/07/06

・フォーマットを変更しました。

・本文に、極軽微な加筆と修正を加えました。

 冒険者協会エングリンド支部は、領都内の中心部、中央交差点の一角に建っており、周辺の民家が木造二階建てなのに対し、煉瓦造りの三階建てと、それだけで他と一線を画す立派な建物だと理解出来た。


 冒険者協会の前まで来たところで、エマと別れ中に入る。

 中の様子は、役所の待合室に立ち飲みのテーブルが並んでいる状態と表現すれば伝わりやすいだろうか……。


 あ……。勿論、私は行った事無いよ? なんとなくそう思っただけ。


 役所と違う点は、手続きを待つ人達の目が生き生きとしている所だろう。

 寧ろ、ギラついている? 私達を見つけた目が??

なんだか、とっても見られている気がする。口笛を吹く音まで聞こえた気がするが、気のせいだろう。人間とエルフの美少女が云々とひそひそ話する声だって、空耳に違いない。うん、気のせいにして置こう。


 私はティアを連れて、丁度目の前にいた受付のお姉さんのところまで行く。


「あの、冒険者に登録したいんですけど……」


「え? 依頼では無く、登録、ですか?」


 一瞬キョトンとするお姉さん。気持ちは分かりますが、登録で合ってます。


「ええ、依頼ではなく、登録です」


 念を入れるため、ニッコリと笑い、ワザと復唱する。

 すると、こちらが本気なのを悟ったお姉さんは、


「畏まりました。それでは、こちらの板に判る範囲で結構ですので、必要事項をご記入下さい」


 そう言うと、黒板を小さくしたようなものと、チョークのようなものを手渡してきた。


 それらを受け取り、一旦記入台に戻る。

 さて、名前は必須として、他に何を書くべきか……。


 出身地? 聖霊の森なんて書ける訳が無い。――無記入――。


 希望職? 剣士とでも書けば良いのだろうか。

 聞けば、本人が希望した場合、パーティーを組む際のマッチングに使われるそうだ。


 ならば、ここも無しで良いだろう。――無記入――。


 気が付けば、名前以外が全部白紙という、とんでもないものになってしまっていた……。

 こんなんで大丈夫かなあ……、なんて思いながら受付に持って行くと、あっさりと受理されてしまった。

 冒険者という職業は水物らしく、出自不明や偽名など、珍しくも何とも無いとの事であった。


「それでは登録料として、銀貨で3枚分頂戴致しますが宜しいですか?」


「ええ」と頷き、ティアから借りたお金を渡す。


「確かに承りました。これより冒険者証を発行致しますので、少々お待ち下さいませ」


 そう言って、お姉さんは奥へと消えていった。

 近くの立ちテーブルでティアと雑談をしていると、十分程経過した頃、名前を呼ばれたので再びカウンターへと向かう。


「お待たせ致しました。こちらが、冒険者証になります」


 そこには、楕円形の5センチほどの金属の板が、トレーに載せられた状態で置かれていた。


 私はそこから板を受け取る。

 鉄で出来た金属板には、片面に星印が一つと私の名前が刻まれ、もう片方には皇国の紋章が刻まれていた。

 微かに魔力も感じられる。恐らく、この魔力が偽造防止と本物である証左の役目を持っているのだろう。


「これで貴女は、皇国内において冒険者として認定され、活動出来るようになりました」

「引き続き、冒険者としての仕組みと諸注意を聞いて行かれますか?」


 答えは勿論、『はい』だ。


「お願いします」と答えると、その場で説明が始まった。



「先ず“冒険者”とは、国家が認めた依頼請負人という立場になります。国は貴女を冒険者として身分を保証しますが、それだけです。国民では無い事をご理解下さい」

「次に“依頼”についてです。依頼は自分で解決出来ない問題や代わりに仕事をして貰いたい時に持ち込まれるものであり、依頼の難易度によって報酬が変わります。当然、難しい程報酬も高いのですが、新人が受けられるのは極々簡単なものだけになります。これは国が保証する以上、失敗されては困るからです」


「難易度と級位について説明致します。この二つは連動しており、級位に応じた難易度の依頼を請けたり、又は斡旋を受ける事が出来ます。級位は――


 見習い――☆(シンガ)

 初級――☆☆(ダブレ)

 中級――☆☆☆(トルプ)

 上級――☆☆☆☆(スクア)

 特級――☆☆☆☆☆(ペンネ)

 超級――☆☆☆☆☆☆(ヘクサ)


となります。これ以上の級位も存在はするのですが、現実としてヘクサが最上位との認識で問題ありません。因みに、一般的に冒険者と呼ばれるのは『ダブレ』からであり、一人前として扱われるのは『トルプ』からとなります。人口が一番多いのもこの級ですね」


