精霊剣士の物語 〜Adasutoria〜其の二
どうも作者の伊藤睡蓮です。其の二の内容は其の一よりも濃くなるようにしました!後書きではキャラクター紹介をしたいと思います。
4,〜精霊と魔道書〜
「2年2組の担任に就くことになりました。学園長の時雨吹雪です。よろしくお願いします。」
クラスがざわついた。それもそうだ、俺だって驚いているのだから。すると夏音が、
「ねぇ、しゅう。おかしくない?なんで学園長が担任になるの?」と小声で俺に聞いてきた。すると、
「どうしてか知りたい?」と学園長が言った。聞こえていないと思っていたがどうやら地獄耳らしい。
「は、はい。どうしてかな〜って。」と言うと、
「実は………、一度でいいから担任やってみたくてあみだくじで引いたらこのクラスだったの♪ちなみに私の事は吹雪先生と呼びなさい。」とウキウキしながら言った。
「は?」クラス全員がこの時初めて息があった。
「とりあえずお疲れ様。みんな午後の授業ちゃんと受けるように!っと、それから紅葉秋翔くん。後で学園長室に来なさい。」と言って教室を出て行った。全員が俺を見た。
「しゅう。何したのよ。」夏音が言った。
「は?何もしてねぇよ。」と話していると、
「あの、くれはしゅうとさん?」と後ろから声をかけられた。後ろの席の子だ。
「あ、えっと私、上林 詩織と言います。よろしくね。」
「お、おう。紅葉秋翔だ、よろしく。そしてこっちが葉月夏音だ。」
「よろしく。」夏音が言った。
「えっと何か用か?」
「うん。昨日、”あの公園”にいたよね?」
それだけで俺は理解した。
「あの公園にいたのか?」
「うん、というか人質になってた女の人、私のお母さんなの。だから、お礼を言いたくて。ありがとう。」とお礼を言われた。突然の事で驚いたがそういう事もあるのだろう。
「そうだったのか。君のお母さん、無事で何よりだ。」と言うと、夏音は話に付いていけてないようで、
「ねぇ、しゅう。何のこと?」
「昨日色々あったんだよ。」と適当に返すとムスッとした表情になった。
「あ、後で話すから、な?」と言うと少し落ち着いたようだ。
ーーーーーー授業が終わり放課後で部活や下校する人が廊下を歩いたり走ったりしていた。
「しゅうは学園長に呼ばれてたっけ。」
「あぁ。じゃあまた明日な。」
「うん。また明日。」と教室を後にした。
ーーーーーー学園長室前に来るとイグニが、
「早く終わらせて帰ろ〜ぜ〜。」と言ったので、
「学園長に呼ばれる時点で早く終わる話じゃねぇよ。」と言い、扉を開けた。開けると目の前にパソコンを操作している学園長の姿が見えた。
「来たわね、早速話をしたいところなんだけど少し仕事が残ってて、そこのソファにでも座って待ってて。」
と言われたので言うとおりにソファに座った。学園長室に入ったのはもちろん初めてだったので辺りを見回すと、沢山のファイルが棚に入っていた。恐らく全て精霊に関する物だろう。
・・・さすが精霊使いトップ3、と思っていると、
「お待たせ。それじゃあ話をしましょう。」
「俺を呼んだ理由は?」と聞くと、
「あら?早速本題に入るのね、いいわ。単刀直入に聞くけど、あなた昨日精霊と戦ったわよね?」
「精霊……、あ、あの男か。」と言うと、
「まぁ正確に言えば精霊が取り憑いた男と、だけど。」
「取り憑いた?じゃあやっぱりあの人は無理矢理戦わせられていたのか。」
「そういう事になるわね。そこで貴方の精霊にも話を聞きたいんだけど。」と急に言われた。
「よく分かったな。さすが精霊使いトップ3だぜ。」
と言ってイグニが狐の姿になった。
「まぁ仕事上ね、分かるものよ。それより何か気配を感じなかった?」