「昇級の条件は幾つか御座いまして、


 ――依頼をこなすことで実績と貢献値を積む事。尚、貢献値は公開されておりません。

 ――依頼の途中で上位の難易度を達成する事。これは滅多に起こりません。

 ――昇級試験を受け、合格する事。不合格だった場合、その級では二度と受けられません。


主にこの三点となりますが、これらで到達出来るのは『スクア』までとなります。『スクア』まででしたら力さえあれば誰でも成る事は出来るのですが、それ以上の級は人格やこれまでの貢献値等が加味された上で認定される事になります。貴女は今日登録をしたばかりなので『シンガ』ですが、シンガからダブレへの昇級は簡単で、なんでもいいので一つ依頼を達成すれば、ダブレへ昇級する事が出来ますよ」


 ここで興味本位で“勇者”の級位について尋ねると、「勇者様に級位を付けるなどと恐れ多い事なのですが、敢えて御付けするならば、『オクル』――竜級(☆8つ)――は下らないでしょう」との事だったので、やはり自分が勇者の資格を持つという事は、黙っていた方が良さそうだ。

 私が質問をした事で、ここで一旦区切りを付けるらしく、


「ここまで一息でご説明をさせて頂きましたが、これまでの点で他に何か不明な部分は御座いますか?」


 と聞かれたので、


「依頼と報酬の件なのですが、報酬を得たい場合には、依頼が来るのを待つしかないのでしょうか?」


 要領を得ない質問だったかも知れない……。

 補足しようか悩んでいると、意図を汲み取ってくれたらしく、


「その心配は御座いません。依頼は市井からのもの以外に、国が協会を通して依頼する、常設依頼というものがあります。これは主に、魔物の討伐や賊の取り締まり、薬草類の採取等が挙げられます。サクラガワさんには、討伐系はまだ危険ですので、報酬は安いですが採取系の初歩難易度を請けられるのが宜しいでしょう」


 受付のお姉さんはこれで十分な説明をしたと思っているようだが、討伐系についてまだ肝心な情報を確認していない。

 そこの追加説明を要求すると、少し驚いた様子を見せてから、


「失礼致しました。魔物の討伐では、確認の為にその魔物の一部を提出して頂きます。また、魔物によっては、体の一部が貴重な装備品の材料となるものや、珍味として重宝されているものもあり、それらを獲得された際には、こちらにお持ち頂ければ高値にて買い取らせて頂きたく存じます」

「賊の取り締まりでは、捕縛してこちらまで連行して頂く事になります。可能な限り生命に差し支えのない状態を望みますが、最悪生死は問いません。ですが、一部の賞金首を除き、死んでいた場合は報酬が下がる旨、ご承知置き下さい。それと、先程も申し上げた通り、討伐は大変危険なものです。挑戦されるにしても、トルプに昇級してからを強くお勧め致します」


 最後になんだか念を押されてしまった……。


 確かに傍から見れば、功を焦る余り自ら危険に飛び込もうとして居る、いたいけな少女に見えなくも無いかも知れない。

 そんな心配、微塵も必要無いんだけどね……。


 私は、「わかりました。注意します」とだけ答えて、続きを促す。


「では最後に、諸注意ですね。皇国の冒険者証をお持ちであれば、それが身分証代わりとなる為、国内の移動であれば手形は不要です。入街料も免除となります。但しそれは、皇国に貢献して頂いているからであり、一定期間活動が無かった場合、スクア以下では冒険者登録を抹消されてしまいますのでご注意下さい。それと、隣国である、帝国と王国にも似たような組織で、帝国では『傭兵組合』、王国では『依頼斡旋所』というのが存在してまして、彼らとは相互協力の関係を築いてはおりますが、別組織であるため、今後そちらで活動される際には、それぞれの組織に登録し直して頂く形になります」

「ご説明は以上となります。何か質問は御座いますか?」


 幾つか気になる単語があったが、取り急ぎ確認するべき点は……、


「では最後に一つだけ。依頼は今日から直ぐに請けることはできますか?」


「ええ、勿論可能です。シンガですと、協会依頼で薬草採集がありますね」


「では、それでお願いします」


「畏まりました。こちらは常設依頼ですので、特に個別の依頼書等は御座いません。依頼要綱に載っている種類の薬草を直接採取して、報告カウンターにお持ち頂ければ結構です」


「成程、了解しました。それでは、これから宜しくお願いします」


「こちらこそ、宜しくお願い致します。我々協会は、新たに仲間になる貴女を歓迎致します」


 最後にぺこりと頭を下げた受付のお姉さんに別れを告げ、依頼掲示板の前へ移動する。

 掲示板には大小様々な紙が貼られていて、パッと見で8割ほどが埋まっている感じだったが、それが多いか少ないかは判らない。


 それらに目を通して行くと、装飾品目的の収集系討伐依頼が多いことに気付く。次いで、珍味目的の狩猟系討伐、希少野草の採取と続く。それらで4分の1程度を占め、残りが魔物の被害による駆除依頼だった。