「そうだな、精霊の気配はあの男に取り憑いてる精霊だとして、そう言えば遠くの方で”悪魔”の気配がしたな。」
とイグニがサラッと言ったので、
「は?悪魔?なんで言わなかった!」と言うと
「お前に言うと絶対追おうとするからな。今の俺たちじゃ勝てないぐらいの感じだった、殺気がな。」とイグニは少し震えていた。そのぐらいの強さなのだ。
「なるほどねぇ。悪魔か……。ありがとう、よく話してくれたわ。今日はもう帰りなさい。」
「もういいんですか?」と聞くと、
「えぇ。気をつけて帰りなさいよ。」
「は、はい。失礼しました。」と言って学園長室を後にした。
教室に入るともう誰も居らず、夕日が教室の中を照らしていた。カバンを取って昇降口に向かった。すると校門の辺りで誰かが立っているのが見えた。
夏音だった。しかもかなりの荷物を持っている。
「何してんだ、お前。」
「実はあの後すぐに家に帰ったんだけど、”ママ、ちょっと世界一周旅行に行かない?♪”、”夏音はどうするのよ?♪”
、”秋翔くんの家に泊まらせてもらえばいいさ♪”、”そうね〜”って言って世界一周旅行に行っちゃった……。」
「お前の家族やっぱおかしいわ……。」
「そこは私も同感。」
「まぁお前んとこの家族の事はよく知ってるし、来いよ、母さんの部屋空いてるからそこ使え。」
「ほんとゴメンね。」と言う会話をして学園を後にした。
ーーーーー家に着くと俺はリビングに夏音を連れてきた。
「うわー、懐かしい♪小さい頃よくしゅうとここで遊んだ気がする。」
「そんな事もあったな。」そう、あんな事が無かったら今も……。
「シュウ、おいシュウ!」とイグニに呼ばれているのに気付き、
「な、なんだ?イグニ。」
「今日の晩飯は何だ?俺はカレーが食べたいぞ!」
「カレーか……。まぁ悪くはないな。」
「じゃあ決定だな!」そんな話をしていると
「じゃあ私がカレー作るよ。葉月家特製カレーをね♪」と夏音がドヤ顔で言ってきたので
「じゃ、じゃあよろしく頼む。冷蔵庫の中にあるので出来そうか?足りないなら買ってくるけど…。」
夏音は冷蔵庫の中を確認し、
「おっけー、大丈夫そう。あ、お風呂後の苺買うの忘れてた。苺食べないとなんか物足りない感じするのよね〜。」
「じゃあ俺が買ってくるよ。夏音はカレー作っててくれ。」
「分かった。気をつけてね。」
ーーーー家を出るともう5時半を過ぎていて、雨が今にも降り出しそうだった。
「傘一応持ってくか。」そう言って傘を持ちスーパーに向かった。スーパーはここからそう遠くない場所にあるので買い物はよくそこで済ませる。途中にある河原から見る景色も綺麗で好きだ。まぁ今日は曇りで景色は楽しめないが……。
「よし、着いた。」スーパーに入り、苺を3パック買い、スーパーを出た。
「やっぱ降ってきたか。」するとイグニが、
「なぁ早く帰ろうぜ。雨はあんまり好きじゃねぇし。」と言ってきた。
「そうだな、じゃあ走って帰るか。」
河原を通り過ぎようとした時、河原に1人で立っている中学生くらいの女の子が見えた。
「あんな所で傘もささずに。」
「いいから帰ろうぜ。」
「そういう訳にはいかない。」と言ってその子に近寄り、声をかけようとしたその時、イグニが、
「ダメだシュウ!そいつから離れろ!」と言われ立ち止まると目の前の女の子が、
「あハ♪バレちゃった?もうちょっとだったのニ。」
「雨のせいで匂わなかったが、ここまで近寄れば匂いしまくりだぜ。」とイグニが言った。
「ふ〜ン。鼻がきくのネ。」そういうと女の子の中から這い出るように黒い塊が出てきて人の形になった。女の子はその場に倒れた。
「私の事覚えてル?紅葉 秋翔クン?」
「なんで俺の名前を?お前は誰だ!」
「質問を質問で返すなんて、でもまぁ名前を知ってるのはいいとして、昨日アナタト戦った男に取り憑いてた精霊って言ったらドウスル?」
「なんだと?」俺がそう言うと謎の精霊は続けた。
「あの体は微妙だったナ。今回はまあまあ楽しめたカナ。」
「イグニ!」そう呼ぶとイグニは一本の剣になった。
「火纏!」
謎の精霊は短剣を取り出し、短剣に風を纏わせた。
剣と剣が交わる。
「人をおもちゃみたいに!てめぇは何様のつもりだ!」相手を弾き飛ばして体勢を崩し、一気に近寄って剣を振った。しかし直後に横から風を受け俺は吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。
「がぁっ!……ぐっ……。」
「おいシュウ!大丈夫か⁉︎」
「なん……とかな。」
「アハハハ!まだまだこれかラヨ。この程度なら殺しても構わないと”あの方”から言われてるの。私も全力出したいんダケド。」
謎の精霊は余裕の笑みを浮かべている。
「火纏!」
「何度やっても同じダヨ!」
そう言って短剣に風を纏って距離を詰めてきた。奴は今俺を倒せると思って全力を出していない。そこを突く。
剣と剣がまた交わった。お互いが剣を振るたび火花が飛び散る。
「アハハハハハハ!コレでオワリヨ!」と言い巨大な竜巻を作り出している。
「終わるのはお前の方だ。イグニ一気に決めるぞ!」
「いつでも準備万端だぜ!」
剣の先に火を集中させた。
「紅一閃!」
剣を前に突き出した。
竜巻を貫通し謎の精霊をも貫いた。
「アレ?……そんな……バカな……ありえナイ…………。」そう言って謎の精霊は消え去った。
「イグニ、今の精霊は本当にこの間の精霊だったのか?」
「間違いない。同じ感じがした。」
「………変だ。」
「何が?」
「なぜあいつはあの子の身体から抜けたんだよ?もちろんこっちからしたら良かったけど相手からしたらいい人質にもなる。」
「それは不必要ダカラヨ。」
「なっ⁉︎お前、なぜ生きてる!」
「生きテル?アァ奴なら死んだ。私が”本体”ダヨ!」
するといつの間にか懐に入られ、首を掴まれた。
「ぐっ……。マジ…かよ!」必死に手を振りほどこうとしたが意識が朦朧としてきた。
このままじゃ……死ぬ……
そう思った時、謎の精霊の横から水の弾が命中し、俺は奴の手から逃れられた。水の弾が放たれた方向を見るとそこには夏音が魔道書を開いて立っていた。
「夏音……、どうしてここに。」
「しゅうがいつまで待っても帰って来ないからじゃない!そしたら河原でボロボロになってるし……それに……。」他にも何か言おうとしていたが、
「あなたダレ?アタシのジャマをしないでくレル?」
「そう言う訳にはいかないわね。そして名前はあんたみたいな奴に教えたくないし。」
「ソウカ……ならばシネ!」
そう言って足に風を纏い凄まじい速さで夏音の背後をとった。
「水壁。」そう言うと魔道書が光り、謎の精霊と夏音の間に大きな水の壁が現れた。
「範囲回復。」
すると俺の周りが光に包み込まれ身体が楽になってきた。
「よし、これで俺も戦える。」
「バカね、あんたは下がってなさい。身体の傷は塞がったけど完全には治ってないんだから。」
「そんな事言ってる場合じゃねぇ、あいつは強い。」
「うん。分かってる、分かってるけど私は負けないよ。」そう言った。
「アクア、術式準備。一気に畳み掛ける。」
「もう準備できてるよ〜。」とどこからか女の子の声がした。その時、夏音の張った水壁が壊された。
「アナタもナカナカおもしろいワネ。けれどこれでおしまいにシマショウ。」