 魔物の駆除依頼では、ゴブリンが貼り出されていた。というより、ゴブリンしかない。しかも、中にはボロボロになってしまっている物まである。

 この世界でもゴブリンは多方面から不人気なようである。

 実害の面で見ても、とある作品らの様に人を攫う事は無く、食料目的で畑が荒らされたり、家畜が攫われるだけだったりするので、優先度はとても低いのが理由だった。


 逆に、人を襲うのはオーガやオークといった大型魔物であり、これらは人を食料にもするとの事だったので報酬も高く、優先的に討伐される。

 その為、貼り出された直後に誰かが受けてしまい、掲示板には残らないのだ。


 掲示板の端の方に、他のより少し大きめな紙を使った、常設依頼書が貼ってあった。

 そこにある要綱を読んでいると、隣から声を掛けられた。


「ねえねえ、君達。今日冒険者になったばかりの新人ちゃんだろ? そんなどうでもいい依頼なんかより、ベテランのおじさん達と一緒に狩りに行かないかい? 手取り足取り色々教えてあげちゃうよ? 何なら、狩り以外の経験だって積ませてあげちゃうぜ?」


 ヒヒヒ、と気持ち悪い声を出しながら、それだけでも不快で堪らないのに、あまつさえ肩に手を回そうとして来たので、それを素早く手で払う。


 一瞬キョトンする男に向かって、


「結構です。それと、勝手に触らないで貰えますか?」


 軽く睨みを利かせながらそう言い放つと、男の後ろで座っていた者が数名立ち上がり、


「おいおい、お譲ちゃん。先輩の親切は素直に受け取って置くものだぜ?」


 なんて言い出すものだから、『チッ、面倒くさいな。こいつらシメるか?』なんて思いながら殺気を燻らせたところで、別の方から声が掛かる。


「おい、お前達! それくらいにしときな!」


 人を掻き分けながら現れたのは、大柄で筋骨逞しい女性だった。

 女性に声を掛けられ、一睨みされた男達は、


「げ、ベルカさん!?」なんて驚いた後、「イヤだなあ、唯の冒険者流の冗談ですよ……」なんて笑いながら消えて行った。


 女性は私に向かって、


「悪かったね、嫌な思いをさせて。冒険者は職業柄、ああいった粗忽な奴も多いんだが、それでも全部が全部あんな奴らって訳じゃないんだ。気を悪くしないで欲しい。あ、私はベルカ・ヨグノトースと言う。スクアの冒険者だ。宜しくな」


 その自己紹介の後、私のことはベルカで構わないよと言いながら手を差し出されたので、それに応える。


「私はクスハ・サクラガワと言います。こちらはティアル・シャルル。困っていたところを助けて頂いて、有難う御座いました」


 私がそう返礼して握手した手を離したところで、ベルカさんは右手を顎に持っていき、「うん」と一つ頷いた後、


「君達、腕は確かなようだね。シンガの採集程度なら全く問題は無いだろう。しかし、冒険者には危険が付物だ。唯でさえ、君達は目立つ。そこで、君達さえよければ私のチームで色々と学ばないか?」


 悪くない申し出ではあるのだが、丁重にお断りする事にする。


「お気持ちは大変嬉しいのですが、申し訳ありません。お見立ての通り、私も彼女も腕にはそこそこ自信があります。ですが、私はあくまで、自分一人の力でどこまで出来るのか試してみたいのです。折角の申し出をお断りして申し訳ないのですが、こればかりはお譲り出来ないのです」


 私が微笑みながらハッキリと断言すると、何か言いたげなベルカさんだったが、


「そう言う事なら無理強いはしない。但し、何か困った事があったらいつでも相談に来るんだよ?」


 そう言って私の肩を叩いた後、仲間の待つ方へと去って行った。

 私達はそれを見送った後、依頼書に書かかれた薬草の種類の確認に戻る。


 それにしても、ベルカさんはとても人が出来た人物のようである。あの人となら、今後縁があれば良いお付き合いをしても良いかも知れない。


 場が落ち着きを取り戻してからは、特に声を掛けられる事も無く、また、私達を見る目も幾分か変わっていた。

 そんな空気を背中に感じつつ、必要要件を確認し終わると、建物を後にした。

異世界冒険ファンタジーでの必須機関『ギルド』

これらを考えるのは楽しいですが、設定を煮詰める塩梅って難しいですよね。


本文中では語られませんでしたが、各級の目安と超級以上の設定もちゃんとあったりします。


中級――☆☆☆(トルプ)   一般成人男性程度の身体能力

上級――☆☆☆☆(スクア)  一線級のアスリート程度の身体能力

特級――☆☆☆☆☆(ペンネ) 野生の猛獣各種と同程度の身体能力と市民栄誉賞程度の実績

超級――☆☆☆☆☆☆(ヘクサ)戦車1台と同程度の戦闘力と国民栄誉賞程度の実績

↑この世界の人間種の実質限界↑

↓既に人の域に居ない(実力のみ、実績不問)↓

極級――☆7つ(セプト)   戦艦1隻と同程度の戦闘力。歴代最強の勇者がこの辺

竜級――☆8つ(オクル)   一国家の軍隊と同等の戦力。一度は夢見る強さだね。

神級――☆9つ(ノーグ)   神だって殺せるんじゃないかな? 尚、作中には概念すら存在しない。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 細かいですが戦車は台というよりも両ですね(どうでもいい)
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