「えぇ、そうね。カレー冷めちゃうし。早く終わらせましょう。」
すると謎の精霊は全身に風を纏い周りの物全てを吹き飛ばしながら突撃してきた。
「その攻撃が単純過ぎるのよ。アクア、水壁。」と言うとまた水の壁が2人の間に現れた。
「同じ技は通用シナイゾ!!」手を横に振り、水を切り裂いた。切り裂いた先に見えたのは水の槍を構えた夏音だった。
「水槍。」
水の槍は謎の精霊目掛けて飛んだ。
「ソンナ一直線の攻撃はアタラナイ!」上に飛び、槍を躱そうとしたが上には術式が張られており、
「雨弾。」
水の弾丸が降り注ぎ、身動きが取れなくなっていた。そして夏音の放った槍が身体を貫いた。
「なるほどナ……。ヤハリこの程度では倒せンカ?まぁソウでなくては……。」と言って消え去った。
「ふぅ、終わった〜。」
「すまん夏音、助かった。」
「別に気にしないで。それより、あいつについて教えてくれる?」
「あぁ、そうだな。あいつは昨日・・」と話そうとした所で、
「おいシュウ、カノン!その話は帰ってからでもいいだろ?」とイグニに言われたので、2人で目を合わせ、
「そうだな。」、「そうだね♪」と頷いた。
ーーー家に帰ってカレーを食べながら謎の精霊についての話をした。
「なるほど、精霊と人間が合体した様な感じね……、アクアはどう思う?」
「そうね〜。やっぱり取り憑いていたところからして精霊が自ら人間の身体に入った事になるわね。けど私やそこにいる火の精霊、イグニ…だったかしら?はそんな事出来ないはずよ。」
「そうだな、人間に宿るなんて無理だ。」
「って事は……どういう事だ?」と言うとアクアが、
「普通の精霊では人に宿る事は出来ない、つまり相当強い精霊か、”人為的”に何か細工をされた精霊なのか……っていう事。もちろんこの2つの仮定が合っているかは分からないけど。」と丁寧に説明された。
「なるほどね、取り敢えずこの事は明日、学園長に話をしましょう。」
「そうだな。」と話をし終わると、
「私、お風呂に入りたいけど、先に入ってもいい?」
「あぁ、いいぞ。ゆっくり浸かってこいよ。」
「うん。ありがと。」
ーーーーー着替えを持ってお風呂場へと向かった。お風呂場の手前に洗濯機や洗面台があり、着替えを置く場所もあった。服を脱いでお風呂場へと入った。
シャワーを浴びて髪を洗い、お風呂に入った。
「ふぅ〜、いい湯加減ね♪………人間と精霊、それから悪魔か……。」イグニちゃんの話だと、昨日公園で戦ったときは遠くで悪魔の匂いもしたんだって言ってた。
「一体何が起こっているの?」と顔までお湯に浸かって考えた。考えても分からない。
「それに、悪魔が出てきているから嫌な予感しかしないんだけど……。」
それから1時間ほどお湯に浸かり、そろそろ上がろうとお風呂場を出た。
着替えを取り、服を着ようとしたその時、前の扉が開いてしゅうが入ってきた。手には洗濯機に入れるのかYシャツなどを持っていた。
「あ、あの〜、夏音……さん?すいませ・・・。」と言い終わる前に顔面にグーパンチをお見舞いした。流石に自分でも顔が赤いのはのぼせているせいではないと分かった。
ーーーー当然だ。当然の反応だ。まさかあんなにタイミングよく風呂上がりの夏音と出くわすとは思わなかった。
「あいつ、怒ってるかな。っていうか怒ってなかったら不気味だな。」などと考えているとパジャマに着替えた夏音がリビングに入ってきて何も言わずソファに腰掛けた。
「ほ、ほんとにすまん!なんならもう1発殴ってもらって構わない!」覚悟を決めた。もうこの際何発でもいいから怒りを鎮めようとした。が、
「も、もういいわよ。私も考えるべきだった。」流石に空気が気まずい感じになった。何か話題を出そうとしたが2人の携帯が同時に鳴った。武精学園からのメールだった。
夏音が少し照れつつ読んだ。
「え、えーっと。”武精学園の生徒の皆さんに連絡があります。新しい授業と行事の事についてです。新しい授業はチームを作り、各々で自由な時間を過ごす、というものです。最大4人(1人でも構いません)が内容は勉強や特訓、または遊ぶ。など何でもいいです。そうしてチームワークを磨き、新しい行事に向けて頑張って欲しいのです。詳細は明日の朝、各担任にてお知らせします。”だって。」
「長くてよく分からなかった…。」
「つまりチームを作って頑張りなさい!って事よ。ねぇ、チーム組まない?」
「え⁉︎あ、あぁ。いいけど、そんな簡単に決めていいのか?」
「だって、頼りになるし……幼馴染だし。」
「お、おう。」
「ねぇ、詩織さんも誘ってみない?」
「お、いいな!それ。じゃあ明日聞いてみるか。」
そんな話をしていると、
「おいシュウ。明日起きれんのか〜、俺はもう眠いから先に部屋戻ってるぞ〜。」と欠伸をしながら2階へ上がっていった。
「そうだな、そろそろ寝るか。」
「うん、そうだね。おやすみ♪しゅう。」
「あぁ、おやすみ。」と言って2階へ向かった。
4,〜桜と仲間〜
ーーーー俺は遊園地で遊んでいた。目の前に父さんと母さんが現れた。近づこうとすると遠ざかり、手を掴むことは出来ない。
「いかないで!父さん、母さん!」
・・・・・目を覚ますと手を前に突き出していた。
どんな夢を見たのか覚えていなかったが、 嫌な夢を見ていた気がした。
台所から物音がした。1階へ降りるとそこには朝食の準備をしているのだろう、夏音が台所を使って何か作っていた。
「あ、しゅう。おはよう♪」
「おはよう。朝食作ってんのか?」
「うん。しゅう、ちゃんと起きて朝ご飯食べないとダメだよ!」
「お前は俺の母親かよ……。まぁ朝食作ってくれんのはありがてぇけど……。」クスッと夏音が笑った。
「ほら、朝ご飯出来たから座って。」
いつもならパン1枚だが、今日は 朝食の定番と言える感じの料理が並べられていた。
久しぶりな感じがした。目玉焼きを一口食べると、
「うまい、こんなうまい朝食食べたのは久しぶりだ!。」
「そう、それならよかった♪」
あまりにも美味しかったので、あっという間に食べ終えた。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした♪」と2人揃って言った。
2人で後片付けをしていると夏音が、
「少し早めに学園に向かって学園長室に行った方がいいかな?」と聞いてきた。
「そうだな、また放課後呼ばれんのもめんどいし。」
「じゃあ決まりだね♪もう10分くらいで家出るからね?」
「マジか、全然準備してねぇ。」
「もう、早く支度してきなさいよ。もうお皿拭くだけだし。」
「お、おう。ありがとな。」
慌てて2階の自分の部屋に向かい、準備をした。
ーーー「よし、じゃあ行くか!」
「うん、そうだね。」そう言って家を出た。
学園に着くとすぐに学園長室に向かった。学園長は朝からパソコンと向かい合っていた。
「あら、秋翔くんじゃない、それにあなたは同じクラスの葉月夏音さん、だったかしら?」
「は、はい。今回は少し学園長にお話があって…。」
「吹雪先生でいいって言ったでしょ?」
「ふ、吹雪先生に話しておきたい事があって来たんですけど。」
「何かしら?」急に真剣な眼差しになった。
「実は昨日・・・・・」と昨日あった事を全て話した。
すると学園長は、
「なるほど、そんな事が。話してくれてありがとね。」
「吹雪先生、何が起きているんですか?特にしゅうの周りで。」
「ごめんなさい、まだその事については何も言えないわ。けれど来る時に必ず話す。だからそれまで待っていてくれるかしら?」
「……来る時……かぁ。結局よく分からなかったな。」
と2人で廊下を歩きながら話していた。
「でもやっぱり何かが起ころうとしている、っていうか起きてる。それだけは間違いないね。」夏音の言う通りだ。
「まぁ詮索しても変な考えだけ出てくるだけだし、取り敢えずこの話は終わろうぜ。」
「うん……分かった。」と説得し終え、教室に入った。
教室に入ると結構人がいて新しい授業についての話で盛り上がっていた。
「秋翔くん、夏音さん、おはよう。」と声をかけられた。詩織だった。
「おはよう。」、「おはよう、詩織さん♪」
「そうだ!詩織、俺と夏音でチーム組んだんだけどお前も加わらないか?」
「あ、ごめん。他のクラスの友達からもう誘われちゃって……。」
「そっか、それなら仕方ないね。」
「だとすると後2人は誰誘おうか?と言っても、もうほとんどチーム組んじゃってるのか?」
「かもしれないね、まぁ頑張って探そうよ♪」
「そうだな。」と話していると吹雪先生が教室に入ってきた。
「みなさん。席に着いてください。昨日のメールの話をしたいと思います。」
と吹雪先生が言うと、みんな聞きたいらしく足早に席に着いた。
「まず”チーム”についてです。チームを最大4人で組み、チームで自由に過ごしてもらいます。チームのメンバーが決まったら生徒会室でチームの登録を済ませてください。3人で登録した後に1人追加する場合は生徒会室にもう一度行き、登録してください。ここまでで質問は?」
「チームで何やってもいいんですか?」とクラスの男子が言った。
「法に触れない事なら遊んだり、バトルしたりと何でもいいです。他に質問は?」
「いつまで決めればいいですか?」
「金曜日までには決めておいてください。後3日ですね。他には……なかったら次に進みます。」
「まぁ今のチームの話と関係していますが、生徒同士で闘う”チーム戦”を開催したいと思います。年に4回ほどしたいと考えています。優勝したチームには豪華賞品もありますよ!ぜひ私のクラスから優勝チームが出て欲しいです♪」
「なんかすごい事をさらっと言われてるんだけど……」
「チーム戦か、結構面白そう♪」
「遊びまくろうぜ。」
などクラスが盛り上がっていた。まぁ俺もかなり興奮しているが。
「チーム戦か、それってやっぱり人数多い方がいいよね〜。」と夏音が言った。
「そうだな、まぁ後3日あるから見つけられるだろ。」
「うん、そうだね♪」
ーーーーー「なぁ夏音、後1日なんだけど……。もうみんなチーム組んでて断られるんだが……。」
「私の友達もみんなチームに加わってる……。友達少ないわけじゃないんだけどみんなその場で決めたっぽくて発表初日に4人チーム組んでた。」
「まぁ2人でも登録は出来るし明日生徒会室に行こうぜ。」
「そうだね。」と意見が一致したところで背伸びをしグラウンドの方を見ると、グラウンドの脇にある倉庫に、始業式でぶつかった女の子が3年生と思われる男子3人組に連れられて入っていくのが見えた。
嫌な予感がした。
「悪い、夏音。ちょっとトイレ行ってくる。」
「え、うん。いってらっしゃい。」
教室を急いで出て、グラウンド倉庫に向かった。
「アクア、お願い。」
ーーーーーどうしよう。頭の中で出た最初の純粋な思いだ。話があるからと断れずここまでで来たが、かなり焦っていた。倉庫の入り口も2人の男が塞いでいる。
「ねぇ、君?俺たちのチームに入ってくんね?」
「後1人空きがあるからよ〜。」
「なぁ、いいだろ?」
「あ、あの私、精霊まだいなくて……弱いですし…。」
と言うと真ん中の男が、
「大丈夫、お前は戦わなくていい。……俺たちのアフターケアしてもらえればそれでいいから。」
そう言われ、腕を掴まれた。
「じゃあちょっと練習してみるか。」
もうダメだ……。目に涙が溢れてきた。
その時、先輩たちの後ろの扉が勢いよく開いた。
ーーーーーグラウンド倉庫の前に着いた瞬間に思いっきり扉を全開にしてやると前には驚いた2人、少し奥にもう1人の男、そして桜髪の女の子がいた。女の子は泣いていた。
「何やってんだ?」
「あ、なんだテメェ?」冷静になった真ん中の男が言った。
「だから何してんだって聞いてんだ。」
「この女をチームに誘おうとしてるだけだが?なんか文句あんのか?」
「文句か……あぁ、あるな。……そいつ俺のチームに入ってるから。」口から出まかせとはこの事だ。これで引き下がってくれればいい。そう思ったが、急に3人は笑い出した。
「は?お前が?こいつをチームに?」
「こんな弱い奴誰が仲間にするかよ。」
「もしかしてお前も……。」と嘲笑うように言った。
「でも悪いな、これは俺たちの物なんだ。あ、それからお前には暫く寝んねしてもらおうか。」そう言うと真ん中の男は鋼鉄のグローブをはめ、横の2人は魔道書を開いた。
さすがに我慢の限界だ。
「こい、ロック!」おまけにどうやら真ん中の奴は精霊使いらしい。
とことん腹を立たせるのが好きらしい。
「……イグニ…。あいつらを倒す!」そう言うとイグニは一本の刀に変形した。
そして次の瞬間、拳と剣が勢いよくぶつかった。その衝撃で倉庫は吹き飛んだ。
ーーーーー気がつくと水の球体のような物に守られていた。
「あ、よかった気がついて。大丈夫?」
魔道書を開いた黒髪の綺麗な人が膝枕をして
こちらを見ていた。
「わっ!す、す、すみません。」
「なんで謝るのよ。あなた一応被害者なんだからね?覚えてる?」
「被害者……。」するとさっきまでの光景が頭の中に浮かんできた。拳と剣がぶつかったときに気を失ったようだ。
「始業式でぶつかったあの先輩は……今どこにいますか?」女の人は少し迷いつつ、
「……しゅうのことかな?あいつならグラウンドのど真ん中で1人で戦ってるけど。」
「しゅう先輩……。って1人!行かなくていいんですか⁉︎」
「あいつなら大丈夫よ、多分。それにあんまり関わりたくないし……。」
その意味を最初はよく分からなかった。
「それにしてもしゅうってば無茶しすぎ、途中で私が付いてきてるの気づいたみたいだけど、まさか倉庫吹っ飛ばすなんて。」
「仲がいいんですね。とっても楽しそうです。こんな大変な場面なのに。」
なんだか自然に笑みがこぼれた。
「小さい頃からの幼馴染だからね、あ、私は葉月 夏音よろしくね。」
「私は……」言いかけた瞬間また衝撃が響き渡った。
ーーーーー想定外だな。まさかここまでの強さとは。
「おいシュウまさか弱音吐いてないよな?」
「へっ、そんな事あるかよ。」
一気に距離を詰め、喉元に剣先を突きつけた。……しかし怯むことなく、拳を構え
「岩打!」
グラウンドの地面が割れ、バランスを崩した。体勢を立て直そうとした瞬間、奴の拳が腹に直撃した。
「がっ……⁉︎」さらに畳み掛けるように後ろの2人は魔法弾を放ってきた。
間一髪で躱すが既に限界がきていた。昨日のダメージが大きかった。
「さっきまでの威勢はどうした?倒すんじゃなかったか?」
「へっ、これからだっての!」
お互い次の一撃で決めようと考えてるのが分かった。
「岩石砲!」
「紅一閃!」2人が放った直後その間に割り込むように誰かが立った。
そして2人の技を素手でかき消した。
「はい♪そこまで。」吹雪先生だった。
そして次々と先生たちが俺たちの周りを囲んだ。今まで来なかったのは周囲の安全を確保していたからだろう。
「取り敢えず武器下ろせ。まずはそこからだな。」男の先生が言った。
「イグニ…。」そう言うとイグニは渋々ストラップに戻った。3人組も流石にヤバイと気づいて武器をしまった。
そして吹雪先生が話を切り出した。
「さて、事の発端を聞かせてもらおうか。」
「私とこの子が話します。」と夏音と桜髪の子が歩いて近寄ってきた。
「夏音さん、分かりました。話してください。」
「はい。まずは……」
どうしてこうなったのか事情を全て話し終えると吹雪先生は、
「なるほど、しゅうとくんがその子を守ろうとしたのは分かった。ただし、少々やり過ぎたかな。」
「すいませんでした。」
「あの、しゅう先輩は悪くないです。私がもっと強かったら…こんな事には……。」
「しゅうとくん、いい後輩を見つけたね♪」
急に口調が変わった。
「は?あ、えっとそうですね。」
「まったく、こっちの身にもなりなさいっての。ひやひやしたわよ。」と夏音が言った。
「はいはい。スミマセンでしたーー。」
「もう、……無事でよかった。」
「しゅう先輩、本当にありがとうございました!」
「無事でよかったよ。ごめんな、怖い思いさせて。」
クスッ。と学園長が笑った。
「ま、取り敢えず今回の件は大目に見ておきます。ナイスチームワークでしたし。」
「チームワーク…あ、明日生徒会室行かないとな、夏音、それから……お前も。」
「え?私ですか?」
「言ったろ?俺のチームだって。まぁ正直まだ俺たちも2人だけだったからお前が入ってくれるとかなり助かるんだけど…だめなら別に強制はしない。」
「いえ、でも、私まだ精霊もいないし武器も上手く使えないし…戦力になりません。」
「自分の事よく分かってんじゃねぇか。それなら足りない所を直すことが出来る。それってすごい事だぜ。」
女の子は急に涙を流した。
「お、俺なんか泣かせるような事言ったか?」
「嬉しいんです……。まさか私がチームに入れてもらえるなんて……思ってもいなかったので……。」
「これからよろしくな!紅葉 秋翔だ。」
「幼馴染で同じチームの葉月 夏音です。よろしくね♪」
「”しゅう”先輩じゃなくて”しゅうと”先輩だったんですね。すみません。」
「そこ気にするとこか?別にしゅうでいいぜ。」
「では……しゅう先輩の方がしっくりきます。しゅう先輩、夏音先輩、私は弥生 春香と言います。よろしくお願いします!」
こうして、俺たちのチームに新たに仲間が加わった。
どうも改めまして作者の伊藤睡蓮です。
其の一から読んでいただいている人、其の二から読み始めた人、どちらもありがとうございます!
話す内容がまだ分からないので早速キャラクターの紹介をしたいと思います。
まずは武精学園の学園長、吹雪真冬先生です。年齢不明、精霊、武器まだ出してませんが次回……登場させるかも……しなかったらごめんなさい。
2年2組の担任で本人はあみだくじで決めたと言っているが……。実力は精霊使いトップ3です。1,2は今後登場させたいですがまだ考えてません。
最後は弥生 春香ちゃん。
16歳で武精学園に通う1年3組の生徒。桜髪のショートヘアが特徴です。武器は次回出ます。精霊は”まだ”いません。とても明るい子で元気な子です。
今回のキャラクター紹介はこの辺にしておきます。次回もお楽しみに……因みにTwitterも始めてそちらで宣伝等してますので是非フォローお願いします!